ほわ〜んと水の中に漂う緑色の球体「毬藻(まりも)」。北海道土産で、水族館で、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
北海道釧路市、阿寒摩周国立公園内にある阿寒湖。この神秘的な湖に生育するのが、国の特別天然記念物に指定されている「毬藻(まりも)」です。
阿寒湖の取材にやってきた和樂web編集部・白方ですが、行く先々で耳にするまりもの情報に心奪われ、急遽まりもの学芸員を取材! 釧路市教育委員会マリモ研究室でまりもの研究をされている尾山洋一さんに、まりもにまつわる疑問をぶつけてみました。
アイヌの人たちはまりもを何と呼んでいた?
―― まりもって、藻(も)の一種なんですか?
学芸員: はい、苔っぽい見た目ですが、藻です。子どもたちには「大きな意味で、わかめと昆布と同じような仲間だよ」と説明しています。
―― まりもはいつ発見されたんですか?
学芸員: 日本では1897年に植物学者の川上瀧彌さんが発見しました。彼が北海道の学生だったころ、雌阿寒岳(めあかんだけ)の気象観測調査のためにたまたま訪れた阿寒湖で緑の球体をみつけて「毬藻(まりも)」という和名を付けました。
―― 阿寒湖に昔から住んでいるアイヌの人たちが名付けたのかと思っていました!
学芸員: アイヌ語でまりもを意味する「トーラサンペ(湖の御霊)」という言葉が本などで見れられるようになったのは80年くらい前からです。さらに20年ほど遡るとまりものアイヌ名が初出の文献が見つかるのですが、そこには「スカナキップ(丸いもの)」と記載されています。アイヌ名と和名のどちらが早く名付けられたのかは諸説ありますが、アイヌの人たちの方が早くまりもの存在に気づいていたと思いますね。
阿寒湖にいるまりもは6億5000万個
―― ヨーロッパにも、まりもは生育しているんですか?
学芸員: はい、いくつかの湖で発見されています。まりもが球化する湖としては、アイスランドのミーヴァトン湖とエストニアのオイツ湖などが挙げられますが、ミーヴァトン湖は数年前にほぼ絶滅、オイツ湖も小さなまりもがまばらにいるくらいです。ちなみに日本では河口湖とか琵琶湖にもまりもは生育していますが、球状のまりもが群生している湖は世界でも阿寒湖だけです。
―― 阿寒湖にはどれくらいの数のまりもが生育しているんでしょうか?
学芸員: 22年前の調査では推定で6億5000万個という結果が出ています。そのうち阿寒湖を特徴づける大きな球状のまりも(15cm以上)は10万個程度。数としては、大きいものほど少ない傾向にあります。
―― 数はどうやって調べているんですか?
学芸員: ボランティアの方と一緒に手作業で調査します。2019年8月に22年振りの調査を行ったので、もうすぐ最新の数字を公開できるはずです。
大きくて丸いまりもが見られるのは阿寒湖だけ
―― 他の湖にも生育しているのに、阿寒湖のまりもだけが国の特別天然記念物なのはなぜでしょう?
学芸員: かんたんに言うと、大きく丸く育つからです。阿寒湖の自然条件によって最大30cmくらいまで大きくなること、ビロード状の球状形態やその希少性から、1952年に国の特別天然記念物に指定されました。
―― 先ほど「球状のまりもが群生しているのは阿寒湖だけ」とおっしゃっていましたが、丸くないまりももいるんですか?
学芸員: はい。そもそも球状体のひとつひとつがまりもの単位ではなく、正確には、球体を構成する糸状の体のひとつひとつが、まりもの個体としての単位になります。
阿寒湖のまりもはなぜ丸くて巨大なのか?
阿寒湖のまりもがなぜ大きく丸くなるのか? さらに詳しく学芸員に伺います。
まりもよまりも、どうしてそんなに丸いのか?学芸員に聞いたら衝撃の事実が発覚した!
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