Culture
2019.11.11

千葉県芝山町立芝山古墳・はにわ博物館「はにわ祭」レポート!大人も大興奮のイベントだった!

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この秋、日本列島を襲った大型台風。なかでも台風15号は千葉県に甚大な被害をもたらし、いまでも復旧のめどが立っていないところも多く存在します。千葉県北東部の山武郡にある芝山町もまた、停電などに悩まされていた地域のひとつです。この芝山町に小さいけれど特徴的な博物館「芝山町立芝山古墳・はにわ博物館」があります。そして、この博物館を中心に、芝山町では日本ではほかに見られないお祭りを毎年行っているのです。いったいどんな場所で、どんなことが行われているのでしょうか。今回は博物館の魅力と、独創的な埴輪のお祭りについて、くわしくご紹介します。

古墳と埴輪にフィーチャーした充実の博物館

博物館へと続く道

芝山鉄道「芝山千代田駅」、もしくはJR総武本線「松尾駅」からバスに20分ほど揺られたところに、芝山町立芝山古墳・はにわ博物館があります。かまぼこ型の屋根の建物が何方向にも伸びたユニークな建物の中には、千葉県で出土した古墳の遺物などがたくさん展示されています。

千葉県は関東で最も古く古墳が築造されたといわれていることもあって、1万2,000基以上もの古墳が存在しています。その中でも下総台地にある芝山町はとくに遺跡の多い場所。現在でも100基の古墳が残されています。そして、遺物のなかでも特徴的なのが、この地域では主に6世紀につくられた埴輪です。博物館はこうした特徴を生かし、房総の古墳と埴輪の理解を深めるために作られました。「古墳と今をつなぐ」博物館で、「古墳って何?」「埴輪って?」などの疑問から、古墳時代の生活まで、さまざまなことを知ることができます。

子どもも大人も楽しめる!マンガで知る古墳と埴輪の魅力

学芸員の奥住淳さんによれば、おすすめポイントは「展示解説がキャラクターによるマンガになっていること」だといいます。「子ども達にも親しみやすく楽しみながら『古墳と埴輪』について知ることができます」(奥住さん)。博物館ホームページにも展示のコンセプトは「わかりやすく、かつ楽しく、現代からみた古墳時代を」、キャッチコピーは、「つなぐー命の連鎖ー」とし、展示品の説明を小学校3~4年生くらいを対象としたマンガによる解説で、わかりやすくしましたと書かれています。何でも知っている「武射のハニオサ」と、かわいい芝山小学校3年生「櫻井あやかちゃん」と、元気な同級生の「花山吾郎くん」の3人のキャラクター人形が30数場面をマンガで解説するというものは、それだけでなんだかとても楽しそう!

芝山町立芝山古墳・はにわ博物館は、15万平方メートルの広い芝山公園の北にあり、休憩施設やミニスポーツ施設などもあるほか、周辺には、三重の塔(県指定文化財)のある天台宗の古刹「芝山仁王尊・観音教寺」やその門前の旅館跡など、見どころもたくさんあります。

博物館にはその名にたがわず多くの埴輪が展示されており、どれもとても魅力的です。なかでも来館者に人気の埴輪を教えてもらいました。

1 人物埴輪:優しく涼やかな表情で、頭部から胸部までの半身像です

人物はにわ(山田宝馬古墳群出土)

2 馬型はにわ:轡(くつわ)や鞍など飾りが写実的に表現されています

馬形はにわ(山田・宝馬古墳出土)

3 鶏形埴輪:とさかや背中に羽の表現が見られます。

鶏形埴輪(山田・宝馬164号墳出土)

たしかに、いずも人物や動物のかたちがはっきりとわかり、昔の人はこんなものをつくっていたんだなあ、といつまでも見ていることができそうです。一方で、学芸員の方々の「推し埴輪」は人物埴輪全般とのこと。「男、女、武人、巫女など多様で、芝山町周辺の埴輪は、表情が穏やかですので癒されます」と奥住さんは話してくださいました。
また、博物館で売られているグッズでも、埴輪のレプリカや勾玉づくりセットなどが人気だそうです。埴輪のレプリカは、はにわファンには垂涎の品。実は我が家にもたくさんあります。

古代人が降臨!! 時空を超えた芝山町のお祭りとは


芝山町では、毎年11月の第二日曜日に町をあげてお祭りを開催します。たくさんの人が集まるこのお祭り、残念ながら今年は台風影響で中止になってしまいましたが、どんなお祭りかご案内しましょう。

1982(昭和57)年から町内の有志が始めた芝山はにわ祭は、現在は町おこしのイベントの一環となっています。しかし、ちょっとした町おこしのイベントとは違う、大変異色なお祭りです。当日はきらびやかな衣装を身にまとった国造(くにのみやつこ)を筆頭に、かつての古代人たちが芝山町に降臨します。時空を越えてよみがえる古代の祭礼、巫女の舞、国造に仕える鎧をまとった武人らの行列や花火の打ち上げなどもあります。町おこしのための「産業祭」「文化祭」「商工まつり」も同時に開催され、大変に盛り上がります。

