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2020.04.01

まるでポンペイ!島根の地下深く眠る太古の森「三瓶小豆原埋没林」で4000年前に触れてみた

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島根県石見地方にある三瓶小豆原埋没林(さんべあずきはらまいぼつりん)は、三瓶山の噴火によって地中深くに閉じ込められた太古の森。偶然に偶然が重なり、地下に約4000年前の縄文の森が眠っていることが明らかになったのはごく最近、平成の時代になってからの話です。
地下空間に眠る4000年前の木々からはフレッシュな木の香りがし、時の流れを感じさせません。タイムカプセルに閉じ込められた古代ロマンあふれる地底の森を訪ねてみませんか?

三瓶小豆原埋没林公園

4000年前の森に出会えるのは、島根県大田市にある三瓶小豆原埋没林公園。この地下に、三瓶山の噴火によって長い年月閉じ込められていた太古の森があるというのです。
展示は「縄文の森発掘保存展示棟」と「根株展示棟」で行われています。施設の見た目は、こう言っては何ですが……とっても地味……。だって森が眠る展示室は地下なんですもの!スタッフの方も「埋没林ってここですよね?どこに展示室があるんですか?と聞かれてしまうんです」とのこと(笑)
地上が地味な分、地下に広がる展示室は圧巻!階段を一段一段降りるごとに、時を遡るかのような不思議空間に誘われます。

階段を降りて4000年前の縄文の世界へ

地下展示室へは階段を降りて向かいます。まず目の前に現れるのが、階段横にある壁面の地層。地上に近い部分には何やら根っこのようなものが。これは現代の地層で、稲の根っこ。この辺りは水田地帯で、埋没林も水田の整備工事の過程で偶然発見されたものなのです。下層には、上層とは全く様子の異なる地層が見られます。今からその世界にタイムトリップできるなんて、早くも興奮です!

階段を降りた場所に現れる直径30m、深さ13.5mの巨大な円形の空間。何かの工場の建設現場のような雰囲気です。スギの巨木が立ち、根元にはいくつもの木々が倒れた状態になっています。見学者は螺旋状の階段と見学通路で、さまざまな高さや角度からスギやケヤキ、トチノキなどの展示物を見ることができます。
しつこいようですが、ここは地下。頭上が地上です。地下から地上に向かって巨木が生えているというのは、頭ではわかっていても感覚的に理解しがたい不思議な状況ですが、かつてはこの木々の根元こそが地上だったのです。

三瓶小豆原埋没林はどのように誕生し、どのように発見されたのか

偶然が生み出した三瓶小豆原埋没林

こんな地下になぜ巨木が直立しているのでしょうか。その理由は近くの三瓶山にあります。三瓶山は単独の山ではなく、噴火口を囲んだ6つの峰の総称のこと。約10万年前に火山活動が始まり、幾度も噴火を繰り返しました。小豆原は樹齢1000年にも迫るスギの巨木が立ち並ぶ深い森でしたが、約4000年前、三瓶山の7度目の噴火により、この辺り一帯とともに地中に埋もれたのです。まさにイタリアの世界遺産ポンペイのような話です。

多量の流木が含まれる地層

小豆原埋没林の木々が奇跡的に直立した形で残っている大きな理由は、地中に埋もれた経緯にあります。

三瓶山の噴火により大規模な土石流が発生
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土砂は木々をなぎ倒しながら伊佐利川を流れる(伊佐利川は小豆原川の隣の川)
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埋没林の下流約500m地点で小豆原川と合流した伊佐利川の土石流が、勢いを弱めて小豆原川に逆流
 ↓
勢いはそがれているので、木々は倒されることなくそのままの形で埋もれる

堆積物を調べると更なる偶然が重なっていたことも判明しました。
小豆原には、まず土石流、続いて火砕流が、そしてその直後に水が流れ込み、温度が一気に低下。高熱は樹皮の表面を焦がしただけで、木の深部は炭化を免れたということがわかりました。

4000年を経て発見された三瓶小豆原埋没林

小豆原埋没林は、その発見においても偶然が作用したように思えます。

ビデオ画像:三瓶小豆原埋没林公園

4000年の時を経て小豆原埋没林が人の目に触れたのは、水田整備工事のタイミングでした。掘っても掘っても根元に辿り着かない垂直に埋もれた巨木は、工事には邪魔でしかありません。この時は、巨木は切断されて売り払われたそうです。

事態が動き始めたのは、巨木が出現してから何年も経った後のことでした。
高校の教員で三瓶火山の研究者でもある松井整司氏が付近に調査に訪れた際、小豆原地区の方が上の写真を見せたのです。
写真を目にした松井氏は驚き、その貴重性を直感しました。そして、定年退職後に独自で調査を開始しました。

三瓶小豆原埋没林公園HPより

このように、形成だけではなく発見においても偶然が重なり、今私たちは「縄文の森発掘保存展示棟」と「根株展示棟」で約4000年前の森に触れることができるのです。水田の整備工事の時に邪魔ものとして伐採された巨木の切り残しも、輪切りで展示するために探し当てられ、今では標本として活用されています。

難しいことをわかりやすく表現する展示内容

地下展示室ではこの三瓶小豆原埋没林の成り立ちや特徴を、「浦島太郎」「タイムカプセル」「缶詰」といった具合に、子どもにもわかりやすい表現で説明しています。

目の前で劣化したなんて、まさに浦島太郎!チェーンソーで切った時には鮮やかな木の香りがしたそうです

今のうちに見ておきたい三瓶小豆原埋没林

世界で見られる埋没林のほとんどは根元付近を残すのみです。日本にも「埋没林」「化石林」として名前が付けられたものが約40ヶ所ありますが、三瓶小豆原埋没林のように長い幹がそのまま残っている状態のものは非常に稀です。

特別にスタッフの方にスギの横に立っていただいていますが、通常はこのエリアに降りることはできません

現在は倒木の表面にトレハロース(糖の一種で食品にも使われている)を塗布して保存処理が行われていて、順次立木も処理が行われる予定。ふと、茶色いロールケーキにトレハロースを塗った「埋没林ケーキ」のお土産開発が頭をよぎりました。ここの知名度が上がったら是非商品化してもらいたいものです(笑)

スタッフの方によると「今はまだ来場者もさほど多くなく、直接巨木に触れていただくことができますが、そのうちできなくなるかもしれません」とのこと。4000年前にタッチできるのは今しかないかも!?

巨木の割れ目に顔を近づけてみると、今でも木の香りが!

根元展示棟では、伐採されたスギの切り株が展示されています。入り口(現在の地上付近)からその高さを感じ、螺旋階段を降りれば根元付近まで近づくこともできます。

三瓶小豆原埋没林の情報
住所:島根県大田市三瓶町多根ロ58-2
時間:9:00~17:00(最終入場は16:30)
料金:300円(小中高生100円)
公式web:三瓶小豆原埋没林

書いた人

生まれも育ちも大阪のコテコテ関西人です。ホテル・旅行・ハードルの低い和文化体験を中心にご紹介してまいります。普段は取材や旅行で飛び回っていますが、一番気持ちのいい季節に限って着物部屋に引きこもって大量の着物の虫干しに追われるという、ちょっぴり悲しい休日を過ごしております。