いまや、年の瀬の風物詩の一つとなった「今年の漢字」。
清水寺の森清範貫主(かんす)が、大きく1文字の漢字を揮毫する姿を、テレビなどでご覧になった方も多いでしょう。
その「今年の漢字」が、今年で25周年を迎えることをご存じでしたか?
それに合わせ、京都の漢字ミュージアムは、企画展として「今年の漢字展 ~今年の漢字25周年~」(以下「今年の漢字展」)を開催しています。今回は、この展覧会を紹介しましょう。
そもそも「今年の漢字」とは?
「今年の漢字」は、財団法人(現公益財団法人)日本漢字能力検定協会が、「漢字の素晴らしさや奥深い意義を伝えるための啓発活動の一環」として、平成7(1995)年に始めたものです。
毎年11月から12月初旬にかけて、その年の世相を表す漢字を一般公募し、最も応募数の多かった漢字が「今年の漢字」に選ばれます。そして、12月12日の「漢字の日」に、京都の清水寺の森清範貫主が、縦150cm×横130cmの和紙に揮毫することで発表となります。
大書された漢字は同寺に奉納され、その年の出来事を清めるとともに、来年が明るい1年になることが願われます。
「今年の漢字展」では過去の全漢字を展示
「今年の漢字展」は、日本漢字能力検定協会が運営する漢字ミュージアム(京都市)で、2019年10月8日にスタート。2020年2月16日まで開催されます。
本展では、過去のすべての「今年の漢字」が展示されており、関連する出来事を報道した新聞のコピーも添えられ、平成期の世相を通覧できる趣向になっています。
過去の印象的な「今年の漢字」たち
これまでの「今年の漢字」は、「震」、「食」、「倒」、「毒」、「末」、「金」(3種)、「戦」、「帰」、「虎」、「災」(2種)、「愛」、「命」、「偽」、「変」、「新」、「暑」、「絆」、「輪」、「税」、「安」、「北」でした。
このうち、どんな世相を表現したものか、ひと目でわかるものは、幾つあったでしょうか?
特に印象的な漢字を、解説を加えて見ていきましょう。
2018年は「災」
昨年(2018年)の「今年の漢字」は「災」でした。
応募総数約19万票に対し、約2万票も集めたこの漢字。まさにこの年が、「災害」続きであったことから出てきたものでしょう。北海道、大阪府、島根県は大きな地震に見舞われ、豪雨と台風があり、記録的な猛暑や豪雪も記憶に残っているはずです。さらに、仮想通貨の流出や財務省による決裁文書の改ざん、それに大学の不正入試問題など事件が数多く起こり、これも「災」と捉える人が多くいました。
ちなみに、2011年の東北大震災の年の「今年の漢字」は「絆」。未曽有の震災が、人と人との「絆」の大切さに気付かせたことから、歴代最多応募の約50万票のうち約6万票を集めて選ばれました。そして、「今年の漢字」が始まった1995年は「震」。阪神・淡路大震災が起きた年であることを大きく反映しており、いかにこの国が災害の多い国かを再認識させられます。
2001年は「戦」
新世紀を迎えた2001年の「今年の漢字」は「戦」でした。
この年は、9月11日に米国で同時多発テロ事件が発生し、世界に衝撃が走りました。米国は、ほどなくアフガニスタンに侵攻し、いわゆる「対テロ戦争」が勃発します。また、政治からスポーツまで各界がさまざまな意味での戦いを経験し、個人のレベルでも、リストラなど生活を脅かすものとの戦いに直面した人は少なくありませんでした。こうした世相を反映して、「戦」が1位の得票率となったわけです。
2002年は「帰」
波乱続きであった2001年の翌年の「今年の漢字」は「帰」でした。
災害や戦争に関連する漢字は分かりやすいものですが、「帰」とは何を意味するのか、すぐには閃かないかもしれません。
この年は、まず大きな出来事として、北朝鮮に拉致された5人の日本人が24年ぶりに帰国したというのがあります。そして、日本の経済がバブル以前の水準に回復し、なつかしのメロディーがリバイバル大ヒットするなど、いろいろな事柄で回帰現象が見られました。さらには、「ワールドカップのテレビ観戦と不景気で早く帰宅する人が多くなった」、「アザラシのタマちゃんが海へ帰ることを日本中が祈った」などから「帰」を選んだ人たちもいて、原点回帰そして将来への希望を託すコメントが多かったそうです。
このように、その1年の世相を象徴する「今年の漢字」を鑑賞することで、「そうえば、あの年にはこんなことが起きたんだ」など、自分の人生と重ね合わせつつ、回想に浸れることと思います。
なお、特別イベントとして12月12日の14:00~14:15に、漢字ミュージアムのシアターにて、2019年「今年の漢字」の発表中継があり、同月22日より漢字ミュージアムの1階にて、2019年「今年の漢字」大書の展示が開始されますので、関心のある方はこのタイミングに訪れるのもよいでしょう。
今年の漢字展 ~今年の漢字25周年~ 基本情報
住所:京都市東山区祇園町南側551番地(漢字ミュージアム内)
開催期間・時間:2019年10月8日~2020年2月16日、9:30~17:00(最終入館16:30)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日火曜日が休館)、年末年始
入館料(大人):800円
展覧会サイト:https://www.kanjimuseum.kyoto/kikakutenji/detail/191008.html
漢字ミュージアム(漢検 漢字博物館・図書館) 概要
「漢字と漢字文化を知り、楽しみ、親しむ博物館・図書館」というキーコンセプトで、2016年6月にオープン。1階は、映像・グラフィックを使い体験を通して日本の文字文化を学べ、2階は、ゲーム感覚で漢字に親しむことができる様々な体験設備を設置。小学生から大人まで楽しめるミュージアムとなっている。2020年2月16日まで、「フォントのホント展」も併催。
公式サイト:https://www.kanjimuseum.kyoto/