はにわ祭は、本格的なストーリー仕立てになっています。まず行われるのが「降臨の儀」。武射の国造(むさのくにのみやつこ)の奥津城(おくつき)である殿塚の頂上にある御柱(おんばしら)を依りしろとして降臨する様子を現した儀式から始まります。そして、降臨した古代人の代表である武射の国造からは、私達現代人にご託宣が読み上げられ、現代人の代表である町長が「人にやさしく住みやすい町を共に創ること」を約束します。町長の約束に対する答礼として、古代人は「巫女の舞(みこのまい)」を披露します。巫女たちは長い上衣(うわぎ)と裳(も)と呼ぶスカートのような衣服を身にまとい、髷を結い、赤い鉢巻と魔除を意味する目の周りの赤い化粧で汚れや邪悪なものを避けてくれるといいます。

降臨の儀

次に、殿塚に降臨された古代人とこの地に集った私達現代人が交歓する為に、芝山仁王尊敬・観音教寺で行われる「交歓の儀」にうつります。芝山仁王尊山内の僧侶によるお出迎え、そして読経と声明(しょうみょう)による盛大な法要が執り行われます。この中では、蓮の花びらを模した散華(さんげ)を蒔き、古代人と私達が共に心を開く「献杯の儀式」も行われます。

続いて行われるのが古代人を歓迎するために、現代人による「歓迎の儀」です。姫塚に降臨した芝山地方開拓の祖であり、古代里人文化を開花した国造一行を芝山公園に迎え、現代の里人たる芝山町民が感謝と尊敬の気持ちを表すため、郷土芸能や現代舞踊などを披露します。古代里人たる国造一行と現代里人が文化の華を通じて交流を促すものです。

交歓の儀(国造[くにのみやつこ])

芝山仁王尊山内の僧侶によるお出迎え、そして読経と仏教音楽(これを声明(しょうみょう)といいます)による盛大な法要が執り行われます。この中では、蓮の花びらを模した散華(さんげ)を蒔き、古代人と私達が共に心を開く「献杯の儀式」も行われます。

はにわ祭の終わりには、はにわ祭のために1日天下(あまくだ)られた古代人の方々も、祭りの終了と共に天上に帰って行かれます。芝山地区の郷社である熊野神社には、かがり火が赤々と焚かれ、神主さんによる道中安寧 (どうちゅうあんねい)を祈る祭文(さいもん)が読み上げられます。これが「昇天の儀」で、この後町長と武射の国造の別れの挨拶がかわされ、古代人はまた帰ってゆくのでした。

町民の結束のため、はにわ祭はつくられた

お祭りのもとなった文献などはあるのでしょうか。「特にはありません。50人ほどの古代人が出現して、現代人と交流するというストーリーは、大自然の中力を合わせて生きていた古代人を見直し、現代人が人とのつながりを取戻し町の活性化を目指しています。祭が始まったきっかけは、成田空港建設に伴い、町民が賛成反対で対立していた状況をもう一度一つにしようという町民有志が発案しました」と奥住さん。単に古代人との交歓や町おこしだけではなく、お祭りが地域の重大な問題のもとになったということで、より一層結びつくことができたのでしょう。

昇天の儀

はにわ祭をつうじて人の輪はさらに広がる

いま、はにわ祭は一般の見物客もたくさん集まる催しになりました。「見どころは、地元の子どもたちが顔に赤い魔よけの化粧をして、麻でできた古代の儀式用の衣装にみを包んで、行列や儀式を行うところ」だと奥住さんは教えてくれました。かわいい子どもたちの扮装が気になります。わたしたちも扮装をして参加できるのでしょうか? 「実行委員会で決めており、残念ながら古代人に扮するのは地元の小中学生です。でも、一般募集した年もあったように思います」(奥住さん)とのことですので、もしかしたら参加のチャンスもあるかもしれません。けれど、見ているだけでも古代の行列は圧巻です。

残念ながら今年は中止となってしまったはにわ祭、奥住さんも「はにわ祭がないと、町が盛り上がりません」といいます。また、埴輪は町のシンボルとして施設や道路などに建てられて定着しているもの。町の方々にとっては欠かせないものです。奥住さんも「今年中止になった分、来年はより一層力を入れたい」と語ってくれました。

2019年のはにわ祭りが中止になっただけでなく、9月以降の博物館は台風や豪雨の影響で入館者が例年に比べてとても少ないそうです。それでも学芸員の方たちの努力のもと、芝山町立芝山古墳・はにわ博物館は通常開館しています。無表情に見えて、どこか滑稽でやさしくあたたかな埴輪、そして古墳をはぐくんできた千葉の歴史。それらを知ることができる博物館に、ぜひ一度訪れてください。そして、来年はぜひはにわ祭を見にでかけてみませんか。

芝山町立芝山古墳・はにわ博物館

所在地:千葉県山武郡芝山町芝山438-1
電話:0479-77-1828
開館時間:午前9時~午後4時30分
休館日:毎週月曜日および祝祭日の翌日(月曜日が祝日の時はその翌日)年末年始
一般料金:大人200円、小人100円(小中学生)
電車・バスでのアクセス:・芝山鉄道「芝山千代田駅」から、芝山ふれあいバスにて「芝山仁王尊」24分、もしくはJR総武本線「松尾駅」から、芝山ふれあいバスにて「芝山仁王尊」20分
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