Culture
2019.10.22

無印良品が平屋を作ったら?新発売の「陽の家」は日本の家の良さがいっぱい

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2019年9月、無印良品の家(株式会社MUJI HOUSE)が5年ぶりに新商品を発表しました。その名も「陽(よう)の家」。以前からリクエストの多かったという平屋を、無印良品ならではの発想で実現したこの家。千葉県いすみ市にあるモデルハウスの見学に行ってみると、「おぉ、やっぱ平屋暮らしっていいな」と思わせるポイントが満載でした。

無印良品の家が満を持して発売!「陽の家」の魅力って?

可愛い、狭い、昭和っぽい、かっこいい、自由、のんびりできそう――
平屋に抱くイメージは十人十色。見晴らしのいいタワマン暮らしもいいけれど、平屋は日本人が竪穴式住居の頃から続けてきた、地面に近い暮らしができる家。なじみ深くどこかホッとする住居です。「ミニマリスト」を選択する人も増えた今、機能的な意味でもコンパクトに住める平屋に魅力を感じる方が増えているようです。
今回、無印良品の家から新たに発売された「陽の家」は、「無印良品の家に平屋を作って欲しい!」という長年のニーズに応えて開発された商品。30代以降の住宅購入を検討し始めた層はもちろん、都市と郊外とのデュアルライフ(二拠点居住)を考えている人、階段がない家に住み変えたいというシニアの需要も見込んでいるそうです。

陽の家には、日本建築のワザが生かされている!?

陽の家。その名は、屋根の庇(ひさし)が、木漏れ日を室内に上手に取り込むことができる…そんな家であることから、付けられたそうです。屋根の「庇(ひさし)」は、帽子でたとえるなら、「つば」の部分。太陽が高い夏は、建物に当たる強い日差しを和らげ、太陽が低い冬は屋内に光を取り込みます。また、庇は屋根を伝って落ちる雨の跳ね返りを遠ざける役割をもつため、雨が多い日本では長目に造られるもの。そしてその庇の下に設けられるようになった「縁側(えんがわ)」は、家の中と外をつなげる役割をもちます。「陽の家」もまた、屋根の庇を長くたもち、その下にウッドデッキを設けたことで室内と屋外をつないでいます。「陽の家」には、季節に合わせた快適さを追求する日本建築の粋が反映されているようです。

無印良品の家ならではのこだわりがいっぱい!気になる室内の雰囲気は?

平屋といえば、「THE・日本家屋」な渋~いイメージをもつ方もいるかもしれません。ですが、陽の家は無印良品の家だけあってシンプルで洗練された雰囲気。それでは、気になる内装をチェックしていきましょう!
まずは四季の移ろいを感じながら、陽だまりの中でテーブルを囲むダイニング。晴れた日には、キャスター付きのダイニングテーブルをウッドデッキに出して食事を楽しむこともできます。


続いてリビングは、壁面収納が充実。無印良品のスタッキングシェルフや収納グッズでカスタマイズできます(ちなみに、テーブルとソファが一体化したこのハイブリッドなソファは無印良品の家専用の造作家具だとか)。

そして注目のキッチン。ここは「家族の集まる場所」と考えられているとあって、この家の中心的な存在になっています。ステンレス製のキッチンカウンターの下はオープンにして、無印良品グッズでカスタマイズすることも可能。背面の白い折れ戸の中は、天井高まで物が入る大容量の収納棚。食材のストックや日用品はもちろんのこと、炊飯器やオーブンなどの調理家電も入っちゃいます。キッチンが、ダイニング、リビングとつながっているからこそ、こうした生活感を出さないための工夫は重要です。

続いてサニタリー。洗面化粧台は、話題の「MUJI HOTEL」と同じ物を使用しているとあって、おしゃれなホテルの雰囲気そのものです。


室内に入ってみて最も印象的だったのは、勾配(こうばい)天井。2階建ての家やマンションの場合、ほとんどが家の天井は水平です。ですが、陽の家の天井は屋根の勾配に合わせて傾斜しているのです。これにより、室内空間がぐっと広く開放的に感じられます。さらに、この天井は壁との境界でも継ぎ目を見せず、また柱などで邪魔されることもなくとても美しい面で造られているのです。

