日本の鉈が大好きだ!
分厚いブレードと鋭いエッジを兼ね備え、太い枝でも簡単に両断できる鉈はもっと普及して然るべきだ、と感じている。そしてそれをきっかけに、アウトドアレジャーが盛んになってくれれば万々歳だ。
というわけで、今回の錆ナイフ再生記事は鉈である。
ネットオークションで出品されていたボロボロの鉈。これを和樂Webらしく「ロックンロールな和風」という感じで仕上げていきたい。
ディスクグラインダーでブレードを再設計
さて、此度購入した鉈は刃渡り16.5cm、厚さ6mmの威圧感溢れる代物である。
都市部に生きる現代人がここまで分厚いナイフを触ることは、滅多にないだろう。しかし、ネットオークションでは意外に多くの中古鉈が出回っている。長年使われてきたらしい、ブレードも柄もボロボロの鉈だ。
筆者が入手したのは、柄のハンドルがなくなっている個体。見ての通り、タングが剥き出しになっている。日本鉈のそれは細身のハーフタングが多い。ピンを通す穴の位置から察するに、そのハンドルは刃渡りに迫るほど長かったはずだ。
しかし、今回はこのあたりに筆者のアイディアを加えたい。まずはマジックでブレードにデザインを書き込む。というのも、筆者は当初この鉈をボウイナイフのような形に切ってしまおうと考えていたのだ。
が、マジックで書いていくうちに下手なクリップポイントを作るのは良くないかな、と思ってしまった。どうも格好良くならない。だからこのあたりは諦めた。
代わりに、刃の末端から2.5cmほどを斜めに切り取る。筆者の構想では、タングに新しいハンドルを取り付けない。タングそのものをハンドルにしてしまおう、というものである。だがタングをそのまま持つと、刃の末端の部分が人差し指を圧迫してしまう。
それをディスクグラインダーで斜めに切ることで、人差し指がだいぶ楽になった。また、この部分はヒルトと同じような機能を持つ。しっかり握ってさえいれば、人差し指が刃の部分に行くことはない。
砥石で刃付け!
もうひとつ、この鉈にデザイン上の改良を加える。
それは背の部分だ。親指をブレードの背にあてがってしまう筆者の癖に合わせ、ここに凹みを作る。この部分はディスクグラインダーのオフセット砥石でガリガリ削った。少しずつ、焦らずやっていくと必ず自分の親指にフィットした凹みをつけることができる。
次に研磨ディスクでブレード表面を磨き、赤錆を取る。が、黒焼きや経年変化による黒ズミを完全に取り除くことはしない。ピカピカの銀色になるまで研磨することもできるのだが、それでは味気ないと筆者は感じてしまうのだ。
そして、ここからが本番。いつものように、砥石でひたすら刃を砥ぐ!120番、240番と荒砥ぎにかけたら、その時点で刃はつく。しかし、それだけではシャープな刃にはならない。このあと、400番と1600番の砥石を使ってようやく実用に耐えるレベルの鉈に仕上がる。
電動の研ぎ機があればもっと短時間で作業が終わるはずだが、まあ、貧乏な筆者では未だそこまで手が回らないわけだ。恥ずかしいことではあるが……。
パラコード編みのハンドル
とりあえず、刃付けは終わった。
次にやるのは、タングの手入れ。ここを黒錆転換剤で補修する。こうすれば、のちのち使っていても赤錆が浮くことはないだろう。
このタングをそのままハンドルにする、と先述した。筆者はホームセンターでパラコードを購入し、タングに巻き付けてしまおうと思案。アウトドアナイフの取っ手をパラコード編みで仕上げる手法は、比較的ポピュラーなものでもある。お世辞にも丁寧とは言い難い筆者の作業だが、どうにか最後までやり遂げることができた。パラコードは長めに取って、手首に巻くストラップを作る。今回選んだパラコードは紫色。「和風を感じさせる色=紫色」という、筆者の勝手な偏見で選んだのだがいかがだろうか。
ナイフの魅力とは
ナイフとは「アイディアの具現化」だと、筆者はつくづく感じている。
「ここはこうしたほうがいい」
「この部分は余計だから削ろう」
「こういう機能があればいいな」
気まぐれのような職人の思いつきを即座に反映できる製品、それがナイフである。もっとも、筆者は職人ではなくただの男に過ぎないが、そんな中途半端な人間の思いつきですらも赤錆だらけの中古鉈に反映させることができた。大した作業道具など、筆者が持っているはずはない。今回の作業も「筆者が鉈を再生させた」のではなく、「鉈が筆者を動かした」のだ。筆者はナイフが本来持っている魅力に追随しているに過ぎない。
そんなナイフの魅力をこれからも伝え続けていければ、と筆者は強く願っている。