Culture
2020.04.05

おみくじにも作法がある!吉や凶より言葉が大事?意外と知らない知識を紹介

この記事を書いた人

おみくじの吉や凶で一喜一憂するのは、もうやめよう。今のあなたに必要なメッセージは、吉や凶といった情報ではなく、神様・仏様からのメッセージを感じること。都内屈指のパワースポットである浅草・待乳山聖天(まつちやましょうでん)の住職に、おみくじについてのありがたいお話や、おみくじを引く際の作法を聞きました。

浅草行くなら待乳山聖天も忘れずに

わたしのお気に入りスポット、それは待乳山聖天。

有名な浅草寺の支院ですが、浅草寺ほど混雑せず神聖な空気を感じられるため、たびたび訪れています。境内のあちこちで、大根や巾着をモチーフにした装飾があり、これを見て歩くだけでも楽しいのです。

大根はご本尊の聖天様への供物

大根を買って聖天様にお供え(お下がりの大根がいただけることも)。1月7日は大根まつり

巾着は財宝の象徴で商売繁盛のご利益あり

待乳山聖天を訪れたら、ぜひおみくじを引いてみてください。信仰心のある方も、ない方もぜひどうぞ。漢文で書かれた硬派なメッセージがグッとくるんです。2020年の初詣で引いたのはこちらです。

わたしは毎日易占いをし、易経を読んでいるため漢文には親しみがあり、また、内容にも心当たりがありいろいろと納得。

おみくじのことをあれこれ調べてみた

「迷信は信じない」というリアリストでも、占いをしたり、おみくじを引いたりするときは、「悪いものが出ませんように」と思うものではないでしょうか。「運を天に任せる」という言葉があります。人生を左右する局面や、ここ一番の大勝負のときは天の意をうかがいたいものですよね。

おみくじには、箱に手を入れて選ぶタイプと、番号が書いた棒が入った箱を振って1本出し同じ番号のおみくじをもらうタイプがあり、待乳山聖天は後者のタイプ。でも、そういえばおみくじの起源や歴史のこと、あまり考えたことがありません。手元の本で調べると、歴史上の人物のエピソードが続々と見つかりました。

1. 壬申の乱のとき、のちに天武天皇となる大海人皇子(おおあまのみこ)が「ひねりぶみ」というおみくじのようなもので謀反の成否を占った。
2. 天皇を決める際、鶴岡八幡宮でくじが引かれ、後嵯峨天皇の即位が決まった。
3. 将軍を決める際、石清水八幡宮でくじが引かれ、足利義政の即位が決まった。

また、「明智光秀が織田信長を討つ前日に愛宕山でくじを引いた」という記述もあり、本能寺の変におみくじが関わっていた可能性があるらしい。なんでも、「吉が出るまで3度も引き直した」という説もあり、勝負への気迫を思い知らされるエピソードです。

元三大師様が作ったおみくじのルーツ

日本には神社とお寺があり、おみくじにも神社系のものとお寺系のものがあります。もっとも、日本では神仏習合(日本古来の神道と大陸伝来の仏教が融合していること)や廃仏毀釈(はいぶつきしゃく。仏教排除運動)のため、神社とお寺の境界はあいまいで、おみくじも神社とお寺とできっちり分かれているわけではないようです。

待乳山聖天のおみくじは漢詩で書かれるスタイル。中国からもたらされ、日本のお寺で「観音くじ」として広まったものを、良源(りょうげん)という天台宗第18世の高僧が解釈したものがルーツだという伝説があります。

上が良源。下は、良源が修法中の姿を弟子が写したもの。『元三大師百籖和解』(京都大学附属図書館所蔵)部分

ちなみに、良源は正月三日に亡くなったことから「元三大師(がんざんだいし)」とも呼ばれます。厄除けのお札などで、元三大師の姿を見たことのある方は少なくないでしょう。この良源=元三大師が作ったおみくじが「元三大師百籤(がんざんだいしひゃくせん)」で、これが全国に広まったと伝えられています。

ちなみに、神社のおみくじにも「元三大師百籤」をベースにしたものもあります。それ以外に、神話の言葉をルーツとするもの、太占(ふとまに)などの古代の秘法に基づくものなどがあり多種多様。神社では漢文ではなく「和歌」のおみくじが多いのが興味深いところです。

待乳山聖天の住職に聞いたおみくじ作法

神社・仏閣好きの人や、おみくじ・占いファンの間では、「待乳山聖天のおみくじは辛口だけど、とても当たる」といわれているようです。これは気になると、待乳山聖天に電話すると住職が直々に答えてくれることになりました。

「本来はおみくじを引く前に身を清め、観音経を唱えるなどの作法があり、これは心を整えるものです。また、信仰の度合いは人それぞれです。普段から信心深い方は、お願いごとや自分で決めかねる判断があるときに、『観音様の言葉をいただきたい』という真剣な気持ちでおみくじや祈祷を行っています。おみくじなら、吉や凶よりも、おみくじの『言葉』が重要で、どのおみくじにも必ずいいことが書いてあるんです。ある漢字を見て、行いを反省したり、あるいは大きな勝負に出てみようという気持ちになることもあるでしょう」

いいことを聞きました。たとえばわたしは45番のおみくじをいただきましたが、その中に「雲」という文字が気になりました。「雲は太陽や月を隠すもの。本来はあるのに、ときのいたずらで見えなくなっている」という感じに解釈することもありますと、住職が教えてくれました。

同じおみくじを見ても、それをどう解釈し、行動に活かしていくかはその人次第。おみくじとは潜在的に感じていることを、目に見える「文字」の形で見せてくれる手段です。言霊を大事にする日本らしい風習だなと思います。人生の局面において十分努力した、あとは仏様・神様頼み! となったら、おみくじの漢詩や和歌に託すのもいいかもしれません。

■待乳山聖天
東京都台東区浅草7-4-1
http://www.matsuchiyama.jp/