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2019.12.23

福袋とは何か?いつから始まった?図書館にも福袋があるって本当?解説!

この記事を書いた人

新年の風物詩のひとつ「福袋(ふくぶくろ)」。毎年楽しみにしている人が多いと思います。
福袋の中には、お値段以上のものが入っている場合が多いので、商品を通常よりもお得に購入できるチャンスでもあるのですが、袋の中がわからないので、開けるまでドキドキ……。
欲しかった物がお得に手に入ることもあれば、期待はずれでがっかり、ということも。もしかしたら、新年の運だめしとして福袋を購入する、という人もいるのでは?

ところで、図書館にも福袋があるって、ご存知ですか?
それは、「本の福袋」。ここ数年、年末年始に中身の分からない本が複数入った「本の福袋」を貸出す図書館が増えています。すべての図書館が行っているわけではないのですが、「本の福袋」は人気で、あっという間になくなってしまうことが多いとか。

この記事では、図書館の年末年始のイベントの一つとなった「本の福袋」をご紹介します。(この記事の「図書館」は、原則として「公共図書館」としています。)

そもそも、「福袋」とは?

「福袋」とは、前もってその中に種々なものを入れて口を閉じ、中身がわからないようにして各人に選び取らせる袋で、百貨店の正月の初売りなどで売り出されます。

福袋が誕生した歴史については、諸説あります。有力とされているのが、江戸時代に誕生したとする説と、明治時代に誕生したとする説の二つ。
他にも、仙台では江戸時代から初売りで福袋が売られていたという説や、大正8(1919)年に永楽園という御茶屋が始めたという説もあります。

江戸時代に誕生したとする説

誕生説の一つは、福袋の原型を「恵比寿袋(えびすぶくろ)」とし、これを始まりとするものです。
「恵比寿袋」を販売していたとされるのは、三越百貨店の前身である江戸・日本橋の呉服店・越後屋です。冬物の売り出し時期にあわせて、1年の持ち余りの生地を袋に入れて販売したところ、江戸で評判になったと言われています。

歌川広重(初代)画 「東都大伝馬街繁栄之図(とうとおおてんまがいはんえいのず)」  国立国会図書館デジタルコレクション
大伝馬町には「大伝馬町木綿問屋仲間」と呼ばれる、木綿販売の独占権を持った組合があり、越後屋、白木屋、松坂屋といった有名呉服店のほとんどがこの周辺に店を構えていました。

また、大丸百貨店の前身となる大丸屋でも、10月に行われる「えびす講(恵比寿講)」と正月の初売りに大売り出しを行い、越後屋と同じように、端切れなどを入れた福袋を販売したという記録が残っています。

なお、「えびす講」は恵比寿様(えびすさま)を祀って商売繁盛を願う行事です。
七福神の一人でもある恵比寿様は商売の神様とされ、また、農村では豊穣の神様、漁村では豊漁の神様として信仰されてきました。
旧暦の10月は、全国の神様が出雲大社(島根県出雲市)へ集まるため、「神無月(かんなづき)」と呼ばれていますが、神無月に「留守神」として留守番を務めていたのが恵比寿様でした。そんな恵比寿様に感謝をしつつ、商売繁盛、五穀豊穣を祈ったのが「えびす講」なのです。

明治時代に誕生したとする説

江戸時代に福袋があったと確認される前は、明治40(1907)年に、百貨店 松屋の前身となる「鶴屋呉服店」が福袋の販売を始めたとされていました。

また、明治44(1919)年に、百貨店 松坂屋の前身である「いとう呉服店」が「多可良箱(たからばこ)」と名付けられた福袋の販売を始め、大変な人気だったとも伝えられています。

昭和から現代までの福袋のトレンドの歴史

福袋は、江戸時代から明治時代の、一部の呉服屋から始まりました。
昭和以降になると、全国の百貨店で福袋が販売されるようになりました。そして、福袋の中身は時代とともに変わっていきました。

最近では、洋服の福袋以外に、食品の福袋、家電の福袋、寝具の福袋など様々な福袋が用意されています。百貨店によっては、高級福袋や体験型の福袋を販売するというところもあり、話題になっています。また、中身が見える透明な袋に入れていたり、インターネット上で福袋の中身の詳細を載せていたりと、ある程度中身を選べる福袋も販売されています。

「本の福袋」って、どんなもの?

それでは、図書館の「本の福袋」はどういったものなのでしょうか?

「本の福袋」は、図書館の本をテーマ別に数冊選び、中身が見えないよう袋などに入れたものを貸出しするというもの。お店で売られる福袋のように、何が入っているかは開けてのお楽しみ。
普段は読まないジャンルの本にも親しんでもらおうという目的で始まった「本の福袋」。最初は子ども向けの企画として始まりましたが、好評だったことから、大人向けの企画も行われるようになりました。現在は、図書館の年末年始の人気イベントとなっています。

本物の福袋のような袋に本を入れたり、コストを抑えるために、保存年限の過ぎた英字新聞で包んだりと、それぞれの図書館が工夫をしています。

また、選ぶ際のヒントとなるよう、パッケージに「The 昭和」「犬好きにおすすめ」「そこにある不思議」「黒猫のお話」「ドキドキハラハラ」「うれしいお便り」など、紹介カードをつけたり、中身のテーマや引用文をつけたり。福袋の中に「おみくじ」や読書通帳、手作りの特製しおりのおまけが入っていたりすることも。

夏休みに「読書感想文おたすけ福袋」を配布した図書館もありました。中身は、「図書館員のおすすめの1冊」「読書感想文の書き方のヒント」「おたすけプリント」の3点セット。福袋には、選ぶ時のヒントとして、中身についての一言と引用文が書かれていたとか。

福袋の本は、どうやって選ぶの?

