卓越した装飾性で海外から絶賛される、伊藤若冲と尾形光琳。ふたりは、驚きの技で輝きを生み出しました。今回は、若冲と光琳の名作から、「光」の表現方法に注目します!
尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」
国宝 一合 木製漆塗 縦27.3×横19.7×高さ14.2cm 東京国立博物館 Image:DNAart TMN Image Archives
まずは琳派のゴールドマスター光琳の硯箱(すずりばこ)。表面に施された燕子花(かきつばた)のキラキラときたら、眼も眩むほどです。この輝きの正体は螺鈿(らでん)。アワビの殻の光沢層をカットして木地に嵌め、漆を重ねて研ぎ出すことで立体的な輝きをもたせています。
光琳はさらに「螺鈿を際立たせたいから、地は黒漆、茎と葉は平蒔絵でいこう」と考えました。平蒔絵とは、漆で描いた模様に金粉を蒔いて研ぎ出す技。マットな金色こそが螺鈿のクールな輝きを引き出すことを、熟知していたのです。
伊藤若冲「老松白鳳凰」
一幅 絹本着色 明和2〜3(1765〜66)年ごろ 141.8×79.7cm 宮内庁三の丸尚蔵館
若冲は、レースのように美しい羽根の輝きを描きました。白い羽根を拡大すると、細部に金色の部分が見えてきますが、これが輝きの正体。
半透明の絹地の裏面にも彩色を施す「裏彩色(うらざいしき)」という技が使われています。表面に白い絵具、裏面には酸化鉄でつくられる黄土を彩色することで、2色の重なった部分が表からは金色に見えるのです。特に光輝く部分の裏には、黄土が濃く入れられ、絹地の光沢とあわさって、あでやかな輝きを放っています。
「老松白鳳凰」裏面
金泥や金箔ではなく、絵具の色彩と絹の光沢で上品な輝きを得た。これが世界を驚かせた若冲の光マジックです。