巷でじわじわとブームになっている、食べる竹炭。見た目のインパクトなどもあり、SNSなどでも話題になっています。「そもそも炭って食べられるの!?」と驚いた人もいるかもしれませんが、実は、炭を食べるという習慣は古くからあったものです。今回の記事では、そんな古くて新しい竹炭の魅力を深堀りすべく、竹炭職人にインタビューしました!
想像以上に手軽に使える!食べる竹炭との出会い
私自身が竹炭を初めて食べたのは、食品メーカーの人と一緒に試作品を作っていったときのこと。黒っぽい色を出す食材を探していたときに、食用の炭パウダーに出会いました。「炭は食べられる」ということはもちろん、炭パウダーを少量加えるだけで、真っ黒な色合いになることにもとても驚きました。
そこから数年が経ち、ひょんなきっかけで「食べる竹炭」を再び手にすることに。たんぽぽコーヒーに加えたり、ホットケーキや蒸しパンの生地に混ぜたりして、独特の色味を楽しんでいます。その見た目に最初は驚いていた家族も、最近は慣れてきた様子(笑)。無味無臭なので素材の味を損ねることはなく、想像以上に手軽に使えるのも大きな魅力です。
忍者や民間療法にも利用されてきた炭
炭を食べるという習慣は古くからあり、「美容や健康にいい素材」として人々に親しまれてきました。「忍者が解毒剤として持ち歩いていた」という言い伝えも残っています。また、「炭職人には胃腸の悪い人はいない」といわれており、職人たちはお腹の不調を感じると炭をかじっていたともいわれています。
炭は英語で「チャコール」と呼ばれ、昨今アメリカで人気を集めている食事法「チャコールダイエット」は、炭を食べるというもの。著名人が炭を愛用しているということが話題になり、食べる炭が一躍注目を浴びました。
食べる竹炭の奥深い魅力に迫る!職人にインタビュー
時代は変わっても、人々に愛され続ける炭。食べる炭の奥深い魅力は、どんなところにあるのでしょうか。今回は、炭のなかでも昨今注目を集める竹炭に注目! 有限会社竹炭の里の代表取締役である飯田浩一郎さんにお話を伺いました。
試行錯誤しながら始まった、竹炭づくり
ーー竹炭を作るようになったきっかけは。
私は二代目で、父親の代に創業しました。創業のきっかけは、父が竹炭を焼いている地元のおじいさんに出会い、その魅力に感動したこと。父は竹炭を作りたいと思い立ちましたが、はじめは家族みんなが大反対。それでも父は「やってみたい」というので、「それならやってみたら」ということで竹炭づくりが始まりました。
私たちの会社がある、宮崎県東諸県郡国富町は竹林の多い地域です。竹は生命力が強いので、手入れをしないとどんどん大きくなります。手入れ不足の状態が続けば周辺の森林を侵食してしまう場合もあり、こうした被害は「竹害」と呼ばれています。そこで、私たちは竹を上手に活用して竹害を未然に防ぎたいと考えて、竹炭を作っています。
ーーお父さまが感動された竹炭の魅力というのは、特にどんなことでしょうか。
一言でいえば、竹炭の吸着力です。炭の吸着力は表面積に比例するといわれています。竹炭は多孔質になっているので、木炭に比べて竹炭のほうが表面積がずっと大きいです。創業当時から「竹炭にはとても優れた機能性がある」と感じていました。
竹炭はその吸着力から、せっけんや化粧品、食用などの用途に向いています。なぜなら、火力が強くて長持ちしないからです。つまり、長時間燃え続ける木炭と比較して、竹炭は燃料には向いていません。竹炭ならではの用途を考えたときに、「食用」として販売してはどうかという話になりました。
ーー竹炭を食用として販売するために、どんな準備をしましたか。
食べるということは、人間の体に入るということ。竹炭の機能性や安全性を確認するために、いろいろな文献を調べました。まず、『日本薬局方』のなかに「薬用炭」というものがあります。食中毒や腎臓の悪い人に処方する薬です。東南アジアに行くと黒い粒が薬として売られていますが、これも炭を使ったものです。炭の吸着力を生かして、体内の毒素を排出できるとされています。
実際に、竹炭を食べることの安全性については、大学と共同して分析・研究を2年ほど行いました。その結果、安全性が確認できたので、商品化を進めました。商品の販売がスタートしたのは2009~2010年頃です。
ーー実際に竹炭パウダーを販売し始めて、皆さんの反応はいかがでしたか。
最初は、全く売れませんでした(笑)。一番多かったのは「炭って食べられるの?」という声で、次いで「炭は焦げているから体に悪いのでは」という声がたくさん届きました。炭が食べられることについては、歴史などを紐解いて説明しました。また、炭は炭素ですが、焦げというのは動物性タンパク質が不完全燃焼してできたもの。炭は高熱で加熱しているので、不純物はすべて無くなっています。炭と焦げは異なるもので、体に入っても安全であると伝えました。
