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10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

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Culture
2019.10.04

秋に読みたい日本人作家の絵本8選まとめ!秋の野菜を子どもと一緒に学ぶ!

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紅葉狩り、遠足、ハロウィン、運動会。楽しい行事が盛りだくさんの秋は、収穫の季節でもある。さつまいも、柿、梨、さんま…毎日がごちそうだ。思わずお腹がすいてくるごちそう絵本の中から、子どもと一緒に、あるいは秋の夜長を楽しむ大人のひとり時間におすすめの絵本を紹介しよう。

きのこ・とうもろこし・お魚。旬を味わう食べもの絵本

作・絵 小林 路子、「森のきのこ」、岩崎書店、1991年
作・絵 佐武絵里子、「あまい とうもろこしと カタイ トウモロコシ」、福音館書店 、2007年
作・絵 長嶋 祐成、「きりみ」、河出書房新社、2018年

「森のきのこ」作・絵 小林 路子

著者の小林路子さんは、きのこ仲間のあいだで「仙人」と呼ばれているらしい。きのこを描いていてはカスミでも食べて生きるしかないだろう、とのことからだ。本書は、森に現れるきのこを中心に日本の代表的なきのこ80余種を小林さんが美しく精緻な絵で季節を追って紹介している。絵本に出てくるのは、きのこだけじゃない。春のページには、妖精のように可愛らしい女の子がアミガサタケと呼ばれる人気者のきのこと遊んでいる。指をくわえて座りこんでいる子供の隣にはチチタケ。ミルクのような白い汁をたくさん出す夏のきのこだ。秋のページにはクマの親子がカヤタケを盃のように掲げている。カヤタケはワイングラスのようにカサがくぼんでいるのが特徴。寒い季節のきのこは霜にも雪にも負けない。最初から最後まで、すべてのページがきのこ、きのこ、きのこだらけだ。きのこの働きや、きのこの一生も学べるので、読み終わるころにはきのこ博士になっているだろう。

「あまい とうもろこしと カタイ トウモロコシ」作・絵 佐武絵里子

私はとうもろこしのスープが大好きだ。甘いとうもろこしは、茹でても、焼いても、サラダにしたり、お米と炊き込んでも美味しい。黄色い身がはじけて、甘い汁があふれる。そんなとうもろこしの別の姿、それはポップコーン。本書では、ポップコーン用とうもろこしの畑からフライパンまでの道のりが描かれている。とうもろこしの食べごろのしるしは?畑のとうもろこしはどうやってポップコーンになるの?収穫の時期っていつ?日ごろ何気なく食べているポップコーンがどこから来て、どうやって作られているのか学べる一冊。一番のお気に入りは表紙。アレンジされた文字が可愛らしい。ページをはみ出さんばかりに描かれたとうもろこし畑の季節の移り変わりにも注目だ。

「きりみ」文・絵 長嶋 祐成

タイトル通り、さまざまな魚たちが「きりみ」で登場する。鮭の切り身、うなぎの切り身、太刀魚の切り身、マグロの切り身、サバの切り身、ヒラメとカレイが向きあって切り身になっている。切り身は続くよどこまでも。エビは殻を剥かれ、カニは足を外され、甲羅のなかのミソまで見せてくれる。いやいや、これは切り身なのか…?カツオにいたっては、削り節になり鰹節になり、海藻は海苔になっている。ここまでくると、いくらなんでも切り身と呼ぶには無理があるような…。ところで、この切り身たちはこの後どうなるか。美味しそうに調理されて再登場する。ヒラメの刺身、カレイの煮つけ、うなぎのかば焼き、太刀魚の塩焼き、ホタテのソテー、さざえのつぼ焼き、カニのむき身…とにかく描かれる料理がどれも大人の胃を刺激するお酒にぴったりの品ばかりなのだ。著者の長嶋祐成さんは魚譜画家。できれば満腹時に読んでほしいが、お腹が空いてくること必至である。

発想がおもしろい!思わず笑ってしまう絵本

作・絵 みやざき ひろかず、「ワニくんのアップルパイ」、BL出版、2009年
文・石津ちひろ 絵・山村 浩二、「くだものだもの」、福音館書店、2006年
文・越智のりこ 絵・みうらし~まる、「ウポポ ウポポポ ポタージュスープ」、鈴木出版、2006年

「ワニくんのアップルパイ」作・みやざき ひろかず

数学の分数の時間にアップルパイが食べたくなったワニくんはアップルパイを求めてお店を周るもなかなか食べられず…仕方がない、自分で作ろうとするがトラブル続出。自家製アップルパイの結末は?さて、ワニくんはアップルパイのことは忘れようとするも、食べたい!という衝動にはあらがえない。夢にまでアップルパイが出てくるから、すっかり寝不足。そんな不幸なワニくんの二日間が描かれている。最後まであきらめない主人公がとっても魅力的だ。しかも、ワニくんが連想するアップルパイにしっかりとレーズンが入っているのがいい。サクサクパイにとろけるりんご。みやざきひろかずさんのほのぼのとした作風と柔らかな水彩画で描かれたアップルパイからは、美味しい香りがこちらまで漂ってきそうな雰囲気。物語の最後には美味しそうなシュークリームも登場する。

