和歌をきっかけに、日本人の心情を伝えるために生まれたといわれています
日本語に使われる漢字とかな。漢字は中国から渡ってきたものですが、かなは日本独自のものです。かなが生まれた背景には、和歌によるところが大きいといいます。歌を読み上げる調子を万葉仮名(まんようがな)で表記するにはちょっと堅苦しい。そこで、一点一画が連続する丸みを帯びた字形のかな=ひらがながつくり出されたとか。つまり、日本人の心情を伝えるために生まれたのが、かなというわけです。
だからこそ、古の人はかなの書き方にも工夫を凝らしました。文字を続けて書く「連綿(れんめん)」は、和歌を読み上げるリズムをそのまま伝えるため。流麗なくずし字にはほれぼれするほどの情感があります。
寸松庵色紙(すんしょうあんしきし) 「あきはきの」 重要文化財 伝紀貫之筆 平安時代 11世紀 五島美術館蔵
かなは日本人となじみが深いはずなのに、今の私たちはといえば筆を持つ習慣もなければ、美しいかなを書くこともできません。ましてや、かなで描かれた書を読むこともできない…。これでは、あまりにももったいない!
そこで編集部からの提案です。意識して、名書を見る機会を増やしてみましょう。そして、墨をすり、筆で書く時間を少しずつでもつくってみませんか。遠く感じていた名人の書も、文字に託した息遣いまで感じることができるかもしれません。