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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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Travel
2017.06.29

毎日美しいものが生まれている街「京都 西陣」で、より道の旅しませんか?

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古くからの織物の町で見つける、普段着の京都

かつては機を織る音がそこここに聞こえた西陣。今は、歴史のある和菓子屋さんやレトロな喫茶店、新しい感覚のお店が点在する静かな町並みが続きます。ここは普段の京都が感じられて、より道をしながらの散歩にはぴったりの町です。dma-WR-001

手技を守る人が集まる町。毎日、美しいものが生まれている

それにしても、「西の陣」とはすごい地名。その由来は室町時代にさかのぼります。

足利将軍家の家督争いから始まった応仁の乱。戦国大名・山名宗全が陣地を構えたところは西陣と呼ばれました。陣地は、宗全邸があった堀川通の西、喜多川通の南です。対する東陣・細川勝元は公方(足利将軍)の花の御所、現在の同志社大学新町キャンパスの東に陣を張り、堀川を挟んで向かい合いました。戦いは10年以上も続き、京都は焼け野原になりました。

平安時代には内裏(天皇の私的区域、御所)、大内裏(宮城)があり、そこで使われる織物が織られていました。室町時代からは和菓子の職人が、江戸時代になると茶道関係の職人が多く住みました。明治時代には日本で最初の映画都市となり、かつては約20軒の映画館、劇場があったとか。現在も工芸、アートに関わる若い人が住み、ものづくりの文化が受け継がれています。

織物は、西陣の代名詞になった産業です。江戸時代、大宮通沿いには糸屋が集まり、中立売通、下立売通沿いには大名の衣服をつくる呉服所が軒を連ねました。将軍家の呉服所も西陣にありました。贅沢な織物が行き交う、おしゃれな町だったと思うと、織物に関係する店の前でふと足が止まります。

西陣では辻子(図子)と呼ばれる小さな路地を見かけます。小さな道には小さなお店があり、散歩の句読点になってくれます。
スクリーンショット 2017-06-27 17.31.05三上家辻子は紋屋辻子から入る袋小路。石畳の中ほどに蜂蜜屋さんがある

小さな路地、小さな辻子に新しいお店。西陣には発見がいっぱい

西陣を歩くには、「北野天満宮」から。学問の神様・菅原道真を祀る全国の天満宮の総本社です。本殿は豊臣秀頼が寄進したもので、国宝に指定されています。近くには京都最古の花街である上七軒があります。今出川通を東に向かうと、レトロな外観の喫茶店「静香」が。ホットケーキが人気です。
スクリーンショット 2017-06-27 17.33.38左/「北野天満宮」には天神様の使いの牛の像が。右/懐かしいスタイルのホットケーキは「静香」

ここからはタクシーで船岡山の麓まで。建勲神社がある、小高い丘です。船岡山下を東西に通るのが鞍馬口通。「かみ添」は古い床屋さんを改装した紙製品の店で、雲母引きなど京唐紙の手法を使ったレターセットがモダンです。近くにはお風呂屋さんを改装したカフェやおそば屋さん、キッチュな内装が外国人に大受けの船岡温泉も。
スクリーンショット 2017-06-27 17.36.38ペーパーウエアの店「かみ添」。古民家を改造したシンプル・シックな店内に、美しいレターセットやカードが並ぶ。

昔は川だった堀川通を渡って小川通へ入ると、茶道の表千家、裏千家が並んでいます。堀川通には裏千家の「茶道資料館」があり、立礼(椅子に腰掛けてする点前)で抹茶がいただけます。近くには茶道に関係する店が多いのですが、布好きなら訪ねたいのが「北村德齋帛紗店」です。色とりどりの織物に時間が経つのを忘れます。
スクリーンショット 2017-06-27 17.51.15帛紗を一枚ずつ手にとって見られる「北村德齋帛紗店」。日本で唯一の茶道帛紗専門店だ。

堀川通を南に下がると小さな路地に「UCHU wagashi」が。かわいいデザインの干菓子の、意外な味にびっくり。京都の新しい店には主張があります。
スクリーンショット 2017-06-27 17.38.04箱も目を惹く「UCHU wagashi」のチャイ味和三盆(秋冬限定)。オーナーはデザイナー。

歴史と現在と。西陣では、重なり合う時間を旅する気分に

堀川通と今出川通の交差点の北西角にあり、西陣の目印になっているのが「鶴屋吉信」本店。坪庭のある2階では、季節の生菓子をつくるところが間近に見られます。

さらに南にある「晴明神社」は、平安時代の天文陰陽博士・安倍晴明の邸宅跡に建つ神社。小説や漫画の主人公になり、神社も人気に。焼物好きなら樂焼窯元の隣にある「樂美術館」へ。歴代の作品が一堂に揃う、静かで貴重な空間です。「たんきり飴本舗」や「三上家辻子」に寄り、お昼は智恵光院通の「蕎麦屋 にこら」へ。おそばだけでなく、ほかの料理も美味なお店です。
スクリーンショット 2017-06-27 17.45.48五芒星が「晴明神社」の社紋。近くには式神を隠したという一条戻橋がある。

西陣の織物の仕事も知りたくなります。それをかいま見ることができる「織成舘」は、帯製造業の「渡文」渡邉家の住まいを使っていて、2階の工場見学ができます。
スクリーンショット 2017-06-27 17.46.23日本の色を染め上げた、帯の織り糸。色の調和が美しい。「織成舘」で。

より道の最後は西陣の南端・下立売通の「山中油店」でお土産を買って。西陣の通りを歩きながら、ふと織物の縦横の糸を思いました。小さなより道が記憶を織って、少しずつ自分なりの京都の姿ができてくる——より道は、大切な時間でした。
スクリーンショット 2017-06-27 17.47.17「山中油店」経営の「綾綺殿」は、お米屋さんを改装したカフェ。庭の緑にほっとする。