Gourmet
2019.08.16

煎茶、緑茶、玉露の違いは? もっとおいしくなる!お茶の基礎知識

この記事を書いた人

お茶にはさまざまな種類がありますが特に馴染みが深いのが「緑茶」です。ですが、普段耳にする「煎茶」と「緑茶」ってなにが違うの? と聞かれると、きちんと答えられない方も多いのではないでしょうか。そんな知っているようで実は知らないお茶の基礎知識を解説します。

「緑茶」とは? 烏龍茶、紅茶との違い

チャノキ(茶の木)からつくるお茶は大きく分けて「緑茶」「烏龍茶」「紅茶」の3つに分類されます。いずれも同じチャノキからできていますが、発酵の度合いによってさまざまな種類のお茶になります。摘んだ茶葉をそのままにしておくと、葉に含まれる酸化酵素の働きで発酵が進み茶色くなります。日本茶の大部分はまったく発酵(酸化)させない不発酵茶の緑茶。摘んですぐに加熱して発酵を止めるので、緑の色と香りを保持しています。烏龍茶などは少し発酵させてから加工する半発酵茶、紅茶は完全に発酵させてから加工する発酵茶です。

緑茶の加熱方法は2種類

緑茶の加熱方法は蒸すか釜で炒(い)るかの2つ。多くは蒸気で加熱して発酵を止める「蒸し製緑茶」で、茶葉の育て方や使用する葉の部分によって、「煎茶」「玉露」「茎茶(くきちゃ)」「番茶」などさまざまな種類に分けられます。酸化を防ぎ、青臭さを取るために、生葉を揉みながら乾燥させ、加圧しながら団子状にして、また揉みながら熱風で乾燥、葉を針状に整えます。さらに乾燥させてからかたちを整え、細かい茎を取り除きます。また、煎茶や番茶を焙じてつくられるのが「焙じ(ほうじ)茶」です。

一方、釜で炒って加熱し発酵を止める茶は「釜炒り製緑茶」。もともと中国から伝わった製造方法ですが、今では主に九州の一部でしか生産されていない珍しいお茶です。

日本においての緑茶のはじまりを簡単に

平安時代の初期、延暦24(805)年に最澄が中国から茶のタネを持ち帰ったのがはじまりといわれます。当時のお茶は、餅茶(ばんちゃ)、あるいは団茶といって茶葉を臼でつき固めた茶でした。平安時代後期になると抹茶を茶筅で泡立てて飲む習慣(点茶)が日本に伝わります。室町時代には寺社の門前や名所に「一服一銭」という茶屋が出現。多くの人が楽しむようになりました。江戸時代中期に茶葉を湯に入れて煎じる飲み方(煎茶)が広がって、煎茶道を楽しむ知識階級も生まれました。明治時代には急須が普及して、現在のような緑茶葉に湯を注ぐ飲み方が広まりました。

緑茶の歴史について詳しくはこちら▼
日本人に馴染み深い煎茶、その文化史を知る

「煎茶」とは?


煎茶とは、緑茶という大きなカテゴリーの中の1つ。日本茶生産量の約8割を占め、最も広く飲まれています。露天で日光をたっぷり浴びて育つ茶葉で、渋みのもとであるカテキン、苦みのもとであるカフェイン、旨み成分のテアニンなどのアミノ酸がほどよく調和し、みずみずしい味わいです。4〜5月に摘まれる一番茶が最上。上質の茶葉は細くて撚(よ)りが強く、ツヤのある深い緑色で、渋みと旨みのバランスがよいのが特徴。清々しい香りも身上です。

また、通常より蒸し時間を長くして渋みを抑え、煎出しやすい「深蒸し煎茶」は、普通蒸しの煎茶と区別されます。

普通蒸し煎茶


「煎茶」と書かれていたら、この普通蒸し煎茶のことを指します。蒸し時間が20秒から30秒。茶葉は何度も揉んでまっすぐに仕上げられるため、針のように細く、深みのある緑色をしています。淹れ方でずいぶん色も変わりますが、黄色がかったきれいな緑色になるよう淹れるのが理想。香りは爽やかで、渋みの中に甘みがあります。全国の生産地でつくられています。

