近代日本画の歴史において「東の大観、西の栖鳳」と言われるほどに、このふたりの巨匠はともに東京と京都の画壇をリードし続けた大家として広く認識されています。
ほぼ時を同じくして生まれ、明治、大正、昭和という激動の時代に日本画の高みを極めようと腕を磨いたふたりの天才画家は、何を目ざし絵を描き続けたのでしょうか。
ここからは、2013年秋、同時にそれぞれの大回顧展が開催された横山大観と竹内栖鳳の作品の魅力と、その画業に迫ります。
近代日本画の新機軸を模索した大巨人-横山大観
横山大観『夜桜』 (左隻部分) 六曲一双 紙本着色 各177.5×376.8㎝ 昭和4(1929)年 大倉集古館蔵
春の宵、かがり火に照らし出されて咲き誇る山桜を絢爛豪華(けんらんごうか)に描いた一作。これは昭和5(1930)年、美術愛好家だった大倉喜七郎(おおくらきしちろう)男爵が日本贔屓で知られたイタリアのムッソリーニに大観の絵を寄贈しようと計画して実現したローマでの日本美術展覧会に出品された屏風。大観の代表作のひとつとして知られ、大観作品の中でも圧倒的に人気が高い。
極限のテクニックを駆使して日本画壇の革新者となった-竹内栖鳳
竹内栖鳳『若き家鴨』(右隻部分) 二曲一双 紙本彩色 各171.0×184.0㎝ 昭和12(1937)年 京都国立近代美術館蔵
右隻には餌を啄む(ついば)むために忙(せわ)しなげに餌場に集う家鴨の群れの様子、左隻にはゆったりとうずくまる5羽の幼鳥を描いている。屏風の一双の中に、静と動を対比的に演出するという竹内栖鳳お得意の作風が特徴の名作。最晩年に描いたものだが、栖鳳らしい鋭く冴えた筆技が最大の見所。伝統の画技を駆使して描かれる動物画には、栖鳳作品の魅力が詰まっている。