『食の力』と題し、沖縄のいま訪れるべき場所をご紹介します。
「美榮」の琉球料理
県内でいちばん上等な沖縄料理を食べるならここ。温かいもてなしもよい。
「琉球文化が生んだ美しいものが見たい、食べたい」。そんな願いを叶えてくれるのが、この店です。風格ある館に一歩入れば、まるで工芸館のよう。
店名は開業時の場・美栄橋町に由来。
のれんは芭蕉布(冬は藍染の絣)、古い按瓶や琉球張子など部屋を飾る調度品や琉球漆器のうつわ、壺屋焼の酒器など、すべてにセンスがよく、長く丁寧に使われてきたことがわかります。創業は1958年。館も内装も創業者・古波蔵登美の趣味によるもの。登美の兄はエッセイストの古波蔵保好。沖縄の食文化を洒脱に綴り、人気を得ました。
代々受け継がれる伝統の料理法
「美榮」の料理は、琉球王朝の宮廷料理が基本です。現在、登美の料理を継ぐのは登美の義理のめいにあたる古波蔵徳子さん。
写真左/木造2階建て、数寄屋風のつくり。写真中央/「沖縄料理は気長でないと勤まらない」と調理場に立つ古波蔵徳子さん。写真右/地豆豆腐。
沖縄古来の料理は手をかけた時間をいただくもの、とはいいますが、この店では豚のだしは5種類を使い分けるとか。丹精した料理と静謐な空間が見事に調和しています。
[らふてえ]三枚肉をゆでこぼし、醬油、泡盛、砂糖で2日がかりで煮上げる。脂身が唇に吸い付くほどトロリと仕上がり、格別の味わい。それでいて脂っこくないのも、この店の品のよさ。添えられたゴーヤにも手の細かさが見える
美榮(みえ)
住所/那覇市久茂地1-8-8 地図
営業時間/18時~22時
定休日/日曜休、不定休あり
要予約
料理は9品・7,000円、11品・9,000円、13品・12,000円(以上税込)。らふてえ、地豆豆腐は各コースに入る。
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撮影/石井宏明 取材・文/藤田優
構成/木村優、小竹智子、久保志帆子