昔からなんとなく、瓶入りのドリンクに心惹かれる。(どうして瓶で飲むと、缶やペットボトルより美味しく感じるんだろう?)と、子どものころは不思議に感じていた。
いまでも旅先でご当地の瓶ジュースを見かけるとつい買ってしまう。そのついでにと栓抜きも物色する。土産屋には掘り出し物が眠っていることが多いからだ。当然の結果として、家には10種類以上も栓抜きがある。どう考えても多すぎる。さすがに自重しなければと反省している今日この頃だ。
先日、民藝店で買い物をしているとき、あるボトルオープナーが目に留まった。なにげなく持ち上げる。ずっしりと重いそれは、まるで昔からの愛用品のように手に馴染んでくれた。
ムラムラと物欲が沸き起こる。すでにたくさん所有しているという事実は、その佇まいの前にはほとんど無力だった。
……紙袋を片手に、嬉しい気持ちで帰り道を歩く。ただ嬉しいだけではなく、(また、出会うことができた)という安堵感もあった。
高度な技術と美意識の結晶
このオープナーは金属工房〈Lue〉と家具屋〈Holz〉との共同作品で、前者が真鍮部を、後者が木部を担当している。金属のプロと木材のプロが交わることで、極めて完成度の高い仕上がりを実現させた。
とにかく、真鍮のフォルムが美しい。雨粒のようにも彗星のようにも見えるその曲線は、ずっと眺めていても飽きることがない。あなたにはどう見えるだろうか?
木部には高級材のチークを使用。耐久性に優れた素材で、家具や船舶、建築物などの用材として古くから珍重されている。水に強く腐りにくいという性質を持つため、水回りでも安心して利用できるのが嬉しい。レジャーやアウトドアの際にも活躍しそうだ。
便利なものだけが道具ではない
栓抜き部の形状がやや特殊なため、慣れないうちは開栓に手間取るかもしれない。その分、スマートに開けられるようになったときの満足感は大きい。物を持つことの喜び、道具を使うことの楽しさを再確認させてくれる。
個人的には、その不便さがこの作品の魅力だと思う。道具は生活を便利にするために作られるが、それはあくまで役割のひとつ。生活に彩りを添え、豊かにすることも道具の役目なのだ。
どちらも暮らしに欠かせないが、僕は後者のような道具にひどく惹かれる。嗜好品と一緒に使うものだから、なおさらそう感じるのかもしれない。
良い相棒と出会えることの喜び
このオープナーを買い求めるときは、店舗まで足を運ぶことを推奨する。チークは個体差が出やすい木材だからだ。僕は4本を見比べながら選んだが、ひとつひとつ表情が異なっていて非常に悩ましかった。もっとも、こういう悩みであればいつでも歓迎ではあるが。
改めて、このオープナーを手に取る。存在感のある重さが心地いい。それがずっと愛用できるものだと肌が教えてくれる。そして、(出会うことができた)と再び安堵する。
僕の残りの人生で、あと何回そんな出会いがあるのだろうか? そういうことを考えるとますます手放し難く感じてしまう。
秋が深まり、夜もずいぶんと長くなった。仕事が終わった後、音楽を聴きながらゆっくりと晩酌するのが近頃の楽しみとなっている。
「便利な道具は生活を楽にしてくれる。そして、美しい道具は生活に彩りを添えてくれる」
そんなことを考えながら飲むお酒は本当に美味しく、あっという間に夜は更けていくのであった。
……栓を空けるのが楽しくなって、酒屋に行くたびについ瓶ビールを買い求めてしまう。当然の結果として、冷蔵庫にはぎっしりとビールが並んでいる。さすがに自重しなければと反省している今日この頃だ。