全行程1,400㎞、四国の88ヶ所の寺院を巡る巡礼の旅が「四国遍路巡礼」です。
古来より四国は国の中心から遠く離れた島国で、様々な修行の場とされていました。
ところでなぜ「88ヶ所」なのか、ご存知ですか?それは、人間には88の煩悩があり、同じく88ヶ所の霊場を巡ることにより、煩悩が消え、願いが叶うと考えられていたからなのです。
四国遍路巡礼の始まりは?
讃岐(香川県)で生まれた弘法大師(空海)も四国で修業を重ねました。四国では“お大師さん”と呼ばれ親しまれており、42歳の時に人々の災難を除くために開いた霊場が四国霊場です。後に高弟が遍歴したのが四国遍路巡礼の始まりと伝えられています。
四国で88ヶ所の霊場を巡る旅のスタート
四国巡礼は阿波(徳島県)で脚を固め、土佐(高知県)で心落ち着け、伊予(愛媛)で信に入って、讃岐(香川)で諸願成就すると言われています。88ヶ所目である香川県の「大窪寺」で結願した後は、高野山奥の院に参拝し大願成就となります。
現在では高速道路も整備され、多くの人が自家用車やバス、タクシーなどで四国をぐるりと巡礼しています。歩いて巡る「歩き遍路」が通る遍路道の環境も昔に比べると整っています。一方、弘法大師が通ったとされる旧遍路道には険しい道のりも多く、中でも山岳寺院へ向かう道は、遍路をころげ落とす、という意味で「遍路転がし」と呼ばれ、15ヶ所存在しています。また札所が集中して比較的巡りやすい地域もあれば、徳島県の第23番札所「薬王寺」と室戸岬にある24番札所「最御崎寺」のように、約77㎞も離れている場合もあり、歩き遍路では3日がかりの長丁場となる厳しい道のりも存在します。
88ヶ所の霊場全てを巡ると「結願」と言われ、最後に高野山奥の院に参拝してお礼参りをします。88番霊場の「大窪寺」では長い遍路旅を思い出し涙する人も少なくありません。また霊場の中には88ヶ所霊場の砂が並ぶ「お砂踏み場」と呼ばれる場所を設けている霊場もあり、88ヶ所を巡れない人もお参りできるようになっています。
遍路巡礼の方法と日数の目安は?
・歩き遍路(40~50日)※体力や気象条件などによって変動あり
・車(9~10日)
・専用タクシー(8~9日)
・巡拝バス(12~13日)などがあります。
※バスでの巡拝は1人からでも参加でき、旅行会社ごとに様々なプランがあります。
「順打ち」「逆打ち」「区切り打ち」
お遍路で札所をお参りすることを「打つ」といい、1番札所の霊山寺から88番札所の大窪寺までを順番に回ることを「順打ち」といいます。反対に88番から回ることを「逆打ち」といいます。順打ちに比べ歩きにくいと言われている逆打ちは厳しい道のりであることから、3倍のご利益があるとも言われています。巡礼は1年で88ヶ所全てを巡らなければいけないという決まりはありません。数年かかって結願する人も決して珍しくなく、自分のペースで巡拝すれば良いとされています。少しずつ区切って巡拝する「区切り打ち」、1県ずつの「一国打ち」などさまざまな方法があります。
2020年は「逆打ちイヤー」???
