Travel
2019.11.27

世界でわずか3か所!「阿波の土柱」は3万年かけて生まれた奇跡の絶景だった【徳島】

この記事を書いた人

今から130万年くらい前という気が遠くなるほど太古のロマンにも溢れた時空を超えたこの贈り物は、世界的に見てもわずか3か所ほどしかない希少で珍しい光景。
しかも、こんな間近で見られるのは、世界でもココだけ!
今も形を変え続けているその驚異的な姿は、まさに生きた壮大な芸術作品。
偉大な大自然だからこそなせる業。
この光景だけを見ていると、ここが日本であることも、令和の時代にあることさえも忘れてしまいます。
今回は、徳島県阿波市にある世界三大土柱の1つ「阿波の土柱(あわのどちゅう)」をご案内します。

「土柱」ってそもそも何?


様々な絶景や秘境などの自然の偉大さや美しさに惹き寄せられて数々の素晴らしい出会いを重ねてきていますが、「土柱」と名前が付いたスポットや土柱群を見たのもここが初めてだった私。

「土柱」とは、川が山から平地に流れ出た場所に土砂を堆積して作った堆積地が、その後に地殻変動などで隆起し、雨や風で浸食されてできた土の柱が群立する非常に珍しい浸食地形の一種です。
土柱は、数々の条件が揃わないとできないので、世界でも数少なく非常に珍しいものとなっています。

土柱ができる最低条件は、直立している面が砂礫層になっていることです。つまり、侵食されやすい砂と最大でも握りこぶし位の大きさまでの小石によってできた硬い礫が層となり、階段のような形状をした「段丘(だんきゅう)」となっている「土柱礫層(段丘礫層)」があることです。この層が風や雨で浸食されていく際に、砂が浸食され硬い礫の部分が残って柱のような形になって固まったものが「土柱」で、この侵食工程が急速なスピードで行われていくことも条件の1つとなっています。

「阿波の土柱」とは?


さて、今回の主役「阿波の土柱」とは、徳島県阿波市阿波町に位置し、四国讃岐山脈の南麓にある土柱群のことです。

130万年ほど前にできた土柱礫層、3万年もの浸食で土柱形成

阿波の土柱は、今から100万年から130万年前の太古の時代に吉野川の川底に堆積して作られた土柱礫層(段丘礫層)が地殻変動で隆起して、その後、風や雨に浸食されること約3万年もかかって現在の形状となったとのことです。

「三山六嶽」からなる阿波の土柱


この土柱は、「三山六嶽(さんざんろくがく)三十奇」とも呼ばれており、3つの山にまたがって6つの嶽で構成されています。
まず、千帽子(せんぼうし)山にある扇子嶽(せんすだけ)、波濤嶽(はとうがだけ)、その山の西側500mほどの場所にある高歩頂(たかぶちょう)の橘谷(たちばなだに)沿いには橘嶽(たちばなだけ)があります。さらにこの山の西側500mほどの場所に位置している円山(まるやま)の五明谷(ごみょうだに)沿いには、不老嶽(ふろうだけ)、筵嶽(むしろだけ)、燈籠嶽(とうろうだけ)があります。

1番見ごたえがあり美しい「波濤嶽」


この中で1番見ごたえがあり美しいのは、海の大波のようなダイナミックさからその名がついた「波濤嶽」。大きさは、高さ90m、幅50mほど。20本以上もの大きな土柱が連なっています。この中で最も大きな土柱の高さは18mほどもあり、特に下から見上げるとその巨大さをしっかり体感できます。

世界三大土柱の1つ「阿波の土柱」


「阿波の土柱」は、徳島県が世界に誇る「世界三大土柱」の1つにもなっており、世界的に有名なスポットです。


残りの2つの内の1つは、米国ユタ州のブライス・キャニオン国立公園内にあるフードゥー (Hoodoo) です。この土柱の元となる堆積層は、1番古い層は2億5千年前、1番新しい層でも7千万年前もの太古のものです。


