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2017.09.21

裸足で眺める?ユニークな楽しみがある秋野不矩美術館を訪ねて

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美術館といえば、高尚でかしこまった場所…。そんなイメージはありませんか?私たちの考える美術館のイメージを良い意味で覆してくれるのが、浜松市秋野不矩(あきのふく)美術館です。力強く、生命力に満ちた作品を、なんと裸足で入る展示室で鑑賞することができるのです。ぜひ思い思いの見方で、心ゆくまで作品を堪能してみてください。

浜松市秋野不矩美術館

P17_個性派1自然の風景に溶け込む外観

1998年に開館した「浜松市秋野不矩美術館」は、地元浜松市天竜区で生まれた日本画家、秋野不矩の作品を約300点所蔵しています。緑に囲まれた小高い丘の上に立つ美術館の設計を担当したのは、藤森照信氏(ふじもりてるのぶ)。自然の素材を活かす建築家としても知られるとおり、外観には地元特産の天竜杉を使ったり、コンクリートの壁は、地元の山の土を混ぜて土壁のような風合いを出したり、自然に溶け込むような優しい風合いが特徴です。また、藤森氏は館内の内装にもこだわり、作品の鑑賞の仕方についても提案。鮮やかでダイナミックな不矩の作品を目だけでなく、全身で感じられるよう、1階にあるふたつの展示会へはともに裸足で入ります。座りながら作品とじっくり向き合えると訪れる人からも評判に。
P17_個性派4

不矩の作風は、2度の転機とともに大きく変化しました。1度目は戦後、日展を脱退し、新たな日本画の表現を追い求めたとき。ざらざらと粒子の粗い岩絵の具を用い、鮮明な色使いで、人物画の新境地を開いた力強い作品を数多く残しました。2度目は、大学の客員教授としてインドに滞在した54歳のとき。不矩は、インドで懸命に生きる人々の姿に大きな感銘を受け、以来生涯で14回も訪れては滞在し、そこに生き、祈る人々や雄大な自然、寺院などを描きました。80代になってもインドを題材にした大作を数多く生み出し、不矩自身も「インドに行くと、元気になるのよ」と語っていたそう。

美術館では年間で4〜6回の所蔵品展と2〜3回の企画展「浜松市美術館コレクション選〜近現代日本絵画の道筋〜」(〜11月26日)では、浜松市美術館のコレクションのなかから日本の近現代美術絵画作品を103点紹介。展示室の一角では、地元浜松にゆかりのある秋野不矩作品を約30点公開する、小企画展も行われます。

インドの生活の舞台を描いた『砂漠の街』やそこに生きる人の美しさを映した『黄土』など、生命力に満ちた人々や自然の豊かさ、まるでモチーフそのものが発するエネルギーを描写しているかのような作品の数々。
P17_個性派3秋野不矩 『黄土』 1978年 浜松市秋野不矩美術館所蔵
インド西部・グジャラート州、カッチ地方への旅の体験をもとに制作された。

P17_個性派2秋野不矩 『砂漠の街』 1982年 浜松市秋野不矩美術館所蔵
砂漠を行くラクダの休憩地でもある街の風景。半開きの扉の奥には人の影が描かれ暮らしの気配が感じられる。

裸足で鑑賞し、普段よりもいっそう感覚を研ぎすませば、新たな感動体験が待っているはず。一度訪れてみてください。

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