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2019.03.11

国宝「曜変天目」とは? 奇跡の工芸3碗がMIHO MUSEUMほかで見られるなんて!

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国宝「曜変天目」三碗が2019年春同時公開!

南宋時代の中国でつくられた曜変天目(ようへんてんもく)は、光り輝く斑文の美しさをもつ他に類を見ない茶碗で、世界中でなんと3碗だけしか現存していません。 

12世紀から13世紀に中国でつくられた、世界史上でも類を見ない芸術的な焼き物の曜変天目は現在、中国にはひとつもなく、日本に3碗が残るだけ。まさに奇跡的な工芸の至宝なのです。

いずれも国宝に指定されている曜変天目を所蔵するのは、大徳寺龍光院(だいとくじりょうこういん)、静嘉堂文庫美術館、藤田美術館。その3碗がこの春、それぞれの展覧会で同時に公開されるというのは千載一遇・前代未聞の大ニュース&大チャンス! 

この願ってもない機会を前に、曜変天目と注目の展覧会についてご紹介します。

国宝「曜変天目」とは? 奇跡の工芸3碗がMIHO MUSEUMほかで見られるなんて!
「大徳寺龍光院 国宝・曜変天目と破草鞋」チラシ表紙

ミラクル? 曜変天目は偶然の産物!

曜変天目とは、天目茶碗と称される茶道具の一種です。もともと南宋時代に中国福建省の建窯などで焼かれた鉄質黒釉のうつわで、見た目の特徴は盃を大きくしたようなすっきりとした形。天目茶碗という名称は、中国を訪れた日本の禅僧が浙江省(せっこうしょう)の天目山禅寺(てんもくざんぜんじ)に備えられていた茶碗を持ち帰ったことに由来し、同じタイプの茶碗が天目と呼ばれるようになりました。

鎌倉から室町時代にかけての日本では、文化芸術の最先端を走っていた中国(唐)からもたらされたさまざまな文物は憧れの的で、武家や貴族たちは天目茶碗をはじめとした中国伝来の美術工芸品を特別に「唐物(からもの)」と呼び愛玩。そんな唐物を飾るために「書院」という新しい空間が生まれ、唐物を鑑賞する文化が高位の知識層の間に定着していた時代に茶の湯が登場したのです。

東山文化を築いた室町幕府8代将軍足利義政は、唐物の名物収集に力を入れます。そのれ一大コレクションがのちに東山御物と呼ばれ、将軍が愛玩したことから、唐物の天目茶碗はフォーマルなものと認識されるようになり、格別な茶碗と目されるようになりました。

天目茶碗の中でも曜変天目は、黒釉の表面に斑文が散り、斑文のひとつひとつが宝石のようにゴージャスな光彩を宿したもの。「窯変」から曜変へと字が改められたのも、その模様が漆黒の宇宙に舞い散る星のようだったことによります。当時の日本には自然釉や焼き締めなど石の肌合いに近い焼き物が主でしたから、これまで見たこともない完璧な美を宿した曜変天目を目にした人々はどれほど驚愕したことでしょう。

曜変天目の製造方法は、実はいまだに解明されていません。自然から採取した鉄分の多い土と、複雑に酸化金属が混じった釉薬、間仕切りのない窯で焚かれた炎。この3つの条件が何かの拍子に重なり合って誕生したと考えられています。

大徳寺龍光院の曜変天目

茶の湯や美術工芸に詳しい人は、龍光院の曜変天目が見られると聞くと、心がソワソワと浮き立って仕方がないといいます。というのも、京都・紫野にある龍光院は非公開の塔頭(たっちゅう)。所蔵する曜変天目は、いつもは寺の奥深くにしまわれていて、「一生に一度」見られるか見られないかわからないというほどの名碗なのです。

国宝「曜変天目」とは? 奇跡の工芸3碗がMIHO MUSEUMほかで見られるなんて!
「大徳寺龍光院 国宝・曜変天目と破草鞋」チラシ裏表紙

MIHO MUSEUMで一生一度の願いが叶う!

それほどの名碗を見ることができるのが、MIHO MUSEUMで開催される、大徳寺龍光院の400年を通観する2019年春季特別展「大徳寺龍光院 国宝・曜変天目と破草鞋(はそうあい)」です。

大徳寺龍光院の開祖は、千利休とともに豊臣秀吉の茶頭(さどう)を務めた津田宗及(つだそうぎゅう)の息子である江月宗玩(こうげつそうがん)。だからこそ、宗及ゆかりの曜変天目をはじめ、「密庵咸傑墨蹟(みったんかんけつぼくせき)」や伝・牧谿(もっけい)の「柿・栗図」といった国宝・重文が伝えられているのです。

非公開の塔頭が豊かに持つ禅と茶の至宝が、これほどのスケールで見られるのは、まずありえないこと。利休をも凌ぐ財力があった宗及から江月へと伝わった天王寺屋の名宝のかずかずをこの機会に、ぜひ堪能したいものです。

ベールに隠されてきた国宝を含む寺伝の名宝が初の一挙公開!
「大徳寺龍光院 国宝・曜変天目と破草鞋」

会場:MIHO MUSEUM
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
TEL:0748-82-3411
会期:2019年3月21日(木・祝)~5月19日(日)
開館時間:10時~17時(入館は16時まで)
休館日:月曜(4月26日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
入館料:一般1,100円
公式サイト