夏という季節に大人も子供も心が浮き立つのは、全世界共通。澄んだ海、乾いた風がひときわ心地よく感じるころ、時間に余裕があるのなら、本島のその先にある離島を目ざしてみませんか?『佐渡』『対馬』『大三島』を3週にわたってご紹介します。
配流の貴族がもたらした文化遺産を巡って
佐渡には、京都や奈良にある有名寺院と同じ表記のお寺があります。けれど読み方が違う?!このようなお寺がつくられたのは、佐渡に流された多くの貴族や知識人たちが深く関係しているからでしょう。特殊な歴史に彩られた文化遺産をたどれば、都であった京や奈良との古くからのかかわりが体感できます。その遥かなる足跡をたどってみましょう。
文政8(1825)年に完成した『妙宣寺』の五重塔は、各層ともに勾欄(欄干)がないため、未完の作と評価されるが、それがかえって野趣をもたらし、ひとつの魅力になっている。
妙宣寺は両津港から車で約30分のところにあり、日蓮聖人の直弟子である阿佛房日得(あぶつぼうにっとく)が住んだ阿佛寺が前身といわれています。木造の五重塔は、江戸時代後期に地元の宮大工が建立し、国の重要文化財に指定されているもの。お寺の周りの田園風景と、厳かにたたずむ五重塔とのコントラストが、えもいわれぬほど鮮やかで、時間を忘れてしまいそうです。ここではぜひ、由緒ある『阿佛房』の御朱印を頂戴して、旅の記念に。
『大膳神社』は、正中の変(1324年)に倒れた日野資朝と、その子・阿新丸の仇討を助けた山伏の大膳坊を合祀する古い神社。
その妙宣寺から徒歩5分のところにあるのが、大膳神社の能舞台です。真っ先に目に入るのは特徴的な茅葺き屋根ですが、注目すべきは鏡板。普通、能舞台の鏡板は老松だけ描かれることが多いのに、大膳神社は松と日輪が一緒に描かれた珍しいものなのです。妙宣寺の五重塔と大膳神社の能舞台、どちらもこの地の文化水準の高さをひしひしと感じさせる文化遺産です。さらにおすすめを挙げるなら、大膳神社と同じ茅葺き屋根をもつ草刈神社の能舞台、鎮守の森の雰囲気が随一の羽黒神社能舞台、また古格を感じる牛尾神社能舞台、春日神社能舞台もそれぞれに味わいがあります。ぜひ見くらべてみて!
左/『清水寺』 右/『長谷寺』の金剛力士像
さて、『清水寺(せいすいじ)』と『長谷寺(ちょうこくじ)』は、都のお寺と同じ漢字に強い憧れがストレートに感じられるお寺。清水寺は、大同3(808)年に京都の清水寺を模して建立したと伝えられています。凄まじい迫力の救世殿(ぐぜでん)は、まさに清水の舞台と同じで、仁王門からそこに行き着くまでの石段の道と、天高くそびえる大木の杉並木が、古寺の美しさをたたえています。
そして奈良大和の長谷寺を模したといわれている長谷寺。佐渡の多田というところに着いた世阿弥は、長谷寺を経由して万福寺に、その後正法寺に移されました。世阿弥は小謡集『金島書』にそのときの様子を書き残しています。長谷寺には4体の木造十一面観音立像があり、重要文化財の本尊を含む3体は、33年に一度だけ御開帳が行われるのです。
佐渡をもっと楽しむ旅案内!
【食べる】
『茂左衛門』のそばセット
築60年の古民家でいただく滋味深い手打ちそば。つゆは、アゴ出汁とカツオ出汁からチョイスできるのがうれしい。ランチは、小鉢とデザート付きのそばセットがお得。山海の地元食材にこだわったそば懐石には、吟味された季節の天ぷらが必ず付いてくる。
webサイト:茂左衛門(もぜむ)
『長三郎』のブリカツ丼とちらし寿司
新ご当地グルメ・天然ブリカツ丼は、地場産米粉を使い、特製アゴ出汁しょうゆだれにくぐらせた逸品。ジュワッと染み出るブリの旨みに舌鼓。また帰路のおともに、ちらし寿司のテイクアウトも。新鮮な魚介類がすごいボリュームでお値打ち。