「冬至(とうじ)」は、二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、1年で最も夜が長く、昼が短い日。
冬至の日には、かぼちゃ、小豆粥、コンニャクなどを食べ、柚子湯に入って無病息災を願う風習があります。柚子湯は血行が良くなり身体が温まるため、風邪を防ぎ、皮膚を強くする効果があるそうです。
それでは、夏の野菜であるかぼちゃを冬至に食べる理由はご存知でしょうか?
かぼちゃは保存ができ、食べておいしいだけではなく、ビタミンやカロチンが豊富で栄養価が高いから?
もちろん、それも理由の一つですが、他にも理由がありました。
この記事では、冬至の日にかぼちゃを食べるようになった理由を探っていきます。
冬至は悪運をリセットする日?
中国では、冬至は暦の起点で、太陽の運行の出発点とされていました。これからやってくる本格的な寒さに備えるため、食べ物に気を付け、衣替えを行い、寝具も変えるなど、冬支度をする日とされていたのです。
一方で、冬至を境に日照時間が日に日に長くなるため、太陽が生まれ変わる日である「一陽来復(いちようらいふく)」の日でもあり、この日を境に運が上昇する日とされているのです!
冬至は、1年の中で最も大切な日とされており、運を更に上昇させるための様々な食習慣やしきたりがありました。
なお、冬至の日と、最も日の出が遅い日、最も日の入りが早い日は一致しません。日の出が最も遅い日は冬至の約半月後で、日の入りが最も早いのは冬至の約半月前です。
冬至の日は、「ん」のつくものを食べて幸運を呼び込もう!
運が上昇する転機となる冬至の日には、「運」を呼ぶために「ん」のつくものを食べると良いと言われています。また、「いろはにほへと」が「ん」で終わることから、「ん」には「一陽来復」の願いが込められているのです。
特に、「ん」が2個つくものは「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれています。もちろん、かぼちゃもその一つで、「運盛りの野菜」と言われています。
冬至の七種
- 南瓜(なんきん):かぼちゃ
- 人参(にんじん)
- 蓮根(れんこん)
- 銀杏(ぎんなん)
- 金柑(きんかん)
- 寒天(かんてん)
- うんどん(うどん)
これらを食べると病気にかからず、更に「うんどん(うどん)」は、運(うん)・鈍(どん)・根(こん)に通じるので、出世するとも言われています。
運盛りは、縁起かつぎだけでなく、栄養をつけて寒い冬を乗りきるための知恵でもあり、土用の丑の日に「う」のつくものを食べて夏を乗りきるのに似ていますね。
冬至にかぼちゃを食べる理由
「冬至」と言えば、「かぼちゃを食べる日」と認識している人は多いのではないでしょうか?
冬至にかぼちゃを食べる風習は、江戸時代中期頃に根付きました。
冬至にかぼちゃを食べるのには、中風(脳卒中)や風邪をひかないとか、金運を祈願する意味があるようです。また、「冬至かぼちゃは朝のうちに食べるとよい」とか、「四つ前(午前10時)に食べるとよい」という地域もあります。
かぼちゃの伝来
かぼちゃは、熱帯アメリカ原産のウリ科の野菜で、アジアでの産地であった「カンボジア(Cambodia)」の国の名に由来すると言われています。
かぼちゃの日本への伝来については諸説ありますが、天文年間(1532年~1555年)に豊後国(現在の大分県)にポルトガル人がカンボジアから持ち込み、当時の豊後国の大名・大友義鎮(大友宗麟)(おおとも よししげ(おおとも そうりん))に献上したという説が有力です。このかぼちゃは「宗麟かぼちゃ」と名づけられ、現在でも大分県などで栽培されています。
当初は「かぼちゃ瓜」と呼ばれ、のちに「瓜」が落ちて「かぼちゃ」と呼ばれるようになりました。漢字の「南瓜」は、「南蛮渡来の瓜」の意味です。
日本に伝来された時は、毒性があるものとして、主に観賞用とされていたようです。かぼちゃを食べるようになったのは江戸時代からと言われています。
「冬至のかぼちゃ」は、栄養面からもお墨付き!
