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今につながる箱寿司の味と彩りはこの店で生まれた
吉野鯗の「箱寿司」
折に詰められた姿にほれぼれ。ひと口の大きさとネタのバランスが完璧です。それもそのはず、大阪寿司を代表する形、「箱寿司」が現在のような姿になったのは、この店が発祥だから。「すし萬」に続く老舗「吉野鯗(よしのずし)」の3代目が明治20(1887)年ごろ、従来の長方形の木型ではなく、2寸6分(約8㎝)の正方形で深さ1寸2分(約4㎝)というまったく新しい規格を生み出しました。
ネタは生で使うものはなく、高級で、職人技を尽くした内容に。「安い魚を使った庶民の〝虫養い(小腹満たし)〟」として存在していた箱寿司を刷新し、以降、大阪寿司における箱寿司の基本がこれに。元祖と呼ばれるものは、とかく〝昔風〟に感じたりもしますが、むしろいちばん洗練された印象を受けるのがこの店のお寿司。
船場きっての洒落者だった5代目の影響を受けているのが現当主の7代目・橋本卓児さん。寿司飯の洗練された味わいには「確かに、酢を立たせることには気を使っていますね」。粒の立った米、鼻を抜ける爽やかな酢の味わいは、こだわりのひと手間から生み出されていました。また、スフレのような玉子焼の秘密もすり身の配合にあるとか。地道な作業の繰り返しのなかでおいしさを追求する職人に感服します。
店舗情報
吉野鯗(よしのずし)
住所:大阪府大阪市中央区淡路町3-4-14
電話:06-6231-7181
営業時間:11時~14時
休み:土曜・日曜・祝日
※髙島屋大阪店、JR新大阪駅構内に支店あり。
※「箱寿司」は北海道・青森県・秋田県、沖縄県および離島以外に限り発送。ウェブサイト(http://www.yoshino-sushi.co.jp)もしくは電話にて注文を。
撮影/石井宏明 構成/藤田 優
※本記事は雑誌『和樂(2021年12・1月号)』の転載です。