「あなたの家にも1本ありませんか?」と聞かれたら、ほとんどの人が「あります」と答える棒が日本にはあります。物干し竿? ほうき? いえ、あのひっぱって伸ばす棒、突っ張り棒のことです。
先日、突っ張り棒をツッパリ(昭和の不良)が売っている会社があるという、冗談のような話を耳にしました。なんでもツッパリ嬢のポスターがホームセンターに貼られていたのを目撃した人がいるとか! 調べてわかったコトの真相をお伝えします。
つっぱり棒の使い方を教えてくれる「つっぱり博士」の登場
壁面と壁面の間などに押し当てて固定する、伸縮性のある棒状の家具、それが突っ張り棒です。カーテンレールとして使ったり、棚を置いたり、また防災用に家具の転倒防止用のものもあります。手軽に使えて便利で、いまやすっかりメジャーな存在です。
大阪市に本社のある平安伸銅工業株式会社は、1952年に創業、突っ張り棒の発売を開始しました。アメリカでカーテンポールとして使われていたものを日本向けに開発し、製造・販売したのがその端緒だったそうです。1980年代には押入れで衣服を掛けるのに便利だとして大ヒット。定番の便利グッズとして成長します。その後、棚になるタイプのものなども登場。平安伸銅工業は、1994年に防災用の家具固定突っ張り棒を作るなど、突っ張り棒業界のパイオニアであり、リーダーであり続けてきました。
現在はクリエイティブユニット「TENT」とのコラボレーションブランド「DRAW A LINE(ドローアライン)」や床や壁を傷つけない「LABRICO(ラブリコ)」などを開発・販売しています。突っ張り棒や突っ張り家具のトップメーカーとして、無粋に思われがちな突っ張り棒をスタイリッシュな家具としてつくり上げ、インテリア好きの間で好評を得ています。
創業者・笹井達二氏の孫で、2015年に三代目社長に就任したのが竹内香予子さん。新ブランドは彼女のもとで生まれました。竹内さんは突っ張り棒の使い方を広めるため、生活雑誌に登場。突っ張り棒に囲まれて育ったので、さまざまな使い方を知っていたこともあり、その雑誌の登場以来「つっぱり棒博士」として活動することに。著書も出すほどの活躍をすることになりました。
博士がスケ番に!社内の反応は?
著書を相次いで発行し「つっぱり棒博士」としてのメディア出演も増えた竹内さんでしたが、さらに突っ張り棒を広める方法はないか考えていました。
そんな時に出会ったとある方の助言から、「突っ張り」ならぬ「ツッパリ」に変身することが、あれよあれよといううちにきまったそうです。けれど、ツッパリ=不良、「つっぱり棒博士」として築いたブランドイメージが変わることになってしまう心配がありそうに感じます。けれども、社内では反対する人はおらず、みんなおもしろがってくれたそうです。さすが、大阪の会社。
「しっかり伝えたいことが伝わる言葉で、かつ起爆剤になるようなインパクトのある露出だったから、やる価値がある」と竹内社長は考えていたそうです。そして迎えたツッパリ嬢ポスターの撮影当日。ポーズや表情を考える担当者がいたにもかかわらず、研究熱心な竹内社長はすでに表情などを自ら練習してきており、緊張どころかむしろノリノリ、不安に思われていた撮影は順調に終わりました。
そしてできあがったのがこれらのポスター!
この勇ましいツッパリ嬢の顔。一度見たら忘れられません。
平安伸銅工業のサイトによれば、ツッパリ嬢にはこのような性格付けがされています。
ツッパリ嬢とは、つっぱり棒博士のもう一つの姿。いつもは笑顔で明るく振る舞っているが、突っ張り棒が正しく使われていないと怒りが蓄積。あるレベルを超えるとツッパリ嬢に豹変してしまう。貫くのは突っ張り棒への愛。「ツッパリの掟」で突っ張り棒の間違った使い方を正そうとしている。
つまり、突っ張り棒でいたずらしたり、ちゃんと設置せず危険な使い方をしていると、清楚な「つっぱり棒博士」から恐ろしい「ツッパリ嬢」になってしまうのです。しかし、案外突っ張り棒を正しく使えていない人が多いのです。
ツッパリ嬢のインパクトは大! つっぱり博士の変身した姿はホームセンターなどに貼り出され、大きな話題となりました。もちろん大好評、大成功したのです。
博士からツッパリ、そしてYoutuberへ
ツッパリのインパクト冷めやらぬなか、またもやお知らせが。なんと先日ついにYoutubeチャンネル「つっぱり棒研究所チャンネル」を開設、突っ張り棒の種類や取り付け方をわかりやすく解説する動画を配信中です。
動画では、博士が正しい突っ張り棒の使い方を教えてくれるので、見ていて飽きません。
平安伸銅工業では、「つっぱり棒」という日本独自の器具について、ねじくぎ使わず、暮らしを豊かにしてくれるもので、社是である『アイデアと技術で「私らしい暮らし」を世界へ』を目指し、弊社製品を通じて私らしい暮らしをユーザーのみなさんに実現してもらえるよう、今後も日本に限らず世界中のみなさまへ発信していくとのこと。
昨年の12月中旬には、ラブリコシリーズの新製品が発売されました。
市販の直径3cmの丸棒と本シリーズのパーツを組み合わせることで、自宅にぴったりな家具をカンタンに作ることができるこちらの製品。1本でも玄関など小スペースに上着や手提げなどを掛ける収納が増設できます。また、組み合わせ方によってラダーラックやコートハンガーになりますし、棚状に作って突っ張れば壁面・間仕切り収納に使うことができます。
新年を迎えて気分一新、模様替えをしようとしている方は、こちらの製品を試してみてはいかがでしょうか。
外部への露出のほか、自社メディアや各種SNSを使って「突っ張り棒」の使い方を広め、新しい製品の開発にも熱心に取り組んでいる安伸銅工業。突っ張り棒からツッパリを思いつき、本気でやりぬく姿勢が、1本のピンと伸びた突っ張り棒の精神そのもののように思えます。そして、さまざまなことに挑戦していくことの大切さを教えられるようでもあります。
ご家庭に1本はあるはずの突っ張り棒が持つ無限大の可能性を教えてくれる博士と、正しく使わないと鬼にもなるツッパリ嬢。あなたは突っ張り棒を正しく使えていますか? ちゃんと使わないと、スケ番に怒られます。ねじをしっかりしめて、まっすぐ突っ張らせて。できましたか?
「返事は?」
「押忍!」