Gourmet
2020.02.28

ひな祭りの定番食材!はまぐりの名産地、三重県桑名で絶品料理に舌鼓!

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3月3日のひなまつりに欠かせないものと言えば、はまぐりのお吸い物。上品な味わいがあることから、好きな方も多いと思います。

高級食材としてのイメージが強いはまぐりですが、実は縄文時代から食べられ、平安時代には遊びや嫁入り道具としても使われるなど、私たちの暮らしと深い関わりがあることをご存知でしょうか。

そこで今回は、はまぐりの歴史や魅力、はまぐりの一大生産地「桑名市」の訪問レポートをお届けしたいと思います!

ひな祭りに「はまぐり」を食べるのはなぜ?

女の子の節句であるひな祭りに食べるものと言えば、ちらし寿司とはまぐりのお吸い物。では、どうして「はまぐり」なのでしょうか。

いくつかの説がありますが、はまぐりなどの2枚貝は昔は「お姫様」を意味していました。2枚貝というのは、1対で2枚の貝を持っているもののこと。はまぐりは対の貝はぴったりと合いますが、他の貝では絶対に合うことがないため「夫婦和合」「夫婦円満」の意味を持つとされています。

このことから「一人の相手と永遠に仲良く過ごせるように」という親から娘への願いを込めて、ひなまつりの料理に使われるようになりました。同じような意味から、結婚式などに縁起物として振舞われることもあります。

縄文時代は食用、平安時代は遊びとして

私たちがはまぐりを食べるようになった歴史は古く、縄文時代にさかのぼると言われています。当時の貝塚から数十種類の貝が発見されており、そのなかでもはまぐりは数多く見つかっています。

平安時代になると身分の高い人たちを中心に、二つとして同じものがないはまぐりの特徴を生かして「貝合わせ」や「貝覆い」という遊びが始まりました。これは、対になっているはまぐりに絵を描き、それをバラバラにしてもう片方を探すという神経衰弱にも似た遊びです。

また、嫁入り道具として華やかな絵を施したはまぐりを「貝桶」に入れて、嫁ぎ先に運ぶ習慣もありました。当時は、お嫁に出た後は娘と会うことはなかなか難しかったため「いい相手と出会い、一生幸せに楽しく過ごせるように」という親の気持ちが託さていたのかもしれません。

現在でも、ひなまつりの時の七段飾りの道具のなかに「貝桶」が含まれている場合があります。時代は変わっても、娘のことを思う親の気持ちは変わることなく受け継がれているということですね。

はまぐりの一大生産地「桑名」へ

「その手は桑名の焼きはまぐり」という有名なシャレにもあるように、三重県桑名市の名物であるはまぐり。揖斐川と長良川の合流地点にある赤須賀漁港では、桑名の新鮮な魚介類が水揚げされています。そこで今回訪れたのは、赤須賀漁港にある複合施設「はまぐりプラザ」。

はまぐりなどの資料展示とともに、はまぐり料理が食べられる「食堂はまかぜ」もあります。

さっそく、はまぐりの実物がありました。

左が桑名のはまぐり、右がチョウセンハマグリ。模様が異なっているのがよく分かります。日本で流通しているはまぐりは年間1000トン程度ですが、そのうちチョウセンハマグリが約7割を占めているのだとか。

他にも貝を獲る道具「ウンテン」の実物なども展示されています。はまぐりの他にも、桑名でよく獲れるあさりやしじみなどの魚介類についての展示もあり、知っているようで知らない貝のあれこれを学ぶことができます。

はまぐりの一大生産地として知られる桑名ですが、過去にははまぐりの絶滅の危機に見舞われたこともありました。

昭和40年代には年間2000~3000トンのはまぐりの漁獲量がありましたが、干拓事業や地下水のくみ上げによる地盤沈下などの影響で、はまぐりが生息できる環境が減っていき、平成7年には過去最低の0.8トンにまで落ち込んでしまいました。

そこではまぐりの種苗生産や稚貝放流、餌となるプランクトンを育てるための試行錯誤などを行い、それが見事成功して、絶滅の危機を何とか乗り越えて現在にいたります。

私たちが現在もはまぐりを美味しく食べられるのは、こうした取り組みがあってのことなんですね。一連の流れを知ると、「はまぐりを大切に味わいたい」という気持ちが湧いてきます。

絶品!焼きはまぐり!

地元の人が「地場のはまぐりが一番美味しい」と絶賛する、桑名のはまぐり。はまぐりの産地ならではの名物料理「焼きはまぐり」をいただいてみました!

はまぐりをひとつずつアルミホイルに包み、網の上で焼いていきます。焼きあがると「パカッ」と開きます。はまぐりの汁をこぼさないように、そっと持ち上げていただきます。

何も付けなくても、そのままで十分美味しい!

ちなみに桑名の焼きはまぐりは「東海道中膝栗毛」のなかにも登場しており、江戸時代からすでに人々に愛されていたそうです。シンプルな食べ方だからこそ、時代を超えて永く受け継がれているんですね。

はまぐりのお吸い物も、これまた絶品でした。独特の上品な出汁のなかに、プリプリとした身が入っています。

江戸時代から赤須賀漁港で作られているはまぐりの保存食「時雨蛤(志ぐれ蛤)」。佃煮に生姜を加えて煮たもののことで、10月の時雨の降り始める頃から作られるためこう呼ばれるようになったのだとか。ごはんが進む一品です。

旬の時期には、ぜひ桑名へ

古くからおめでたい席には欠かせない縁起物として、人々に親しまれてきたはまぐり。上品な美味しさのなかに、いろいろな歴史やメッセージが込められていることがよく分かりました。

はまぐりの旬は、2~4月。「はまぐりが大好き」という方は、ぜひ桑名を訪れてみてはいかがでしょうか。単なる味わいだけでない、さまざまな発見がその先に待っているかもしれません!

◆はまぐりプラザ

住所:三重県桑名市大字赤須賀86-21

電話:0594-22-6010

開館時間:9時〜17時(年末年始休み)

*はまぐり食堂は11時30分〜13時30分(火曜休み)

公式サイト:http://hamaguri-plaza.com/

書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生ふうど」を立ち上げる。現在は、郷土料理をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://yojofudo.com/