何度か京都を訪れていると、この街に息づく「茶の湯」の存在にハッと気づかされます。なぜならここは、わび茶を大成させた千利休のゆかりの地。三千家をはじめとして、茶家に関するお店が、今も利休の墓所がある大徳寺の周りに集まっています。
そんな京ならではの茶の湯の旅に出かけてみませんか?堀川通から茶どころ宇治、そして寺町通など、ビギナーからベテランまでが心ゆくまで満足できる、2泊3日の茶の湯旅をご提案します。
初日は茶の本場、堀川通界隈へ
市内を南北に走る堀川通界隈は、お茶の総本山の大徳寺や三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)があり、ともに歩んできたお茶に関わるお店が集中しています。まずは中立売界隈から北へと向かいましょう。明治15(1882)年創業の老舗「塩芳軒」は茶人御用達のお店。味のある長暖簾を払ってお店に入る瞬間もたまりませんが、干菓子や主菓子のすべてが優美です。「樂美術館」は、塩芳軒から歩いて5分ほどの場所にある静かな私立美術館。樂焼の名品を鑑賞するには、絶対に外せないスポットといえるでしょう。樂美術館作成の「お散歩マップ」をもらって「武者小路千家官休庵」を見学しつつ、さらに小川通を北上します。
塩芳軒
塩芳軒のご主人
樂美術館
左/樂美術館のお茶室 右/当代樂吉左衞門作
武者小路千家官休庵
武者小路千家官休庵の外観
茶道具を揃えるならここ!
やはり京都に来たら、買える茶道具をいろいろ拝見したいもの。「表千家不審菴」「裏千家今日庵」の前に位置する「清昌堂やました」は、高価な書付物をはじめ、手ごろな値段の茶道具など、品揃えの豊かなお店。気の利いたオリジナル数寄屋袋や和装バッグも定番の人気です。寺之内通と大宮通の角にある「日の出や」は、お茶の専門職の方が多く通う呉服店。きものに厳しい専門家のアドバイスが何かと役立つでしょう。
清昌堂やました
清昌堂やましたには香合などがズラリ
日の出や
日の出やのウインドー
大宮通りを歩いてお蕎麦と主菓子を
そのまま北に大宮通を数分。京の甘いもの好きから支持される「聚洸」は、オーダーの主菓子を扱う菓子舗。ご主人はあの塩芳軒の次男で、名古屋の名店、芳光での修業の経歴をおもちです。ぜひ一度注文してみてください。
遅くなりましたが、ようやくランチの時間がやってきました。それならここしかありません。「紫野和久傳 大徳寺店 五」の蕎麦で決まりです!
聚洸
聚洸で主菓子をいただく
紫野和久傳 大徳寺店 五
紫野和久傳 大徳寺店 五のお蕎麦
茶の湯と縁が深い寺、大徳寺近辺を散策
午後は大徳寺近辺をお散歩して、また寺之内界隈まで戻ってきましょう。大徳寺は茶の湯と縁が深い寺。利休の師である武野紹鷗や、利休後に新時代を開いた小堀遠州など歴史に名を残す茶人たちは、大徳寺の名僧を慕い、茶室を寄進したりして深い関係を築いてきました。20を超える塔頭の中で、大仙院や高桐院などは常時公開しています。
参拝の後は、あぶり餅で厄除け
さて大徳寺の北隣にある「今宮神社」は、正暦5(994)年、都の悪疫退散を祈って営まれた紫野御霊会を起源とする神社。徳川五代将軍綱吉の生母、桂昌院に由来する玉の輿お守が人気とか。今宮神社といえば、東門参道のあぶり餅のお店「一和」や「かざりや」も有名です。
今宮神社
おだやかに人が行き交う今宮神社
美しい手摺りの紙と茶道美術を堪能
「かみ添」は型押しという古典印刷技術で手摺りの紙製品を販売しているお店です。モダンな金封袋など、どれも目移りする美しさ。そして「茶道資料館」は総合的に茶道が学べる施設です。入館者全員に、季節の和菓子とお抹茶を提供するうれしいサービスも行われています。
かみ添
かみ添の繊細で現代的な紙商品
茶道資料館
茶道資料館の外観
初日はここまで
茶の湯旅1日目は、千家の家元が点在する堀川通界隈でお茶の文化にふれました。2日目は宇治川付近をゆっくりお散歩、最終日は寺町通界隈で茶の湯の名店をめぐります。旅の後半はこちらから!