パステル調のやさしい色使いで描かれた、穏やかな表情の女性たち。マリー・ローランサンは、20世紀初頭のパリで活躍した女性画家で、当時の上流階級のご婦人たちは、こぞって彼女に肖像画を注文したといいます。詩人のギヨーム・アポリネールと恋愛関係にあったことでも知られ、ほかにも多くの芸術家たちと創作活動をともにしました。舞台装置や衣裳デザイン、詩作においても、優れた作品を残しています。
エコール・ド・パリを代表する存在の彼女ですが、特に日本での人気が高く、世界で唯一の専門美術館があるほど。タクシー会社創設者・高野将弘氏が数十年をかけて蒐集したコレクションをもとに、ローランサンの生誕100周年にあたる1983年に長野県茅野市蓼科高原に開館したマリー・ローランサン美術館は、2011年にいったん閉館しましたが、2017年7月に再び、ホテルニューオータニ・ガーデンコートにオープン。質量ともに世界最大規模のコレクションが東京に引っ越してきたと、大きな話題を集めています。
絵本作家のいわさきちひろも、学生のころにローランサンの作品を目にし、以来、憧れを抱いていたとか。20世紀という激動の時代にあっても、エレガントに、華やかに女性を描き続けたローランサン。その作品世界に多くの人が魅了されたのです。
ひろしま美術館
常設展示中
マリー・ローランサン「牝鹿と二人の女」1923年 ひろしま美術館蔵
ローランサンの絵画に触発された曲をきっかけに制作された、ロシア・バレエ団による演目「牝鹿」。1920年代の、自由でエロティックなパリの社交界をテーマにしたこの舞台で、ローランサンは美術と衣装を手がけました。森の中に佇むふたりの女性と、彼女たちを見上げる鹿の姿を描いた「牝鹿と二人の女」は、そんな舞台に想像力を刺激されて生まれた作品のひとつです。
マリー・ローランサン美術館
2017年11月18日〜2018年3月18日特別展示
マリー・ローランサン「ニコル・グルーと二人の娘 ブノワットとマリオン」Nicole Groult et ses deux filles Benoîte et Marion 1922年 カンヴァスに油彩 102×83cm マリー・ローランサン美術館蔵
母親を亡くして孤独だったローランサンにとって、家族同様の存在だった親友と、その娘を描いた作品。ローランサンが自分の子のようにかわいがっていたブノワットと、夭逝したマリオン。深い愛情を感じます。
名古屋市美術館
展示予定は未定
マリー・ローランサン「横たわる裸婦」1908年 名古屋市美術館蔵
エコール・ド・パリの作品を収集する名古屋市美術館にとって、ローランサンは主要な画家のひとり。当時交流していたアポリネール、パブロ・ピカソ、アンリ・ルソーらの影響も。