さまざまジャンルがある日本美術ですが、ひとつのジャンルに特化した専門美術館なら、より深く楽しめる!グッとくる企画力で人気の2つの美術館、その面白さを過去の展覧会から読み解きます。
浮世絵のメジャー感とマイナー感と時代性を超絶ミックス!
太田記念美術館
太田記念美術館 外観
東京・原宿のど真ん中、表参道からちょっと入ったところにある浮世絵の専門美術館。
北斎、広重、暁斎…など、全国で展覧会が大盛り上がりと、人気が再沸騰(何回目!?)の浮世絵ですが、「当館の強みは、コレクションが1万4000点にも及ぶことと、専門知識があること。この豊富さが、さまざまな企画で柔軟な対応ができる要因です」と、主席学芸員の日野原健司(ひのはらけんじ)さん。
「人気浮世絵師や有名な作品を核にすることはありますが、知らないものを知って面白がる、そういう発見がある展覧会をしていきたい。顔になる作品を増やしていく、それが企画立案の原動力です。新しい切り口、時代にあった宣伝と、できることはもっとある。企画展に来ていただいて、これ欲しい、家に飾りたいと思ってもらえたら本望です」
美術館でキモだめし!?
「怖い浮世絵」
2016年8月2日~8月28日
恨みをもつ幽霊や、異形であることがユーモラスでもある化け物は、歌舞伎や小説などでも怪談ものが流行した江戸時代の人気ジャンル。さらにはグロテスクな血みどろ絵なども。もう、このチラシだけで怖いっ!
究極の「かわいい!」はやっぱり動物!
「浮世絵動物園」
2017年4月1日~5月28日
2010年に大好評だった企画展の第2弾。超絶かわいい猫から、キモかわいいサンショウウオ、芸達者な鳥に蛸踊りする蛸…など擬人化された動物、そして空想上の珍獣まで。チラシも抜群のセンス!
江戸の町を水辺から見てみよう!
「大江戸クルージング」
2017年7月1日~7月23日
市中を堀や水路がめぐり、水の都だった江戸。夏の一大イベント隅田川の花火や、バスやタクシーのように気軽に船を使う人々…。水辺から江戸の生活を垣間見る、夏にぴったりな企画展。
民藝のある暮らしをしたくなる…が企画の原点!
日本民藝館
日本民藝館 外観
民藝運動を興した思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)が、その新しい美の概念の普及と、運動の本拠地として企画、設立した美術館。陶磁器、染織、木漆工(もくしっこう)、絵画、金工…など、柳の審美眼によって収集された工芸品は、なんと約1万7000点!
広報も担当する学芸員の古屋真弓さんは、この美術館が好きで好きで、ついには就職までしてしまったという強者です。
「膨大で多様なコレクションですが、そのほとんどが柳宗悦というひとりの眼で集められたものですから、企画の難しさも面白さも。学芸員は民藝に惚れ込んだ人ばかり。自分たちも楽しみながら準備しています。細部まで柳が手がけたこの建物、この空間とともに楽しんでください」
手仕事の魅力を存分に感じる恒例企画
「日本民芸館展─新作工藝公募展─」
2014年12月13日~25日
伝統的な手仕事によるものを中心に、日本各地で制作された新作工芸品を展示販売する、恒例の公募展。陶磁器、織物、木漆工、ガラス工、金工、竹工と、工芸好きにはたまらない。2017年は12月10日(日)から2週間。
研ぎ澄まされた文字はこんなにも美しい
「文字の美─工芸的な文字の世界」
2015年1月10日~3月22日
絵画や経典に書かれた文字、陶磁器に刻まれた文字、あるいは屋号やロゴなどデザインとしての文字。柳が「工芸的な文字」と呼び称賛した文字に着目。日本の文字の豊かさ美しさに感動する企画展だった。
民藝館が「愛らしい!」であふれた!
「愛される民藝のかたち館長 深澤直人がえらぶ」
2015年3月31日~6月21日
思想家であった柳の収集品にはどこか愛らしさが漂います。小さなもの、丸いもの、優しい色、ほんわかムード…そんな愛らしい150点余りを自然光が差し込むこの館で見たら、どんなにかわいかったことか!
※緊急事態宣言の期間中など、美術館は臨時休館となる場合があります。詳細・最新情報は、各美術館のHPをご確認ください。