セザンヌの作品「サント=ヴィクトワール山」の構図は、北斎の「富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ)」とよく似ています。セザンヌの絵には、北斎への尊敬と故郷への愛で溢れています。
葛飾北斎「富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二」
天保元-4年ごろ 横大判錦絵 オーストリア工芸美術館、ウィーン
遠くにそびえる富士と中景に広がる茶畑を、斜め上から俯瞰した1枚。茶摘みの風景なのに、畑は黄金色で富士は雪…という不思議はさておいて、風景に人々の日常を融合させた風俗画としても優れた名作です。
ポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」
油絵、カンヴァス フィリップス・コレクション、ワシントンD,C,
「富嶽三十六景」に刺激され、故郷南仏のサント=ヴィクトワール山の連作を描いたセザンヌ。「冨嶽〜」と同様、さまざまな視点から山を描いていますが、本作は前景の松の木までが葛飾北斎の絵とほぼ同じ構図。故郷をいとおしく見つめる視線と、葛飾北斎への敬意が伝わってきます。