Culture
2019.09.10

史跡にまつわる怪談。城や古墳・古戦場に残る悲しいエピソードに人間の歴史を見た

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お盆の頃になると、あの世からご先祖様が帰ってくるという意識と、しばし暑さを忘れるために、怪談がよく語られる。しかし歴史にまつわる仕事をしていると、季節を問わず、そんな話に出くわすことがある。今回は、城や古戦場に古来伝わる怪談に、霊感のない私が、たまたま巻き込まれたような話もまじえながら、いくつか紹介してみたい。単なる怖さよりも、非業の死を遂げた人々の哀しさを伝えることができればと思う。

古墳で拾った小さな破片

病人のような臭い

「何を持って帰って来た?」。今から20年近く前のこと、九州の取材旅行から帰宅した私が部屋に入ると、当時、同居していた妹が、顔をしかめながら言った。「いや、何も持って帰ってないよ」と応えると、「そんなはずはない」と言う。私が部屋に入ってきた瞬間、強い悪臭がしたというのだ。汚い話だが痰(たん)の臭いを濃くしたような、おそらく病人のものだという。

私が雑誌の取材で訪れていたのは、大分県のとある市だった。邪馬台国の候補地として名乗りを上げている場所で、地元の人たちに案内されたのは、未発掘の大きな古墳だった。古墳の上で撮影をしていると、地表に細かな破片がたくさん散らばっている。「土器か何かの破片だろうか」と地元の人と話し、勧められてごく小さな破片をティッシュに包んで胸ポケットに入れた。取材後、そんなこともすっかり忘れていたのだが、破片はポケットに入れたままだった。妹に話すと「それ! すぐに元の場所に返して」と言う。

殉葬を強制された女性

「無茶言うなよ」と弱りながら、荷物を片づけていると、妹は居間のカーペットに横になり目をつむっている。昼寝でもするのかと思っていたら、両手をしきりに宙に泳がせ、「…ないで、かけないで……」とぶつぶつうわごとを言い始めた。これは普通ではないと思い、「おい、おい」と体を揺さぶったら目を開けた。そして

書いた人

東京都出身。出版社に勤務。歴史雑誌の編集部に18年間在籍し、うち12年間編集長を務めた。「歴史を知ることは人間を知ること」を信条に、歴史コンテンツプロデューサーとして記事執筆、講座への登壇などを行う。著書に小和田哲男監修『東京の城めぐり』(GB)がある。ラーメンに目がなく、JBCによく出没。