深蒸し煎茶


1960年代に静岡県で生まれた深蒸し煎茶。普通蒸し煎茶と同じつくり方ですが、蒸し時間が2〜3倍長く、40〜90秒かけて蒸します。そのため茶葉がもろくなり、葉は細かく、粉も混ざっています。葉は黄色っぽく、水色は濃い緑色に。日本人の食生活が変わり、油分の多い食品が増えていますが、その嗜好に合った、しっかりした味の茶です。主に関東地方で好まれ、関西地方では扱わない店も多いです。

知ると楽しい! 茶葉の種類

最も一般的な煎茶を紹介しましたが、ほかにも極上品の玉露、人気の高い茎茶など種類はさまざま。それぞれどんな特徴があるのかみてみましょう。

凝縮された旨みが魅力の最高級品「玉露」


収穫前の約20日間覆いをかけ日光を遮る「覆い下栽培」により煎茶にはない濃厚な旨みをもつ「玉露」。テアニンなどのアミノ酸量を維持し、カテキンへの変化を抑制しています。渋みや苦みと違い、旨み成分は低温でより感じられるので、ぬるめの湯でじっくりいれ、とろりとしたコクのある甘みを楽しめます。手摘みされる一葉一葉に旨みを包むように撚られ、茶葉は深く濃い緑色です。覆い香と呼ばれる独特の香りも魅力となっています。

独特のさわやかな香りが人気「茎茶」


「茎茶」は文字どおり、煎茶などの茎の部分を集めたもの。煎茶や玉露のような主役ではないものの、「木茎臭(もっけいしゅう)」と表現される独特のさわやかな香りとさっぱりした味わいが好まれます。玉露や上質な煎茶から採られたものは特に「雁ヶ音(かりがね)」と呼ばれ、旨みとさっぱりとした切れ味のよさを併せもちます。さわやかな香りと重層する味わいが魅力のお茶です。

中国から伝わった今では珍しい「釜炒り茶」


茶葉を蒸すのではなく、鉄製の釜で炒るので「釜炒り茶」。ぐり茶とも呼ばれています。緑茶の「炒り」を釜で行うのは、中国から伝わった方法で、九州の佐賀、熊本、宮崎でつくらており、緑茶に占める割合は5%ほど。よく知られるのは佐賀の嬉野(うれしの)茶で、傾斜した大きな釜で炒りを行います。香ばしく、さっぱりとした味が特徴で、茶葉は緩やかなカーブのあるかたち。

煎茶のさわやかさと玉露の旨みをあわせもつ「かぶせ茶」


摘み取りの1〜2週間前に覆いをして育てた新芽を摘み、煎茶と同様の工程でつくられる「かぶせ茶」。茶樹に、寒冷紗(かんれいしゃ)を直接かぶせて、日光を遮ります。玉露と同様、茶葉の中にうまみ成分であるテアニンを増やすのが目的の栽培方法で、元は生産段階での呼び名だったそう。玉露や上級煎茶に配合するお茶として使われるほか、現在は単独のお茶としても出回っています。甘みのある味が特徴。

茶師の手わざでつくられる究極の「手揉み茶」


蒸した葉の揉捻(じゅうねん)を、機械ではなく手で行い、下揉み、中上げ、仕上げ揉みをしてできる「手揉み茶」。明治時代には手揉み茶しかなく、揉み方の流派がいくつも生まれました。茶葉の損なわれる部分が少なく、1枚の葉のままなので、細く針のように伸びたかたちに。生産量が少なく、なかなか目にすることのない「幻の茶」で価格も10g¥1,000くらいからとたいへん高価。

最後に…お茶の主要産地は?

日本にはお茶の産地がたくさんあります。最大の産地は静岡県。香り高い川根茶、牧の原茶、本山茶が有名です。生産量2位は鹿児島県で知覧(ちらん)茶をはじめ、品種が豊富。続く3位は三重県で伊勢茶が知られています。玉露は歴史ある京都府の宇治、静岡県の岡部、福岡県の八女(やめ)が三大産地。八女は深蒸し煎茶の生産も盛んです。好みに合わせてとりどりに楽しんでください。

ー『和樂』2008年4月号・2013年6月号を再編集ー
一部解説/大山拓朗さん(しもきた茶苑大山)
茶葉の個性を見極め、ブレンドすることでさらによさを引き出すのが茶師。大山さんは日本に9名しかいない茶師十段のひとり。同じく茶師十段である兄の泰成(やすなり)さんと、東京・下北沢で茶舗を営むほか、茶の魅力を伝えるためのイベントも積極的に行う。