Culture
2019.09.10

胸キュンで胸熱!落語に命をかける男たちの物語『昭和元禄落語心中』【漫画】

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深い…!漫画で描かれる演目と登場人物たちの人生

『昭和元禄落語心中』は登場人物が落語を演じる描写が多く、真剣勝負の緊張感もうまく描かれています。袖から高座へと向かう時の落語家の真剣な表情は、何度見てもほれぼれとします。懐には手ぬぐい、手には扇子を持つ侍のよう。はたまた座布団というリングへ向かうボクサーの形相です。

例えば、こんな場面があります。主人公・八雲が自分の殻を破るために「死神」という演目に挑戦します。

金に困った男が死神からもらったアイディアで、医者のフリをして大金を得る。しかし金に目がくらんだ男は、死神との約束を破り…。死神に案内された洞窟で見たのは、大金と引き換えに、自分の命を象徴する消えそうなろうそくの火。パニックになった男は、なんとか寿命をのばそうとしますが…。

死への乾いた描き方がブラックユーモアのような余韻を感じる演目「死神」。これをものにしたのとひきかえに、多くのものを失う八雲に、きれいごとで終わらせない作者の冷静な目線を感じます。

一方、助六にとって重要な演目「芝浜」は、腕はいいものの酒の失敗が多い魚屋の男の物語。

大金の入った財布を拾って、有頂天になって酒盛りを始めます。翌日に女房に聞くと、財布なんか無いと言われる。夢を見たのかと愕然とした男は断酒して、一念発起して仕事に本腰を入れることに。3年の月日が経ち、男は女房から打ち明け話をされる。

こんな人情噺です。数々の名人が演じてきた名作。一世一代の「芝浜」を演じた直後に、助六には悲劇が訪れます…!

「死神」や「芝浜」、この他にも作品の中に登場する落語を上演する落語会が開催され、大入り満員だったと聞きます。落語通の作者だけに、随所にセンスが感じられる奥深い漫画です。落語ファンなら、この世界観へとすぐに入っていけるはず。そして生の落語を見たことがない人は、是非この漫画を入り口にして、寄席へと出かけてほしいですね。

今回ご紹介した漫画はこちら!

『昭和元禄落語心中』
雲田はる子
1巻~10巻発売中
公式サイト:https://itan.jp/rakugoshinjyu/

【おまけ】 落語が気になった方へ 寄席情報

新宿末廣亭

都内唯一の木造建築の、歴史ある寄席小屋
住所:東京都新宿区新宿3-6-12
開演時間:昼の部、12時~16時半 夜の部、17時~21時
入場料:当日券一般 3000円 シニア(65歳~)2700円
学生 2500円(学生証の提示が必要) 小学生 2200円
休業日:12月30日、31日
※予約受付はなく、当日に窓口で入場料購入。(10名以上は団体前売り可能)全席自由席
公式サイト:http://www.suehirotei.com/

天満天神繁昌亭

大阪天満宮内にある上方落語の定席
住所:大阪市北区天神橋2-1-34
開演時間:昼席、14時~16時半
入場料:一般当日2800円(前売り2500円)
シニア当日(65歳~)2500円(前売り2300円)
学生当日 1500円(前売り1000円)(学生証の提示が必要)
※全席指定席、独演会や一門会など各落語家が主催する会を中心にした夜席もある。
公式サイト:https://www.hanjotei.jp/

書いた人

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。