そして、もう1つは、イタリアの北部の南チロル地方にあるレノン(リッテン)の土柱とプラータ(プラッテン)の土柱です。こちらの土柱は、カッパドキアやしめじ茸のような形をしているのが特徴です。

「阿波の土柱」の楽しみ方

「阿波の土柱」は1年中楽しむことができるスポットですが、1番おすすめのシーズンは紅葉が美しい11月で、この他にも新緑とつつじが美しい5月もおすすめ。

阿波の土柱がある広い敷地内は県立自然公園となっており、無料の専用駐車場や障がい者専用駐車場、トイレをはじめ、しっかりと整備されている遊歩道や展望台もあるので、様々な人が色々な楽しみ方をできるというのも魅力の1つ。

遊歩道をぐるっと1周すると1時間ほどかかりますが、下から見上げるだけであれば、駐車場から徒歩で3分ほどのスポットから手軽に見えます。
また、世界的に希少なスポットであるにもかかわらず、世界三大土柱の中で1番間近に土柱を見られるのも阿波の土柱ならでは!

手軽に下から見上げることができたり、絶好のロケーションとなる展望台から全体を見渡せたり、さらには、土柱の上まで行けて、上から土柱を直に見下ろすこともできてしまうんです。おまけに、夜間はライトアップまでされるので、日昼とは異なる表情も楽しめます。

見上げる「阿波の土柱」

この県立自然公園内には、上方と下方に展望台が2つあります。まず最初に訪れるべきは、障がい者専用駐車場から徒歩でわずか100mほどの距離に位置している下方にある展望台。


このスポットからは、中腹から土柱群を眺めることができます。そして、この展望台にある階段を下りれば、土柱の近くまで行って下から見上げることができます。現在は柵があるとのことなので、柵より中へは立ち入ることができませんが、それでも土柱の高さや大きさをしっかり体感できます。

最高のアングルから全体を見渡せる一般展望台

次に訪れるべきは、上方にある一般展望台。先ほどの場所から左奥へ進んでいくと一般展望台へ行ける階段があるので、これを上って行きます。徒歩で5分もかからないほどの距離にあります。


この展望台からは、「波濤嶽」を中心に最高のアングルから土柱全体を見渡すことができます。
記念撮影にもおすすめの人気スポットです。

1番間近から見下ろす「阿波の土柱」

世界三大土柱の中でも、土柱の上へ行ってこんなに間近な距離から、しかも直に見下ろすことができるのは、世界中探してもココだけ!!
高所恐怖症ではなく健脚者であれば、この「阿波の土柱」見学の中でも、1番の見どころと言っても良いのではないでしょうか。

一般展望台から遊歩道へ戻って「遊歩道頂上へ」の指示看板の方向へ行き、橋を渡り、その先の石段を進みます。トイレを通過すると、右側が土柱を直に見下ろせるスポットとなります。一般展望台からは徒歩で10分ほどの距離です。


柵も安全鎖なども一切ありませんので、スリルも迫力も満点!
滑り落ちないように、足元には十分気を付けてください。

まさに土柱の上に立って、こんなにも間近から見下ろせるなんて感動です。
土柱の太古のパワーもひしひしと伝わってくる気がします。

見終えたら、来た道を戻らなくても、先にある下りの階段がある道を下りていけば、舗装道路にすぐ出ます。その道路を右へ行けば、この公園の入り口へ戻って来れます。徒歩で15分ほどです。

ライトアップされた「阿波の土柱」


「阿波の土柱」では、「波濤嶽」を中心に土柱群の夜間ライトアップも行われています。
ライトアップが行われている時間帯は、5月~8月のサマーシーズンは日没から22時まで、9月~4月のウィンターシーズンは日没から21時まです。

