俳句ブームが起きていますね。秋はいい香りがしたり、おいしいものがたくさんあったりと、一句ひねりたくなる季節でもあります。
秋の季語はたくさんありますが、「秋水(しゅうすい)」もその1つ。
「秋の水」、「水の秋」なども同じ意味ですが、この「秋水」にはちょっと意外な別の意味があるのです。
「秋」の「水」ではない、意外な意味とは?
秋のころの澄みきった水や流れを表す「秋水」。しかし、秋の水そのものではない意味も持っています。
研ぎ澄まされた、曇りのない刀、冴えた光を放つ名刀。それが「秋水」のもう1つの意味。
「三尺(さんじゃく)の秋水(3尺=約91センチの刀)」「腰間(ようかん)の秋水(腰にさした刀)」などの使い方が古典文学に見られます。
どうして刀が「秋」の「水」なのでしょう? 調べてみてもよく分からなかったのですが、一説に刀に製作年月が入れられている場合、8月(旧暦では秋)が最も多いともいわれます。それと何か関連があるのかもしれませんね。
「秋水」が使われている俳句
ごく一部ですが、「秋水」「秋の水」が使われた俳句をご紹介します。
陰すゞし桐の葉動く秋の水(宗祇)
秋水やすてしづみたる古扇(飯田蛇笏)
眠りたる目を洗はばや秋の水(向井去来)
秋水に石の柱や浮見堂(高浜虚子)
翡翠の来らずなりぬ秋の水(正岡子規)
菱取りて里の子去りぬ秋の水(森鴎外)
秋水に蝶の如くに花藻かな(高野素十)
配達ののぞいて行くや秋の水(夏目漱石)
秋の水やはらかに手によみがへる(中村汀女)
とんぼうや羽の紋透いて秋の水(室生犀星)
獵人の野太刀を洗ふ秋の水(寺田寅彦)
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アイキャッチ画像:葛飾北斎『冨嶽三十六景 武州玉川』、メトロポリタン美術館より