この男は瓢箪をもって何をしようとしているの?
霞がかった山々を望む、小川が流れ込む沼の中島に何やら異様な姿の男が立っています。男は手に持った瓢簞を、沼の中を泳いでいる鯰の上に今にも差しだそうとしています……。
如拙『瓢鮎図』紙本墨画淡彩 111.5×75.8㎝ 室町時代(15世紀) 退蔵院
なんとも不思議な情景が描かれた水墨画はいったい何を表しているのでしょうか?その謎を解くヒントが絵の上部に書かれたたくさんの画賛に隠されています。
それによると、室町幕府4代将軍・足利義持の「瓢簞で鯰を押さえとることができるか」という問いかけに応じ、画僧・如拙が絵で問いを描き、京都五山の高名な禅僧31人がその答えを賛詩として書き並べたものなのです。
義持の問いかけは「苦労して成功する」という意味の中国の諺「鮎魚竹竿に上る」に基づいていて、それに瓢簞を付け加えたと考えられていますが、いかに禅問答ではあっても荒唐無稽な問いか
けです。
如拙は、瓢簞や鯰のほかにも竹や小川、岸辺といったツルツル滑るものをやわらかい曲線で描き、直線的に描いた男を際立たせて、その行為が無意味であることを表しています。
高名な禅僧たちの画賛も、それぞれ滑稽な内容が並んでいるのですが、そこには連句という言葉遊びが繰り返されています。
実は問いかけた義持も正解などは期待しておらず、このような難題を出して、如拙や禅僧たちとあれやこれや語らいながら楽しむことが第一の目的であったとか。
この、たくさんの画賛に彩られた水墨画は、室町時代に義持を中心としたサロンで繰り広げられた、自由で知的な遊びの様子を今に伝えてくれる、他に類を見ないタイプの名画なのです。
ちなみに、つかみどころのない人を表す「瓢簞鯰」という言葉は、この絵に由来します。
その手の形じゃ瓢簞は持てない!
瓢簞の上に両手を置いているように見えるのは、間違いではなく実は意図的。禅において瓢簞は、とらえがたいもの、自由な心の象徴とされ、とらえようのない心を表現するため、このように描いたと考えられています。
これは鯰であって、鮎ではないはず!
中国では「鮎魚」が鯰を意味する言葉であったため、『瓢鮎図』にもこの字が用いられている。当時の山水画の中に、このように戯画的な意味をもったモチーフが描かれたものはなく、それもまたこの絵の特徴とされます。
『瓢鮎図』のなまずがブラシに!?
和樂×宇野刷毛ブラシ製作所によって「鯰親子ブラシBODY&FACE」が誕生しました!もちろんモデルは『瓢鮎図』。ボディブラシには女性の肌にも優しい、やわらかさと弾力性を兼ね備えた白馬のたてがみの毛が選ばれ、フェイスブラシには繊細で肌触りがやわらかな山羊の毛を使用。使い心地抜群のブラシになっています!
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