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2019.10.25

熊本のセレクトショップ「BREAKERS(Z)」。ビートたけしプロデュースブランドやペイント地下足袋もおすすめ

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スーツにドレスシャツ、下駄には着物。そんな概念を壊す店が熊本にある。「BREAKERS(Z)」は服屋だが、ジャンルにとらわれないセレクトをしている。髪を簪(かんざし)でまとめ、スーツにダボシャツを合わせ、下駄を鳴らしながら現われた「悠さん」の愛称で親しまれる店主の川原悠さんに、お店の事や自身のルーツについてお話を伺った。

お話を伺った「BREAKERS(Z)」の店主、川原悠さん

「BREAKERS(Z)」ってどんなお店?

熊本のアーケード街の道外れを少し歩いた場所に「BREAKERS(Z)」がある。前身の店から移転し、平成29(2017)年12月に現在の「BREAKERS(Z)」がオープンした。店主の悠さんが好きなものだけをセレクトしている、ごった煮のショップだ。

店の入り口には愛車のママチャリ

悠:コンセプトは、あるような、ないような、超ジャンルレスでセレクトしまくっています。僕の見てきた洋服のルーツや今の気分を一緒くたにした、超わがままショップ。本当に好きなものを摘まんできたので収集つきませんが、それが本当のセレクトショップの醍醐味では?という問いかけでもあります。

好きなミュージシャンのアルバムから好きな曲を1、2曲だけ選んで、1枚のアルバムに組み立てていくようなセレクトをしていると言うが、革ジャン、地下足袋、キタノブルーと、並べている商品がそれをものがたり、悠さん含めこの店の空気は一体化している。

岡山県の倉敷で生産している「丸五」の地下足袋は、スケボー板の上に

商品の他、店の内装からも独自の空気感が漂う。

悠:築40年のこのビルは色々な店が入れ替わっていたみたいで、ちょっとした歴史ある物件じゃないかなと思います。風情のあるタイルの壁があるんだけど、そこに大きな鍵穴みたいなぶち抜きがあって、「BREAKERS(Z)=壊し屋」を象徴してるかのようで結構気に入ってます。

悩みに悩んだ末にオープンした店

「BREAKERS(Z)」はどのような道のりを経て開店したのか?
福岡で生まれ育った悠さんは、服飾の専門学校を20歳で卒業したものの、道に迷いなぜか酒屋でアルバイト。1年で辞めるつもりがバイト先の居心地の良さにずるずると3年が経ってしまった。

悠:ある日、ビールケースを担いだ時に「あ、俺なにしてんだろう」と、ふと思って。

23歳の時に実家を出て熊本の服屋へ。状況は常に順風満帆ではなかった。

骨董店で見つけたお気に入りの映画小道具と。この日は「BOW」のダボシャツに「GARA」のネックレスを合わせていた。

前身となる服屋では15年勤めていたが、10年を過ぎたあたりからは前社長からお店を引き継ぐことに。とても良いとは言えない状況の中で、銀行の融資を受けながら店を営業していた。自分の店だけど、どこか自分の店じゃないような居心地の悪さを抱える。対会社と個人事業とでは扱いが違い、長年付き合いのあるメーカーも離れていったり、悔しい思いも。引き継いだお店を3年営業したのち、移転を決意する。

悠:お隣の服屋「coug」(カーグ)の店主はもともと10年来の付き合いがあり、姉のような存在です。当時から気にかけてもらっていたので、移転先を探し「coug」の隣の店舗であるこの場所を見に来た時には、本当に夢みたいな話だと喜びました。
もともと壁で区切られた物件でしたが、お客さんも店を行き来できるし、お互いにお客さんを紹介しあったり、接客しあったりとシェアしていて、互いの商品でディスプレイしている空間もあります。洋服屋同士でシェアって、姉妹店ならまだしもなかなか聞かない話でしょ?

幾何学な形の窓に独特のカラーリングが目を引く店舗

取り扱いブランドの一部ご紹介

BOW(ボウ)

井上優子さんによる郷土ブランド「BOW」。リネン100%生地のダボシャツは、移転後の取り扱い時から今まで、途切れる事なく売れている。

悠:この店の移転前から声をかけてもらっていましたが、もう少し待ってほしい、この後完璧な店を作るからその時に並べたい、と言って待ってもらっていました。

KITANOBLUE(キタノブルー)

悠さんの北野武監督好きが高じて取り扱い始めた、ビートたけしさんがプロデュースするアパレルブランド「KITANOBLUE」。全国的にはまだ取り扱い店舗は少ない。映画「その男、凶暴につき」「ソナチネ」のTシャツが人気。

左:KITANOBLUE(キタノブルー)のWOOL JACKETは内側背面に写楽が覗く
右:blackmeans(ブラックミーンズ)のレザーベストとライダースジャケット

blackmeans(ブラックミーンズ)

自分たちの中に存在するパンク、民族、モードなどのあらゆる要素と、日本人が持つ独自性や攻撃性、前衛性を意識した物づくりを追求し、革ものを中心としたアパレルを展開している。

悠:パンクスな中にも和の精神が宿る、クラフト感溢れる作品が多いです。

自作のペイント地下足袋

悠:「BREAKERS(Z)」改装時にペンキで壁を塗装していたら、ペンキが靴や服に落ちてきて、始めは汚れと思ったものも段々とデザインに見えてきて、ペンキにハマりました。以降、地下足袋にペイントしたものも並べ販売してます。

一階の店内の床はペンキ加工をしたインク汚れをそのまま残している

左:KEN KAGAMIの「実家帰れ」に「元気が出るテレビ」の缶バッジ
右:丸五の地下足袋用靴下と、蛍光色が目を引く靴下はGanaG Socks (ガナジーソックス)によるもの

ここにあるもの全てで表現する

悠さんは原点回帰をして、自分が本当に好きなものを「BREAKERS(Z)」に並べた。この空間には、悠さんのお気に入りが詰まっている。
内装、外装と共に際立つのは、店内BGM。この時、三上寛によるフォークソング「三上工務店が歩く」が流れていた。なかなかインパクトのある曲で、思わず笑ってしまった。

悠:こんな状態で買えますか?服が。「すいませんこんなBGMで」と自分からお客さんに言ってしまいますね。笑

革ジャン置いているからロックです、パンクですではなく、シンプルにその洋服と向き合うためにも関係ない曲を流したいです。いや、やっぱりこんな曲流してたら向き合うどころか集中出来ないかも。

自分の好きを突き詰めて出来上がったこの場所には、ジャンルとか流行とかは存在しない。酒を片手に、ふらりと悠さんに会いにくるだけのお客様も。「この店は服を売っているだけではないんですよ」と、お客様から教えてもらいました。
来店して空間に触れて感じてみてください。

BREAKERS(Z) 店舗情報

営業時間:12:00~20:00(不定休)
住所: 〒860-0843 熊本市中央区草葉町3-3 白川コノシャンテビル102
公式サイト:http://www.breakerz.shop
インスタグラム:
https://www.instagram.com/kaminoura_breakerz/

撮影/田中慎一朗

書いた人

商品の企画やらデザインやら相談やらを受けている他、おもいでのはとばコレクションを運営している。そんな経歴上、絵を描くことが得意と見られがちだが、新聞記者の最終面接で敗戦した過去を引きずる。人、場所、ものに興味があって、繋げることを企てる。 http://omoide-no-hatoba.com