福袋の本の中身は、図書館で行っています。
福袋の本は関心を持ってもらうテーマを見つけたり、意外な本を組合せたりするのは結構大変……。どういうテーマを設定し、どんな本を選ぶかは、図書館司書の腕の見せどころでもあるのです! お正月ということで、干支をもじったテーマで本を選ぶ図書館も。

また、図書館の利用者から「本の福袋」のテーマと中に入れる本のアイデアを募集するという、「本の福袋」作りを利用者参加型イベントにした図書館もあります。

「本の福袋」を作成する図書館も「借りてもらえるだろうか」でドキドキ。図書館の利用者も「どんな本が入っているんだろう? 」と選ぶのにドキドキの「本の福袋」。
「本の福袋」は個数限定。予約は受け付けておらず、先着順で、なくなり次第終了になります。気になった方は、お早めに。

こんな「本の福袋」がありました

人気の「本の福袋」。福袋は、原則、一人1点限り。
利用者からは、
「借りに行ったらもう終了していた! 」
「他の福袋には、どんな本が入っていたんだろう? 」
といった声も図書館に寄せられているとか。
選ぶ時に迷いに迷ったのだけれど、選ばなかった福袋にはどんな本が入っていたのか知りたい、できればそれも読みたい、というもの。確かに、福袋の中身、気になりますよね。

そこで、図書館では、「本の福袋」の中身を紹介するリストを作成して配布したり、ホームページに掲載したりするほか、「本の福袋の中身、大公開! 」といった展示を行っている図書館もあります。
「本の福袋」にどんな本が選ばれていたのか、ぜひチェックしてみてください。読んでみたい本があれば、図書館で借りることもできますよ。

本を読んで、福を呼び込もう!

お正月らしいテーマと言えば、「招福」「福を呼び込もう」というもの。
例えば、こんな本が選ばれていました。気になる本は、ありますか?

  • 『縁起物 福を招くかたち』 「現代用語の基礎知識」編集部編 自由国民社 2016年3月
  • 『幸せが舞いこむ御朱印ハンドブック』 八木透監修 辰巳出版 2012年6月
  • 『聖樹巡礼 幸せを呼びこむスピリチュアル・ツリーに出会う』 杉原梨江子著 PHP研究所  2011年9月
  • 『達人たちの夢の叶えかた 神木隆之介のMaster’s Café』 神木隆之介著 マガジンハウス 2015年9月
  • 『ディズニー夢をかなえる神様が教えてくれたこと』 鎌田洋著 SBクリエイティブ 2018年9月
  • 『日本のお守り 神さまとご利益がわかる』 畑野栄三監修 池田書店  2011年5月
  • 『ニッポンのおみくじ 日本全国232種のおみくじを引く』  鏑木麻矢著 グラフィック社 2017年10年
  • 『日本の聖地ベスト100』 植島啓司著 集英社 2012年4月
  • 『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』 山中伸弥著 文藝春秋 2017年2月
  • 『間違ってカレーが来ても喜べる人は必ず幸せになる』 高津理絵著 マキノ出版 2010年6月

結論。本の福袋はお得です!

図書館の「本の福袋」は無料です。これって、お得ですよね?

洋服の福袋だと、サイズが微妙に合わないとか、思っていたもの違っていたとしても、基本的に福袋の中身は返品できませんが、図書館の「本の福袋」は、原則、要返品。
福袋の中の本が、思ったものと違っていても、読んでいなくても、あるいは、読んだら意外とおもしろかったとしても、忘れずに返却をお願いします。思いがけない素敵な本と出会ってしまい、どうしても手元に置いておきたい場合は、購入していただきますようお願いします。

なお、本の福袋の開催時期は、年末だったり、年明けであったり、図書館によっても異なります。実施の有無等、詳しくはお近くの図書館にお問合せください。

年末年始の休みに読む本をお探しの人、新年「初読み」の本をお探しの人は、図書館の「本の福袋」を利用してみるのはいかがでしょうか? もしかしたら、「えっ、こんな本が図書館にあったの? 」と思うような本が入っているかもしれません。
「本の福袋」で、思いがけない本や新しい本と出会えるかもしれませんよ。

書いた人

秋田県大仙市出身。大学の実習をきっかけに、公共図書館に興味を持ち、図書館司書になる。元号が変わるのを機に、30年勤めた図書館を退職してフリーに。「日本のことを聞かれたら、『ニッポニカ』(=小学館の百科事典『日本大百科全書』)を調べるように。」という先輩職員の教えは、退職後も励行中。