まりもよ、まりも。あぁ〜まりも。北海道釧路市、阿寒湖の取材にやってきた和樂web編集部・白方ですが、行く先々で耳にする毬藻(まりも)の情報に心奪われ、急遽まりもの学芸員を取材を!
釧路市教育委員会マリモ研究室で学芸員としてまりもの研究をされている尾山洋一さんに、阿寒湖のまりもが丸く大きくなる秘密について、詳しく伺いました。
「100年で1cmしか成長しない」は嘘
―― 阿寒湖には6億5000万個のまりもが生育していると伺いましたが、阿寒湖全体に生育しているんですか?
学芸員: いえ。主に湖の北部に群生しています。まりもの保護のため、そのエリア一帯は、立ち入り禁止となっています。
―― 阿寒湖のまりもは、どれくらいの時間をかけて大きくなるんですか?
学芸員: 1年でどれくらい成長するのか計測したデータはありませんが、周期的にまりもが陸に打ち上がるサイクルがあって、5〜7年で20cm以上のまりもが大量に出現することは判明しています。
―― 「100年で1cmしか成長しない」という噂を聞いたことがあるけど…。
学芸員: 阿寒湖にいるまりもはもっと早いペースで大きくなります。おそらく、土産店で購入したまりもがあまりにも育たないからそんな伝説が生まれたのかもしれません。
阿寒湖のまりもが丸く巨大化する理由 その1
―― 「小石にくっついたマリモが剥がれ、転がってまわりの藻を巻き込みながら大きく丸くなっていく」と聞いたことがあります。これは本当ですか?
学芸員: 一般的に多くのヨーロッパの丸いまりもは、小石にくっついて転がっていくことで形を成していたと考えられていました。ですので、阿寒湖のまりもも同じように巨大化していくのだろうと思われたのですが、阿寒湖の北側にいるまりもは、球化のメカニズムが特殊であることが分かってきました。阿寒湖の北側では、大きなまりもが岸に打ち上げられて、それがバラバラになって湖に戻って、また大きくなる…このサイクルをずーっと繰り返しているんです。
学芸員: これは阿寒湖のまりもの乾燥標本です。中心部が空洞化していますよね?こうなると、だんだん比重が軽くなって浮きやすくなり、やがて強風で岸に打ち上がるんです。湖の中ではまりもが3、4層に積み重なっているのですが、上のほうにいるまりもが巨大化して岸に打ち上がることで、下のまりもが光を浴びることができる。そういう利点もあります。
阿寒湖のまりもが丸く巨大化する理由 その2
―― でもこれだけまりもが巨大になるなんて、転がるためにかなりの距離が必要なのでは…?
学芸員: いえ、そもそも阿寒湖のまりもは湖底を転がって大きくなるわけではありません。
―― そうなんですか!?
学芸員: はい。波が発生すると水中に渦のような流れが生まれて、その下でまりもがとどまって回転しているんです。
阿寒湖の場合、波によって水中に渦のような流れが生まれて、その下でまりもがとどまって回転しているんです。
学芸員: とどまって回転するというのは、波の力と地形のバランスによるものなので、波が急だととどまっていられないですし、浅すぎると打ち上がってしまいますし、奇跡的なバランスなんです。このとどまりながら回転していくことも5,6年前のNHKのドキュメンタリー番組で初めて映像で記録されたものなんです。それほど、まりもって未知の部分が多いんです。
―― 阿寒湖のまりもは、大きくなると岸に打ち上げられて、分解されて湖にもどり、一定の位置にとどまって回転して巨大化し、空洞化して軽くなり、そしてまた打ち上げられる…。驚きのサイクルです…! 最後に、これからの研究についてお聞かせください。
学芸員: まりもはまだまだ分からないことがたくさんあるので、大学の先生などと一緒に研究を進めているところです。学術的な研究も大事ですが、マリモ研究室ではまりもだけを見るのではなく、まりもの住む家である阿寒湖とその自然をどうしたら守っていけるかを考えながら、保護活動に取り組んでいきたいと考えています。
―― 本日は、おもしろいお話をありがとうございました!
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