〝あんこ〟名店東西11店の中から、第6弾は大阪の名店「出入橋」きんつばをご紹介します。
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特集 美味しい!美味しい!あんこ銘菓店GP!
今も昔も働く男たちのおやつ
出入橋きんつば屋の「きんつば」大阪
船が出入りするので「出入橋」。店の前には現在は役割を終えた橋だけが残されていますが、かつて出入橋の下には船泊まりがあり、運搬に携わる労働者が大勢集まっていたとか。
店の創業は昭和5(1930)年、それはまだこの橋の下の水路が活用されていたころのこと。働く男たちの一服処として「出入橋きんつば屋」が始まりました。
この店のきんつばは、その日炊いたあんを〝取って出し〟したような仕上がり。その証拠にころもが薄い! あんこの甘みが控えめで、つなぎの寒天も少なめ。指にやわらかく伝わるのが特徴です。
「その日のうちに食べてもらうことが前提だからです。日もちが難しいのはころものほう。小麦粉を水で溶いただけですし、あんこがパンパンに詰まっているのを味わってもらいたいので、ギリギリまで薄くしています」と3代目主人・白石誠治さん。
きんつば用のあんこは通常よりも砂糖が1割控えめ。だから1個といわず、2個、3個とつまんでしまいます。この気軽さが本来、江戸庶民の愛したきんつばの味だったのでしょう。
焼き上がりの姿は無骨に見えますが、中を割ったら主人のきんつばへの深い愛情がわかります。小豆の粒の輝きが実にきれい。ビジネス街が近いので社用の手土産に利用されることが多く、買い物ついでに自分用のおやつを求める男性客も多いのです。
ころもの薄いところからあんこが透けて見えるでしょ
店舗情報
出入橋きんつば屋 でいりばしきんつばや
住所:大阪府大阪市北区堂島3-4-10
電話:06-6451-3819
営業時間 10時~19時(土曜は18時まで、甘味処は閉店1時間前に終了)
休み:日曜・祝日
撮影/石井宏明 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2019-2020年12・1月号)』の転載です。