「くだものだもの」文・石津ちひろ 絵・山村 浩二

表紙には収まらないくらい、本当にたくさんの果物が登場する。「かいすいよくにはいかないスイカ」と海へ行くのを断るスイカを驚いたように大きな目でみつめるキウィ。そんなキウィが「キウイうきうきうきわでおよぐ」のだ。かき氷を買うために順番待ちをしている「バナナはなんばん?ななばんよ! 」。パンを焼いているパパイヤの後ろをビワが駆け抜けて、栗とぶつかり、ビワがおわびする。果物の名前を使った軽快な言葉遊びがとってもおもしろい。なにより、この果物たち、よく動く。ひとつひとつの果物の表情や動きを追いかけているだけでもすっかり愉快な気分になれる一冊だ。擬人化された果物はどれも本物の果物を思わせる質感で描かれていて、ページをめくりながら、ついつい触ってみたくなる。声に出して読んでほしい絵本だ。

「ウポポ ウポポポ ポタージュスープ」文・越智のりこ 絵・みうらし~まる

目を引く鮮やかな表紙。濃淡のついた色彩の豊かさにどんどん引き込まれてゆく。本書は、女の子が大好きなポタージュスープの中に吸い込まれるというお話。食べものを大切にすることは、命を大切にすること。それは自分の命を大切にすることにもつながる。だから主人公の少女、もえこちゃんのお母さんは栄養たっぷり、愛情たっぷりのポタージュスープを心をこめて作る。大切なテーマが、短くてシンプルな物語のなかにしっかり表現されている。さらにこの絵本の魅力をぐっと引き立てるのが、テンポのよいポタージュスープの歌だ。「ウポポ ウポポポ ポタージュスープ」と歌いながら、スプーンや牛乳、人参、玉ねぎ、かぼちゃ、さらにコンソメ(コンソメキューブなのがいじらしい)が登場する。すべてのページが鮮やかで、躍動感に満ちている。お腹だけでなく、心まで暖まる絵本だ。

やっぱりお芋が食べたい!

作・若菜ひとし 若菜きよこ、「ぴちぱちさくさく」、ひさかたチャイルド、2018年
作・おくはらゆめ、「やきいもするぞ」、ゴブリン書房、2011年

「ぴちぱちさくさく」作・若菜ひとし 若菜きよこ

美味しそうな揚げたてのコロッケの表紙に目が釘付け。表紙を開くと大きなジャガイモがごろごろと転がり出てくる。鍋でぐつぐつ茹でられて、ざるに上がったじゃがいもはほくほくの仕上がり。このじゃがいもがコロッケになるまでが描かれるのだが、とにかく胃を刺激する美味しそうな絵とオノマトペがたくさん並んでいるのだ。茹でたじゃがいもの皮を指先で向いている場面や、ひき肉と混ぜ合わせ、コロッケに成形する場面など、料理手順の描写もぬかりない。パン粉の跳ね返りや大きな気泡。イラストが丁寧で、聞こえるはずのない音まで届いてきそう。「さくさく」で「あつあつ」のコロッケが完成だ。これは絶対に美味しいコロッケに違いない!本のサイズは小さめだけど、絵にとても力がある。絵本の読み聞かせにぴったりの食べものが主役の絵本だ。

「やきいもするぞ」作・おくはらゆめ

森は落ち葉でいっぱい、畑にはお芋がたくさん。「こうなったらしょうがない」と森の動物たちは焼き芋をすることを決意しする。そして焼き芋ができるまでのあいだ、たき火を囲んで踊るのだ。しょうがなく焼き芋を始めることにした1ページ目から、2ページ目のやる気みなぎる動物たちのテンションがおもしろい。お芋にありつけるー!と喜んだのもつかの間、お腹いっぱいの焼き芋を食べると今度はおならが止まらない。動物たちは再び「こうなったらしょうがない」と口にして、おなら大会を始めることにする。おならをしながら無心に焼き芋を食べているうさぎの表情がなんとも言えない。昔話のようなどこか懐かしいタッチのイラストと、美しい秋の風景を背景に、動物たちのばかばかしいけれど本気の大会が繰り広げられる。かなり変わった「やきいもの絵本」だ。

絵本のたのしみ方

今回紹介した絵本はすべて日本人作家によって書かれたもの。外国の絵本と日本の絵本とでは物語の内容も、出てくるモノもちょっと違う。海外に暮らしていると、日本では出会えない食材に出会うことがある。おなじように、何気なく絵本に登場する野菜や料理、言葉の表現も、じつは日本ならではのものがたくさんあるのだ。また、文字が大きくて、読みやすくて、分かりやすい絵本は、子供の語彙力や表現力を育むのにも最適。感動したり、泣きたくなったり、勉強になったり、笑ったりと、大人になってからの絵本は癒しになることもある。子どもの頃とは違った捉え方をしたり、子どもの頃には気付かなかった発見をすることもあるだろう。外で自然に囲まれながら読むのもよし。家でカフェでお茶を飲みながら読むのもいい。図書館や絵本の美術館で読書会などのイベントに参加してみるのもオススメ。秋ならではの絵本で季節を満喫してみては?

書いた人

文筆家。12歳で海外へ単身バレエ留学。University of Otagoで哲学を学び、帰国。筑波大学人文学類卒。在学中からライターをはじめ、アートや本についてのコラムを執筆する。舞踊や演劇などすべての視覚的表現を愛し、古今東西の枯れた「物語」を集める古書蒐集家でもある。古本を漁り、劇場へ行き、その間に原稿を書く。古いものばかり追いかけているせいでいつも世間から取り残されている。