無印良品の家は「住宅は高機能な箱であるべき」という考えのもと作られており、断熱性・耐震性・耐久性は標準以上という強いこだわりをもっています。丸2年かけて陽の家をデザイン監修した日本デザインセンターの原研哉氏の言葉を借りると「無駄を省いて貧乏くさくなるのではなく、数寄屋造(すきやづくり)と同様に、隅(すみ)や隙間、ディテールの完成度を上げていくことで精神的に豊かに変わっていく瞬間がある」。陽の家の天井や壁には、こういった無印良品の家の考え方を見ることができました。

屋外リビングになる「ウッドデッキ」の魅力

無印良品の「陽の家」最大の特徴は、何と言っても室内空間と同じ高さでつながる全開放型のウッドデッキ。日本の建築の場合、庇の下には縁側がつきものですが、縁側よりはるかに長く伸びたこのウッドデッキもまた、屋外と室内をつなげる役割を果たしています。室内の居住スペースは70平方メートル程度とコンパクトでも、このデッキと同じ高さで広がっているので狭さは感じさせません。

外観には、国産の杉材を使用。木目の木漏れ日が外壁を照らす様子は山小屋のようでもあり、日本家屋のようでもあります。今はまだ白い杉材ですが、経年変化で少しずつ色の深みも増すことでしょう。ちなみに、陽の家は、建築する際はなるべく建てる場所に近い杉を用いることで、「地産地消」の考えを取り入れていくそう(※なお、外壁に関してはモルタルに変更することも可能です)。

この日、「陽の家」の見学にきていた各社の取材スタッフの方々も、次々とこの掘りごたつのような屋外リビングに腰かけて休憩しているのが印象的でした。

ちなみに、モデル棟の間取り図はこんな感じ。シンプルな箱であるからこそ、無駄を生じさせない生活導線は非常に大切。間取りは複数のプランが用意されています。無印良品の家は、実は画一的に提供されるのではなく「生活が自分の家を自分で編集できるリテラシーをもつ」ことで理想的な住まいが実現します。「陽の家」もまた、これまで販売されてきた無印良品の家の「木の家」「窓の家」「縦の家」と同様に、自分なりに編集することで初めて自分らしい住まいにすることができるのです。

なお、「陽の家」は今回のプランの場合、気になる価格は1750万円(税抜)だそうです(プラン、設備により変動しますので目安として参考にしてください)。
現代の日本人のライフスタイルを反映しながら、日本建築の粋が随所に感じられる陽の家。家全体で寛げる陽の家なら、一日中贅沢な時間が過ごせそうです。

「陽の家」を実際に見たい人は、千葉県いすみ市にあるフォレストリビングに行ってみよう

さて、今回訪問した「陽の家」のモデル棟は、千葉県いすみ市にある「フォレストリビング」にあります。陽の家の見学(予約制)はもちろん、敷地内にグランピング施設を備えているから、モデル棟を訪問しがてら、テント泊をし自然と触れ合うことができます。敷地内に設置されているシャワールームにも、無印良品の備品が使われていたりと、見どころもちらほら。訪れた際は、ぜひチェックしてみてください。


長閑(のどか)な田園風景と、付近の長く伸びる海岸線。どこまでも気持ちがいいいすみ市。移住者が増えているのも納得です!

フォレストリビング

店舗名:フォレストリビング
住所:〒299-4501 千葉県いすみ市岬町椎木3180-1
営業時間:チェックイン14:00〜17:00 チェックアウト11:00
定休日: なし
公式webサイト:フォレストリビング

無印良品の家

公式webサイト:無印良品の家

書いた人

大学院まで日本文学を専攻。和歌や俳諧、江戸から昭和にかけての生活文化などが好き。神保町中のカレー屋を制覇するという課題を自らに課し、1.25倍に増量した過去をもつ。そのため茶室では、常ににじり口で身体をぶつけている。縁のあるエリアは東京と会津。メダカ飼育歴約10年。