普段使っている言葉だけれど、漢字でどう書くのかは分からない……。そんな言葉ってたくさんありますよね。
「犇めく」。さて、なんと読むでしょう? 「うしめく」でも「ぎゅぎゅぎゅめく」でも「もももめく」でもありませんよ?
答えは「ひしめく」!
答えは「ひしめく」。
大辞泉によると、以下のような意味を持っています。
1 大勢の人が1か所にすきまなく集まる。また、集まって騒ぎたてる。
2 ぎしぎしと音がする。
ちなみに、「音がする」という意味のほうがもともとの意味なのだそうですが、現在では大勢が集まる、という意味で使うことが多いように思います。
どうして「牛」が3つ重なっている?
「犇めく」は中国からきた言葉で、たくさんの牛が走っていく状態を表現したもの。
確かに、体重500キロほど(品種による差がありますが)もある牛が大挙して押し寄せてきたら、ものすごい地響きがしそうですよね。
古典作品の『枕草子』『宇治拾遺物語』『平家物語』などにも「犇めく」が使われています。
作品中の意味は、それぞれ以下の通り。
『枕草子』
「いとど奥の方より、物のひしめき鳴るもいと恐ろしくて」
意味:とても奥のほうから、物がぎしぎし鳴るのもとても恐ろしくて
『宇治拾遺物語』※児(ちご)のそら寝
「片方に寄りて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、すでにしいだしたるさまにて、ひしめき合ひたり 」
意味:(比叡山延暦寺の幼い子が、僧たちがぼた餅を作ろうと話しているのを聞き、部屋の)片隅に寄って寝たふりをしながら出来上がるのを待っていたところ、もう作り上げたようで、(僧たちが)騒ぎ立てている
『平家物語』
「京より御使ありとてひしめきけり」
意味:京から使者がきたといって人々が集まり騒いでいる
同じ言葉が、こんなに昔からいろいろな意味で使われてきたなんて、おもしろいですね!
▼続けて漢字クイズにチャレンジ!
「鱸」ってなんて読む?平家物語にも登場する縁起のいいお魚?
アイキャッチ画像:大蘇芳年『芳年武者无類 源牛若丸・熊坂長範』国立国会図書館デジタルコレクションより