分娩方法のひとつ「帝王切開」が日本で初めて行われたのは、江戸時代であるとされています。日本初の帝王切開では、なんと麻酔せずにメスで開腹されました。
まだ医療の発達していない江戸時代に、一体どこで誰が手術を行ったのか気になりませんか?勇気ある女性と医師たちのエピソードに迫ります!
帝王切開初の地は…なんと埼玉だ!
日本で初めて帝王切開が行われたのは、埼玉県の飯能市(当時の秩父郡我野正丸)という場所です。「ダサイ玉」なんて呼ばれる埼玉県ですが、最先端の医療を行い成功させた地なのです。
初の帝王切開が行われた日は1852(嘉永5)年6月12日。ペリーの乗った黒船が来航する前年のことでした。
当時ヨーロッパでは帝王切開による母体死亡率は非常に高く、手術を受ける側も執刀する側も大きな勇気が必要だったことでしょう。それを裏付けるように、日本で2例目の帝王切開が行われるまで30年もかかったと言われています。しかし、同じ1852年に2例目のにもう一度帝王切開が行われたという説もあります。
日本初の帝王切開は、お母さんを守るために行われた
麻酔なしで帝王切開に臨んだ勇気ある女性は、当時30代だった本橋みとさんです。3日間もの陣痛に苦しんでいたみとさんの胎内で、残念ながら赤ちゃんが死亡してしまい、みとさんも危険な状態に陥ります。
このまま放っておいては危ないみとさんの命を救うため、立ち上がったのが伊古田純道(いこだじゅんどう)・岡部均平(おかべきんぺい)2人の医師です。江戸時代のことなので、みとさんは麻酔を施されることなく開腹手術を受けました。もちろん医師たちに帝王切開の経験はなく、オランダの医学書『撒羅満氏産論(さらまんしさんろん)』を見ながら手術を行ったとされています。
日本初の帝王切開は奇跡的に成功。術後みとさんは感染症などに苦しみましたが、88歳という長寿を全うしました。
「本邦帝王切開術発祥之地」として記念碑が建つ飯能市
1987年6月12日、手術後135年を記念して「本邦帝王切開術発祥之地記念碑」が埼玉県飯能市坂本に建てられました。
飯能市の史跡にも指定されており、安産祈願に訪れる妊婦さんもいらっしゃるのだとか。勇気ある女性と医師たちの歴史を辿りに足を運んでみてはいかがでしょう。
住所:〒357-0218 埼玉県飯能市大字坂元(国道 299号線)