夕方に行って遊歩道を一周すると、下りてくる頃にはライトアップが始まっているので違った雰囲気を楽しめておすすめです。

日没後は、ライトアップされている場所までは街灯の無い暗い道を歩くので、ヘッドライトや懐中電灯等を用意しておくことをおすすめします。

歴史的文化人も惹き寄せられた「阿波の土柱」


阿波の土柱の発見は、今から1200年以上も前の西暦800年、時代でいえば平安時代に発見されたという記録が残っています。

桓武天皇が統治していたこの時代には、学者であり漢詩人の菅原清公(すがわらのきよきみ)が訪れた歴史も残っており、その際に詠んだ歌も残っています。
1956(昭和31)年には、「裸の大将」の呼び名で有名な放浪画家の「山下清」も訪れ、阿波の土柱を描いています。さらに、「シャボン玉」や「赤い靴」などの童謡で有名な詩人「野口雨情(のぐち うじょう)」も来訪し、これを記念した詩碑も阿波の土柱の麓にあります。

厄介者から世界的にも希少な観光スポットへ


阿波にあるこの土柱群が世間に紹介されて注目されるようになったのは、徳島日報新聞でこのスポットが非常に珍しい景勝地であることが紹介された1903(明治36)年以降のことです。それまでは、驚くことに、山林の荒廃と治水の問題を引き起こす厄介者として扱われていたとのことです。

その後、多くの人々が動き出し、この珍しい地形を保護し観光地化する動きへ発展。「阿波の土柱」という名前が正式に付いたのは1955(昭和30)年のことで、長い間、名前すらもないスポットでした。

阿波の土柱で最も美しい「波濤嶽」は、1934(昭和9)年に「国の天然記念物」に指定されています。また、その後、阿波の土柱は、「四国八十八景」や「とくしま88景」にも選定されています。

厄介者から世界的にも希少な観光スポットへの大躍進を果たした阿波の土柱。
今後もありのままの素晴らしさで輝き続けてほしいです。

侵食が止まらない「阿波の土柱」


「阿波の土柱」は、現在も風や雨で浸食され続けており、日々、形を変え続けています。
樹木や草などが大きくなりすぎたことが原因で、台風により土柱の一部が崩落したこともあったそうです。
特に、最近の巨大化した勢力の台風などの影響は大きく、土柱の長さも昔に比べて短くなっており、一部ですが崩れてきている部分もあるらしいです。

もともと風雨による浸食でできたものなので、この景観を保護するために直接人の手を加えることはできませんが、太古のロマンにも溢れた時空を超えたこの贈り物を可能な限り末永く残せるように、様々な方法が色々な分野で検討されているとのことです。

阿波の土柱へのアクセス方法

阿波の土柱へは車でのアクセスが1番おすすめです。
車の場合は、県道阿波土柱線(198号線)を北の方角へ進み、徳島自動車道の阿波パーキングエリアを通過し最初の交差点を北へ。駐車場の指示看板があります。
徳島自動車道「阿波パーキングエリア」からは、この敷地内の市営駐車場に駐車し、北の方角へ徒歩で10分ほどで阿波の土柱がある県立自然公園の入り口に到着です。
なお、障碍者専用駐車場を利用する方は、車でこの公園の入り口へ入って行けば、下方の展望台付近にこの駐車場はあります。

電車の場合は、最寄り駅となるJR線の「徳島駅」からタクシーで15分ほどです。この駅からバスを利用する際には、「穴吹」方面のバスに乗り「穴吹」で下車し、「土柱」方面のバスに乗り換えれば「阿波の土柱」着きます。

阿波の土柱 基本情報

住所:徳島県阿波市阿波町北山540
電話番号:0883-35-4211 (阿波市観光協会/平日8:30~17:00) 
駐車場:阿波パーキングエリア市駐車場、または、土柱そよ風広場駐車場
(県立自然公園内に障がい者専用駐車場もあり)
 

書いた人

猫と旅が大好きな、音楽家、創作家、渡り鳥、遊牧民。7年前、ノラの子猫に出会い、人生初、猫のいる生活がスタート。以来、自分の人生価値観が大きく変わる。愛猫を連れ、車旅を楽しむも、天才的な方向音痴っぷりを毎度発揮。愛猫のテレパシーと自分の直感だけを頼りに今日も前へ進む。