筆者の自宅の冷蔵庫にはホワイトボードが貼ってある。
これは磁石で接着することができるものだが、その詳細は後述したい。とりあえずここでは、「筆者の自宅にはこのようなものがある」ということだけ書いておく。
だから何だ? と思われるかもしれない。
しかし「自宅のどこかにホワイトボードがある」という光景は、その家の住人に識字能力があればこそのものだ。しかもインプットとアウトプットの両方ができなければ、ホワイトボードに文言を書いてそれを読むということはしない。
21世紀も20年が経過しようとしている現代だが、それでも識字ができない人は世界に多く存在する。その中で日本は近代以前から高い識字率を達成し、国民の殆どが最低限の読み書きをこなせる国を作り上げた。
それと同時に、この極東の島国では文房具が一大市場を形成している。
日本製文房具の品質
日本を訪れた外国人観光客は、この国の文房具の質に驚かされることが多々あるそうだ。
それは日本人である筆者も実感している。海外のコンビニで売っているボールペンは、はっきり言ってしまえば長く使えるものではない。使っている素材もペラペラのプラスチックで、芯先がガタついているものも少なくない。「どうせ文房具だから」と最初から手を抜いている感じがする。
そのことに霹靂しながら現地の本屋に行ってみると、かなり目立つところに日本製の文房具コーナーが置かれていたりする。海外では大型書店が文房具販売を兼ねていることが多いのだが、現地のホワイトカラーが買うような高級文房具は大抵日系メーカーの製品だ。日本のボールペンは、インクが切れるまで使い通すことができる。素材も先述の粗悪品と同じプラスチックとは思えないほど、しっかりしている。
それでいて日本のボールペンは、極めて繊細な字を書くことができる。0.3mmの芯先のものも珍しくない。そのような高度な製造技術を要するものが、コンビニで売られているということにも注目するべきだ。
たかがノート、されどノート
ボールペンだけではない。日本人はノートに関しても不思議な情熱を持っている。
たとえば、日本の小中学生は教科毎にまったく別のノートを使用する。これは同じ種類のノートを教科毎に複数冊用意しているというわけではなく、国語なら国語用ノート、数学なら数学用ノートというように別の種類のノートが存在するという意味だ。国語用ノートには漢字の書き取りのためのマス目があり、数学用ノートにはxy軸を記載するための方眼が印刷されている。
少しでも板書がしやすいようにというメーカーの熱意が、製品から伝わってくるようだ。
こんな話もある。とある高校生がTwitterで、自身の視覚過敏を明かした。彼はそれ故に白いノートを使いことができず、今まで緑のカラーノートを使っていた。ところが、そのノートを販売していた業者がなくなってしまい、新しく購入することができなくなった。
その投稿は拡散し、何と文房具メーカーや大手販売店もカラーノートの取り扱いを宣言したのだ。
日本人が文房具に対してある一定以上の情熱を持っていなければ、この投稿が広く伝わることはなかっただろう。我々日本人は図らずも「文房具によるバリアフリー」を達成しているのだ。
東大生お墨付きのノート
ここで、筆者が「これは便利だ!」と感じた文房具を取り上げたい。
まずはコクヨのCampusシリーズから、ドット入り罫線ノート。東大生の8割以上がこのノートを使用したことがあるということだが、工夫としては極めて単純だ。
使用者は罫線上のドットに従い、文字を揃えて書くことができる。いや、文字だけではない。図形にも対応するし、資料を貼るための目印にもなる。これもひとつのこだわりである。
「こだわり」とは本来、「あいつはあんなことにいつまでもこだわっている」というような感じで否定的なニュアンスの単語だが、21世紀の今では肯定的な場面での使用が多い。
「こだわる」ことは素晴らしいことだ。そしてノートに対して並々ならぬこだわりを反映させている日本人は、やはり面白おかしい民族だと我ながら感じてしまう。
分離&結合ができるホワイトボード
次に取り上げるのは、冒頭で書いた「筆者の自宅の冷蔵庫にあるホワイトボード」である。
これは巷でも話題になっている『バタフライボード』という製品で、ノートのようにいくつかのページになっている。凄いのは、このページが脱着可能という点だ。ページを切り取って別の場所に貼っておくこともできるし、その気になればいつでも結合させることも可能。これは筆者の母が心底気に入っている製品で、せっかくの試供品を彼女に取り上げられてしまった。
ちなみに、バタフライボードはより携帯に特化した新バージョンも開発し、クラウドファンディングMakuakeで資金調達を行っている。この試供品も筆者は使っているのだが、子供の頃からの弱点だった「メモを取らない癖」がバタフライボードのおかげでだいぶ改善されていると感じている。
いや、「メモを取ることができない」と言うべきか。たとえば頭の中で思い浮かんだ案をメモしようと思っても、その時点で手が止まってしまうのだ。メモやノートの白くて新しいページに字を書くのがもったいない、という心理もある。それに加え、メモにわざわざ字を書く作業自体が不合理だと思ってしまうのだ。この癖は筆者以外の人間には理解されないだろう。
ただ、バタフライボードは楽しい。白いページに思い思いのことを記載するのがこれだけ心躍るものだとは、今まで考えもしなかった。それは恐らく、ウェットティッシュを使えばすぐに文字を消せるという機能が大きく作用しているのだろう。
デジタル全盛の時代だからこそ
以上、筆者のオススメ文房具も併せて紹介した。
誰しもがスマホやノートPCを所有している現代だが、それでも自分の手で書く行為が消滅するわけではない。むしろ、デジタル全盛の時代だからこそ自分の手で書くことが見直されている。
進化を続ける日本製文房具の行方に、これからも注目していこう。
【参考】
コクヨ公式サイト
持ち歩ける!打合せに便利なA4・A5ノート型ホワイトボード【バタフライボード2】-Makuake
ミニマリスト必見!何度も使えるマグネット式ノート|ノーツ・バイ・バタフライボード-Makuake