転機到来?!日本美術との運命的な出会いとは?
-ちょうどそれをお聞きしたいと思っていました。2019年4月には、イラストレーターではなく、アーティストとして松本松栄堂さんでの企画展に参加されたのですよね?確かこれが初めてのアーティストとしての活動の第一歩だったのですね?
田村:はい。実はちょうど僕のInstagramの投稿を評価してくださっていた松本松栄堂さんから、昨年秋に「日本美術」に関連したアート作品を描いてみないかってオファーがあったんです。
-またしてもInstagramが大活躍ですか!
田村:そうなんです。松本さんから「奇想の系譜展」の監修を担当されていた山下裕二先生や辻惟雄先生を紹介いただいたんです。展覧会の開催前日のレセプションでお会いすることになったので、そこで、せっかくなら僕の絵を持参して見てもらったら?と松本さんから助言頂いたので、その時にお2人の絵(※上掲、2018年秋に開催された「奇想の系譜展」の記者発表会でのフォトセッションでのワンシーン)を描いて持っていったんです。そうしたら、お二人にものすごく喜んで頂くことができました。
-それが2019年4月の企画展「平安から現代まで」での出品につながるんですね。パンフレットを見ると、田村さんの作品に山下先生が「イラストレーターの逆襲」という特別寄稿で激賞してくださっていますね。
田村:本当にありがたい限りです。実は、今の会社を設立した時、一番の目標として自社HPに「NBAのオフィシャルイラストレーターになりたい」と英語で宣言してみたんですが、楽天さんを通してNBAのオフィシャルやNBA選手たちと交流が始まり、気づいたら1年もしないうちにほぼ目標を達成してしまったんです。そこでNBAの次にはどのように活動の幅を広げていこうか?と考えた時、心に思い浮かんだのが「アート」分野での活動がしたい、ということだったんです。
-では、タイミング的に本当にぴったりだったのですね?
田村:そうなんです。時期的にぴったりでした。これから、松本松栄堂さんと組ませて頂いてアート分野に力を入れていくんですけど、僕にとっては大きな挑戦が始まったんだと考えています。なぜなら、イラストとアートでは、制作におけるスタンスが全く違うからなんですね。
-どのように違っているのですか?
田村:イラストの仕事は、基本的に企業の発注が大前提で、顧客が思い描くイメージに合わせて作品を作り込んでいく必要がありますよね。これは従来まで僕がやっていたカリカチュアなども同じです。でも、松本さんと進めていく今後のアートプロジェクトでは、僕の描きたいものをまず描くことで、(お客さんを)僕の世界観に引き込んで欲しいと言われているので、今までとは全く真逆の制作プロセスとなっているんですよね。
―気に入っていただいたお客さんに、純粋に作品を買ってもらうということですよね。
田村:そういう感じです。市場規模で見てもアートはイラストの何倍もあって、しかも世界中に顧客候補がいるわけです。だから、これまで頂いてきたNBAの仕事は大切にしつつ、独立2年目は、よりアートの方にも軸足を置いていきたいなって思います。
―最後に、今後チャレンジしていきたい分野などはありますか?
田村:まずは動物をじっくりと描いてみたいですね。神話などに出てくる鳳凰や白虎など、実際には存在しない幻獣なども興味があります。例えば今後中国市場でもきちんと受けるような絵を描くなら、中国の古典や故事成句などに基づいた動物たちが受け入れられやすいのかも知れません。また、新たな画材にも挑戦したいですね。たとえば、伝統的な水墨画を研究して、もっと「墨」の世界を自分なりにどう表現したらいいのかを考えていますし、より大きな作品制作ではコピックだけでなくアクリル絵の具なども活用していかなければと考えています。そういうのも、より制約のないアートだからこそできる挑戦なのかも知れません。色々僕の中で実験しながら作品の幅を少しずつ広げていきたいと思っています。
田村:また、アート活動と並行して、イラストレーションのお仕事も変わらず大切にしていきます。カリカチュアもイラストもアートも全て僕を形成している大切な要素です。今の目標は世界を代表するアーティストになることなのですが、これまで通り多くの方々のご協力をいただきながら、世界中での田村大でありDai Tamuraの認知度を上げていけるよう日々精進していきます。毎日自己ベストを更新していくことだけを考え、絵と自分自身に向き合って成長していきますので、応援していただけたら幸いです。
今後の活躍が楽しみな田村大さん。日々新作が登場するInstagramやYoutubeは要チェックです!
NBAのスタープレイヤーの一人、ステフィン・カリー選手と田村さんのツーショット写真。Facebookでは、”たった1年前の自分にすら想像もつかないことがたくさん起こっていますが、信じて絵を描き続けて良かったと心から思います。”とコメントされています。
インタビューを終えて感じたのは、田村さんほどポジティブなエネルギーに溢れた気鋭のアーティストは滅多にいないのではないかということでした。
中学・高校・大学とスポーツに明け暮れ、大学3年生で初めて「絵」の世界で生きていきたいと意識した田村さんのキャリアは、圧倒的な周回遅れの状態からスタートしたといっても良いでしょう。しかし、そこからの挽回が凄かった。人並み外れた努力を続けて絵画技術を磨く一方で、冷静に時流を読んで戦略的に行動することで、一気にキャリアを取り戻します。カリカチュア、イラストレーターと活躍の場を広げるたびに確かな実績を残しながら、30代後半でついに純粋なアーティストとしてのデビューも果たしたのです。
今後、さらなる活躍の幅を広げて飛躍されることは間違いないと思います。ぜひ、「田村大」という名前を覚えておいてください。公立美術館での展覧会で、田村さんの作品が登場する日は意外に近いのではないかと確信しています!
◆インタビュー前半はこちら!
田村大さんのプロフィール
田村大(たむらだい)
1983年八王子市出身。イラストレーター/アーティスト。
似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会にて、2015年4位、2016年総合優勝。インスタグラム(@dai.tamura)のフォロワーは10万人を超え、シャキール・オニールやクリス・ブラウン、デニス・ロッドマンやアレン・アイバーソンなど多くの有名人らにイラストがシェアされ、支持を得ている。2017年までの7年間、似顔絵制作会社に勤務し、累計3万人の似顔絵を制作。2018年より独立し、イラストを通じて企業のマーケティングを支援するDT合同会社(https://dt-ltd.tokyo)を立ち上げ、代表に就任するとともに、2019年からはアーティストとして本格的に活動の場を拡大。アートの分野では、京都で100年の歴史を持つ画廊、松本松栄堂の展示会への出展するなど、新たな挑戦を続けながら着実に実績を積んでいる。
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