天長年間、伊予の国(愛媛県)の長者であった河野衛門三郎が自分の悪行の許しを請うため、弘法大師の後を追ってお遍路を始めました。しかし、20回巡っても大師に会うことができず、叶いませんでした。しかし21回目にして「逆打ち」を思いつき、12番札所の焼山寺で薄れゆく意識の中に弘法大師が現れ、悪行全てを許されたそうです。三郎が「逆打ち」を始めたのがうるう年といわれており、うるう年に「逆打ち」をすると88ヶ所を巡る旅の道中のどこかで弘法大師に会えると信じられ、「逆打ち」は4年に一度とされているのです。
そうです。うるう年。2020年はまさに88番霊場「大窪寺」からスタートする「逆打ち」イヤーなのです。ただし、これは正式に決まっているわけではありません。「順打ち」「区切り打ち」でもご自身の好きな巡り方でOKです。
「そうび」を整えていざ出発
白衣(はくい・はくえ)
昔は険しい遍路道の道中でいつ亡くなってもいいようにという「死装束」の意味も。本格的な装束は白衣の中も含めて白装束を着ますが、現在は洋服の上から白衣を着る人が多くみられます。
遍路の際に着用する道中着としての白衣の他に、御朱印をいただき、亡くなった際に棺桶に入れてもらうための白衣「判衣」が必要な場合は別途用意します。
お袈裟(輪袈裟)
参拝の作法として身につける、袈裟を簡略化したもの。お参りの道中での食事やトイレの時には外します。
金剛杖
お遍路において金剛杖は「お大師様の化身」と言われており、杖を持ってお遍路をすることは弘法大師と共にお遍路をする、「同行二人」(どうぎょうににん)という意味合いがあります。また金剛杖のカバーを外すと卒塔婆(そとば:墓石の後ろ側に立てる1~2mほどの細長い木)の板のような形をしており、これはその昔、厳しい遍路の道中で亡くなった時のために金剛杖をお墓として持ち歩いてるという意味があります。弘法大師の化身ですから、宿では床の間など上座に置きます。
納経帳
B5サイズのものが一般的。「奉納」の文字に加えて、御本尊を表す梵字や御本尊の名前、あるいは寺院の名前を墨書してくれます。加えて札所の番号などの朱印を押してくれます。 何周か巡る場合は同じページに朱印(宝印)のみ頂くので、何度もめぐっているお遍路さんはページが真っ赤になっています。
納札
各霊場の本堂、大師堂に納め、参拝の報告をします。束になっているのであらかじめ住所、氏名を記入しておきます。道中でお茶やお菓子などの「お接待」を受けた時には納札を渡すのが習慣です。1~4周は白、5~6は緑、7~24周は赤など巡拝の回数によって色分けされています。
その他
・念珠
・経本
・お線香
・ローソク
・ライター(マッチ)
その他にもすげ笠や、ずた袋など、グッズは多数ありますが、必要に応じて道中で買い足していくのがおすすめです。霊場内や寺院の近隣にある専門店ではサイズや色柄など種類も豊富で、アドバイスを受けながら好みの色や形などを吟味して購入することができます。出発前に揃えたい場合にはネット通販などを利用すると便利です。
お参りの作法と順番をチェック
1) 山門(仁王門)前で合掌、一礼。
2) 手洗い所にて手を洗い、口をすすぐ。
3) 本堂に献灯、献香し、納札を納め拝礼し、お経を奉納。
4) 大師堂にて本堂と同じ手順でお参り。
5) 納経所で納経を頂く。判衣、納経軸がある場合は一緒に頂く。
これだけは気を付けたいNG集
その1 境内は左側通行:
山門をくぐる時から基本的には左側通行でお参りします。道が狭い場合は譲り合いの気持ちを持って。
その2 読経は端で:
時間がかかる読経。混雑している場合は正面ではなく端によるなど心配りをしましょう。また新型コロナウイルス感染防止のため、読経は心の中、又は小さな声で唱えるようにしましょう。
その3 ローソク・お線香は奥から:
ローソクは奥から、お線香は中心から外側にお供えする配慮を。たくさんの方が利用しやすく、やけどなど避ける思いやりです。
その4 トイレにグッズの持ち込みNG:
トイレなど不浄な場所に金剛杖、わ袈裟、菅笠、数珠など神聖なものを持ち込まないのがマナーです。金剛杖は弘法大師様の化身でもあるので、宿に着いたらまず金剛杖の先を洗い清めましょう。
その5 納経はお参りの後:
巡礼はスタンプラリーではありません。納経をいただくのはお参りの後で。お寺によって納経を受けられる時間が決まっているので、必ず事前に確認しましょう。また混雑している場合には、ソーシャルディスタンスを保ち、静かに並びましょう。
“呼ばれた人”だけが出かけられる「同行二人」の旅
お遍路の旅はお大師さんと共に「同行二人」の祈りの旅と言われています。四国遍路は他の巡礼に比べ「行」を積む意味合いが深いとされています。弘法大師に帰依し、ゆかりの地を巡る進行と修行の旅路の行くお遍路さんの姿に地元の人たちはお大師様の姿を重ね「お接待」の心でもてなします。昔から四国遍路ができるのは“呼ばれた人”とも言われています。金銭的、時間、環境など様々な事が揃ってはじめて叶う旅だからなのかも知れません。四国ならではの宗教文化に触れる巡礼の旅に“呼ばれて”みませんか。
総本山善通寺五岳
香川県善通寺市善通寺町3丁目3番1号
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