ひとりは幕末の反逆児、もうひとりは売れに売れた絵師。それぞれ異なるアプローチで大衆を楽しませたふたりの絵師、その魅力とは?
『和樂webの日本文化はロックだぜ!ベイベ』は、「日本文化に対して先入観がある人々を解放し、日本文化をもっと気軽に楽しんじゃおう」というコンセプトの音声コンテンツです。ここでは講義ノートとして、お話の概要を公開します!(前回の講義ノートはこちら)
第2回以降、数回は「浮世絵」がテーマです。今回は、幕末に活躍した歌川国芳(くによし、以下国芳)と、歌川国貞(くにさだ、以下国貞)。名付けて「くにくにブラザーズ」がテーマ。え、誰? と思う方、まずは作品を見てみてください。幕末に人気を博したふたりの、時にかっこよく、時に工夫を凝らした作品に日本だけでなく海外からも注目が集まっています!
江戸の男たちの心を鷲掴み!?歌川国芳
これは明代の中国で書かれた長編小説『水滸伝(すいこでん)』を描いたもの。堕落した国に反抗する108人の豪傑たちが梁山泊(りょうざんぱく)というところに集まって官軍と戦う話です。現代でも人気があるので、ご存知の方も多いかもしれません。
『水滸伝』を彩った豪傑たちは読本などでも描かれましたが、あくまで物語の挿絵でした。一方、国芳はひとりひとりの男たちを主役にした絵を1枚の浮世絵として描きます。この斬新な作品は大人気に! そして江戸の町人たちはこぞって国芳の絵の刺青を全身に入れました。こうして「武者絵」というジャンルが確立したのです。
ちなみに、彼の人気は日本だけにとどまりません。2015年に国芳の展覧会がパリで開かれた時のショーは国芳の絵を刺青として背負った男性たちがランウェイを歩くというもの! 海外での国芳の人気がうかがえます。
一躍売れっ子絵師となった国芳を襲ったのが江戸の三大改革のひとつ、天保の改革でした。この改革によって、歌舞伎の役者絵、遊女、芸者などの美人画を描くことが制限され、浮世絵は大打撃を受けます。それに対して国芳は反逆と諧謔(かいぎゃく)の精神をもって立ち向かいます。どのような浮世絵で幕府と戦ったのかは、ぜひコンテンツをお聞きください。
大胆な構図も魅力!
国芳の魅力のひとつに、構図の大胆さが挙げられます。通常浮世絵では多くの場合、先程紹介した『通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 浪子燕青』 のように、人物を描く際、縦長の紙に1人を描きます。また、複数枚の紙を並べて一作とする場合でも、それぞれの紙に独立して人物が描かれることがほとんどでした。それに対して国芳は紙を横に3枚並べ、それを一枚のスクリーンのようにして絵を描きます。迫力が圧倒的に違いますね。さらに、『近江の国の勇婦於兼』のように縦に紙を並べ、長さ1mほどの作品を仕上げることも! これぞ国芳の面目躍如です。
浮世絵史上、一番の売れっ子!歌川国貞
国貞は早くから才能を見込まれ22歳で浮世絵界にデビュー! その後79歳で亡くなるまで57年の絵師人生を送りました。中でも役者絵と美人画で名声を得ます。テレビもインターネットもない時代、彼が描く歌舞伎や、吉原で人気の遊女たちの姿は、現代におけるメディアそのもの。生涯の作品数は2万5千点ともいわれ、江戸ナンバー1の浮世絵師でした。
ほかにも、役者の家紋や役柄などを抽象化し、いわゆるギンガムチェックの背景を入れた『おあつらへ三色弁慶』など、現代でも通用するようなセンス抜群の絵を描きました。
現代では圧倒的に国芳が人気ですが、当時の人気は国貞に遠く及びませんでした。その理由、幕末の浮世絵の魅力、明治維新後の浮世絵についても番組では触れていきます。
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