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2016.11.02

葛飾北斎の傑作『北斎漫画』を鑑賞@2016年茅ヶ崎市美術館

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北斎のスゴさに世界が注目している!

 今年の日本美術界は、若冲人気で大盛り上がりでした。そんな年も後半を迎え、また新たなニュースが飛び込んできました。
 幕末日本で活躍したドイツ人医師・シーボルトが持ち帰った絵画6点を、所蔵していたオランダのライデン国立民族学博物館が詳しく調査した結果、葛飾北斎(かつしかほくさい)の作である可能性が高いと発表されたのです!
 長らく作者不明とされ、西洋で描かれたものだと思われていた水彩画が実は北斎が描いたものだったとわかって、稀有なる画才がにわかに注目を集めるようになりました。

茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、北斎漫画 十三編「魚籃観世音(ぎょらんかんぜおん)」 浦上コレクション

葛飾北斎の傑作『北斎漫画』を目の当たりにできる!@茅ヶ崎市美術館

北斎の才能が凝縮された「北斎漫画」

 葛飾北斎は宝暦10(1760)年に江戸の本所割下水(ほんじょわりげすい)に生まれ、嘉永2(1849)年まで約90年の生涯を創作に明け暮れた究極の絵師でした。
 狩野派(かのうは)や唐絵(からえ)など伝統的な絵画様式を学ぶ一方で、西洋絵画からも刺激を受けてみずから吸収。市販品である錦絵(にしきえ)では役者絵、美人画を手がけ、花鳥画や「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」に代表される名所絵など新たなジャンルを開拓しました。
 また、一点物の肉筆画や、一部の好事家(こうずか)向けの摺物(すりもの)などにも優れた作品を残し、曲亭馬琴(きょくていばきん)らの読本(よみほん)の挿絵や、数多くの門人のために描いた絵手本も手がけています。
北斎漫画 十二編「風のいたずら」茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、北斎漫画 十二編「風のいたずら」 浦上コレクション

 そんな北斎がみずから追究した作画技術のすべてを傾け、森羅万象(しんらばんしょう)を描いたのが「北斎漫画」です。
 この、図案やデッサンの集大成ともいうべき「北斎漫画」の影響は日本にとどまりませんでした。幕末期にはなんと、日本から送られた荷物の緩衝材としてパリに渡り、それを目にとめた芸術家が絶賛し、北斎の名を広めます。
 さらに、19世紀中ごろにパリ万国博覧会で紹介されてからは、印象派をはじめとした多数の芸術家に影響を与え、「ジャポニスム」という芸術ムーブメントを巻き起こす原動力にもなりました。

北斎漫画 初編「動物たち」北斎漫画 十編「百面相・八艘飛」

茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、左/北斎漫画 初編「動物たち」、右/北斎漫画 十編「百面相・八艘飛」 浦上コレクション

「北斎漫画」の実物が見られます!

 北斎の代名詞的な傑作である「北斎漫画」が今、茅ヶ崎市美術館の「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」で展示されています。
 この展覧会では、世界一の質と量を誇る「北斎漫画」コレクター・浦上満氏のコレクションを収蔵する公益財団法人山形美術館の作品を中心に、現代絵画にも通じる「北斎漫画」の魅力をご紹介。併せてジャポニスムの影響を受けたヨーロッパのガラス工芸品(ポーラ美術館所蔵)も展示されていて、北斎の画業を多角的に検証することができます。
 実はこの展覧会は11月6日(日)まで。北斎のデッサン力やデザイン的才能がどれほどすごかったのか、その目でお確かめください。
北斎漫画 十二編「ろくろ首・三目の眼鏡」茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、北斎漫画 十二編「ろくろ首・三目の眼鏡」 浦上コレクション

「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」

茅ヶ崎市美術館
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45 地図
展覧会ホームページ
会期/~11月6日(日)
休館日/月曜、11月4日(金)
開館時間/10時~18時(入館は17時30分まで)
観覧料/一般700円、大学生500円、高校生以下無料 ※市内在住65歳以上・市内在住の障害者およびその介護者は無料
北斎漫画 十一編「短銃の図面」茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、北斎漫画 十一編「短銃の図面」 浦上コレクション

「北斎漫画」とは?

 文化11(1814)年に名古屋の版元・永楽屋東四郎(東壁堂)から出版され、高い人気に支えられながら明治11(1878)年までの長きにわたり全15編が刊行されました。
 いきいきとした人物表現、ユーモアに満ちた内容、独自の視点に基づいた構図など「北斎漫画」の魅力は当時のヨーロッパにも伝わり、彼の地のジャポニスム・ブームの起因のひとつとなりました。

茅ヶ崎市美術館「北斎漫画展 ―画は伝神の具也―」より、北斎漫画 三編「雀踊り」 浦上コレクション

葛飾北斎の傑作『北斎漫画』を目の当たりにできる!@茅ヶ崎市美術館