もうひとつの課題として、初期の試作品はジャリジャリ感が残っていて、食感がいまひとつでした。もともと竹炭はとても固く、機械で粉砕する必要があります。細かく粉砕できる方法を模索していたところ、10ミクロン以下の微粒子に粉砕できる会社と出会い、今のようにおいしく食べられる形状になりました。
初年度は100キロ作って、1年間でようやく完売。昨今の炭ブームのおかげもあって、現在は年間7~8トンを製造・販売しています。国内での消費が多く、インターネット販売などを通して、一般の人たちに多くご利用いただいています。
正直なところ、これほど多くの人が竹炭を求めるような時代が来るとは、想像していませんでした(笑)。2015年頃から売れるスピードが速くなり、いわゆるブームが到来したのは2018年頃です。
本物の竹炭を作って、幅広く活用してもらいたい
ーー竹炭をつくる際に、どんなことにこだわっていますか。
炭は高温で焼くとアルカリ性、低温だと酸性になります。また、純粋な炭は電気が通りますが、不純物が混ざっていると電気が通らない。私たちは、食べるという目的で炭を使うのであれば、純粋なものを使いたいと思っています。1000℃という高温で焼いて、電気の通るものだけを使っています。窯や焼き方などの改良を重ねてきたのも、売れるようになった要因かもしれません。
材料にもこだわりがあり、有機JASを取得した竹を使っています。国内での消費が大半で輸出はまだ少ないですが、海外の場合はオーガニックを支持する人も多いです。そういったニーズにも対応していきたいと思っています。
ーー竹炭のおすすめの食べ方について、教えてください。
炭は微粒子なので、水などに普通に溶かすだけではなかなか混ざりません。私がよく食べているのは、竹炭パウダーを加えたヨーグルトです。ヨーグルトやスムージーなど、トロトロしたものに加えると混ざりやすく、おすすめです。そのほか、ホットケーキやピザなどの生地やアイスクリームに混ぜたり、子どものキャラ弁に使ったりする人もいます。
インパクトがある色ですが無味無臭なので、いろいろな料理やお菓子づくりに活用できます。一日につき2~5グラムを目安に、初めは少量から使ってみてください。
また、クレンジングや歯磨き粉などに少量混ぜて使う人もいるようです。ほかには「犬や猫などのペットのエサに混ぜています」という声もよく聞きます。炭には消臭効果があるので、ペットの糞尿が臭くないのだとか。獣医さんなどが処方するペット用の薬に、炭が配合されることもあるそうです。
竹炭パウダーを召し上がった人から、心のこもったお手紙やメッセージをいただくこともよくあります。私たちが作った竹炭をいろいろな人に活用していただけて、とても嬉しいです。
ーー竹炭の機能性については、どのように証明されているのでしょうか。
昔は、地元のおじいちゃんやおばあちゃんが「お腹が痛いときは、炭をかじっておくといいよ」とよく言っていたそうです。当時は囲炉裏があったり、薪を使って料理をしたりする時代だったので、炭は身近な存在でした。
しかし、竹炭に関する論文はまだ少ないのが現状です。吸着力などに関するものはありますが、竹炭を食べることについての論文はほとんどありません。今後は、大学などと共同研究を行い、竹炭の機能性を明確にしていきたいと思っています。
竹炭で人も地域も元気にしたい
ーー竹炭づくりを通して、これからどんな未来を創っていきたいですか。
竹炭は利用する人の健康を保つだけでなく、地域の竹林を適切に管理し、地域の雇用にもつながります。竹炭づくりに使えるのは竹の一部。残りの部分は、動物の飼料として利用することもできます。この地域は畜産業も盛んなので、竹を上手に活用すれば、地域の産業を支えることにもなります。竹炭づくりを通して、地元に貢献し、地域での好循環を目指したいと思っています。
ーー和樂web読者へのメッセージがあれば、教えてください。
竹炭を食べたことがない人にとっては、最初は抵抗があるかもしれません。でも、昔から食用として使われてきた素材であり、さまざまな研究などにより安全性なども認められています。先入観にとらわれずに、まずは気軽な気持ちで使ってみてはいかがでしょうか。皆さんの健康づくりに役立ててもらえると、とても嬉しいです。
◆竹炭の里
住所:宮崎県東諸県郡国富町深年3848-13
ホームページ:https://takesuminosato.co.jp/