昔の日本では、冬至の頃になると秋野菜の収穫も終わって、保存できる野菜が少なかったのです。
「冬至にかぼちゃ」は、緑黄色野菜の少ない冬にカロチンやビタミンの多く含まれるかぼちゃを食べ、風邪等への抵抗力をつけようとした先人の知恵だと言えます。
カロチンには抗酸化作用もあり、体の老化を防ぐことも期待できます。かぼちゃは、他の野菜に比べて保存がきき、保存中の栄養価の損失が少ないのが特徴です。
体の芯から冷えるくらい寒く、空気の乾燥する冬にはぴったりの食べ物で、「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」という言い伝えは、現代の栄養学からも証明できるのです。
冬至かぼちゃに年をとらせるな?
かぼちゃは、漢字で「南瓜」と書くことからわかるとおり、瓜の仲間で、夏が旬の野菜です。
かぼちゃは保存がきき、丸のまま保存しておくと、冬まで料理に使うことができます。
しかし、長くもつからといって、春まで保存してしまっては栄養素が減ってしまいます。「冬至かぼちゃに年をとらせるな」は、かぼちゃの保存も冬至までが限度という意味です。
かぼちゃのいとこ煮
冬至には、かぼちゃを小豆と一緒に煮る「いとこ煮」を食べる習わしが各地にあります。
「いとこ煮」とは、小豆、かぼちゃ、ごぼう、芋、大根、豆腐などを煮えにくいものから順に入れ、味噌か醤油で味付けした料理です。かたい材料からから順に入れて煮ることから、「追い追い」と「甥々(おいおい)」、「銘々に似る」と「姪々(めいめい)」にかけた語呂合わせが名前の由来と言われています。
「いとこ煮」は、神仏への供物を集めて煮ることから始まった料理で、もともとは盆や正月、祭礼時に食べられていました。今でも一般家庭で楽しまれているほか、地域の祝い事のときにはいとこ煮がよく食べられています。地域によって煮込む材料や味付けが異なるのも、「いとこ煮」の特徴の一つです。
冬至冬なか冬始め
「冬至冬なか冬始め」の言葉の意味をご存知ですか?
暦の上では、冬は「立冬(りっとう)」から「立春(りっしゅん)」の前日、つまり節分までで、冬至はその中間にあたります。
冬至の約2週間前に「大雪(たいせつ)」(雪が激しく降り始める頃)があり、冬至の約1か月後に「大寒(だいかん)」(最も寒さの厳しい頃)があります。つまり、冬至は冬の真ん中ですが、冬至は「冬の至り」と書いても冬の極点ではなく、冬至を過ぎてから本格的な寒さがやって来るということです。
このように、冬至は、本格的な冬を迎える前の節目の日として大切に考えられてきました。
現代に伝わる冬至の風習の一つである「かぼちゃを食べる」には、これからやって来る厳しい冬に備えるというだけではなく、幸運や金運を引き寄せるという意味もあるのです!
今年の冬至の日には、かぼちゃを食べて、幸運を呼び込んでみませんか?
主な参考文献
- 『日本民俗大辞典』 吉川弘文館 2000年4月 「冬至」の項
- 『食の民俗事典』 野本寛一編著 柊風舎 2011年7月 「冬至」の項
- 『日本人の「食」、その知恵としきたり』 永山久夫監修 海竜社 2014年11月
- 冬至に関連した話題とウンチク 冬至にかぼちゃを食べるわけ等
- カボチャの伝来と大分県との関わりについて
暮れは冬至かぼちゃに加えて酉の市で開運を!
酉の市の簡単解説記事は以下よりどうぞ!