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2024.11.02

琉球王朝の文化を堪能する安らぎの旅・和樂web読者限定イベントレポート【星のや沖縄】

那覇空港から車を約1時間走らせると、沖縄を代表するラグジュアリーリゾート「星のや沖縄」に到着します。自然海岸に囲まれた敷地内で優雅に過ごす今回のイベントは、「茶炉音(サロン)・ド・和樂」一周年を記念して開催されました。『和樂』と『和樂web』の読者およびユーザー限定の会員組織「茶炉音(サロン)・ド・和樂」の会員様、5組10名様をご招待したスペシャルな催しです。ゆるやかな空気のなかでの、至福のひとときをご紹介します。

心を落ち着かせるレセプション

まず最初に案内されるレセプションは、壁全体が深海を思わせる深い群青色で、天井まで届く自然木とのコントラストも美しく、日常から非日常へと誘われているようです。「こちらの場所で一旦リセットしていただきたくて、このようなしつらえにしています」と、説明してくださいました。バックに流れる音楽も神秘的で、心がスーッと落ち着きます。

城壁を連想する「グスク」とスタッフの装束で別世界へ

応対してくれるスタッフのユニフォームが、目に留まりました。琉球王朝時代の士族女性の礼服をモチーフにして、藍色と黄色を組み合わせています。1キロにも及ぶ海岸に寄り添うように建てられた施設の外側には、「グスクウォール」と呼ばれる壁が敷き詰められています。決して威圧的ではない美しい城壁によって、何だか守られているような気分に。

よく見ると、壁には模様のような穴が空いています。これは伝統的な織物「読谷山花織(ゆんたんざはなうい)」の模様で、長寿・裕福・子孫繁栄の意味を持つのだとか。グスクには城塞の役割だけでなく、人々の暮らしや文化を守る意味合いもあるのだそうです。

最高のロケーションと、沖縄の文化を感じる室内

宿泊する部屋へ入った途端、あっ!と思わず感嘆の声が出てしまいました。それは前方の窓ガラス越しに、美しい海の景色が広がっていたから。「星のや沖縄」全ての客室が、オーシャンフロント設計なので、遮るものが何もない海を眺めながら贅沢な時間を楽しむことができます。あえて時計もなく、明るすぎない照明、そこで聞こえる波の音。日々の慌ただしい暮らしで蓄積された疲れも、デトックスできそうです。

ベッドルームの壁紙には琉球紅型(りゅうきゅうびんがた)がほどこされていて、室内を彩ります。植物の月桃(げっとう)や、お茶文化など、読谷村に伝わる風習や民話を描いたオリジナルデザインです。

客室は全て低層階で、南国の花や木々が植えられた豊かな庭や海を間近に感じられる造り。靴を脱いで室内へ入ると、プライベート感が満喫できる工夫がされています。手渡されたルームキーに、印象的なキーホルダーがついているのが気になりました。「王朝時代、婚礼が決まった我が子に親から送るお祝いの品とされた房指輪(ふさゆびわ)の縁起の良いデザインを取り入れています」と教えていただきました。沖縄に伝わる工芸品の魅力を、自然な形で感じられるのも嬉しいです。

おもてなしの心をいただく「ぶくぶく茶」

室内で一息ついた後に、庭を通って「道場」へ向うと、伝統の「ぶくぶく茶」体験の催しがありました。こちらの施設では体験のプログラムが充実していて、道場では朝と夜に呼吸に注目したストレッチもあるそうです。様々な地域からの参加者の皆様も到着されて、ようやく合流することができました。

会場へ入ると伝統的なスタイルで、スタッフがお茶を点てている最中でした。大きなボールのような器は、テリハボクの木で作られた専用のもの。油分が少ないこの素材でないと、泡がうまく点たないそうです。大きな竹製の茶筅をリズミカルに使って、白い雪のような泡が出来上がりました。

「煎り米を煮詰めた煎り米湯にさんぴん茶を入れて泡立てています。サンゴ礁の成分に由来して沖縄の水は硬水なため、このように泡立つんですよ」と、教えていただきました。泡が消えないのも、硬水だからのようです。

参加者の皆様に、こんもりと白い泡がのった器が運ばれます。泡にはピーナツの粉がかけられていて風味が豊か。パクッと泡をまずほおばって、その後に泡の下にあるさんぴん茶を飲むのがコツです。旅人に旅の疲れを癒してもらうためにふるまわれた歴史から、旅の安全や幸せを願う想いが込められています。リラックスした雰囲気で、参加者はぶくぶく茶を、楽しんでおられました。

共に声を出して体感する「唱え」ワークショップ

お茶のひとときの後には、今回のイベントのメインとも言える「組踊(くみおどり)」鑑賞に備えてのワ—クショップ体験がありました。まず一般社団法人琉球伝統芸能デザイン研究室代表理事などを務める山内昌也先生が、三線(さんしん)を弾きながら、秋の豊作を喜ぶ琉球古典音楽を歌唱されました。徐々に夕暮れに向う道場の中で、参加者は独特の美しい音色に引き込まれているようでした。

演奏に続いて、山内先生から組踊についての説明がありました。組踊は今から約300年ぐらい前、首里城(しゅりじょう)内に設置された特別舞台で上演されたのが始まりだそうです。当時琉球王国は、中国との外交を活発に行っていて、中国からの使者が来た時には、料理や芸能でおもてなしをしていました。当初は音楽や舞踊が中心だったところ、国王からの命により、能楽や中国の楽劇などをヒントに生み出されたのが組踊だそうです。音楽と舞踊とせりふで演じられるこの伝統芸能は、ユネスコ世界文化遺産に登録されています。

鑑賞する『執心鐘入(しゅうしんかねいり)』は、琉球王府踊奉行(おどりぶぎょう)だった玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)によって、最初に首里城で披露された演目です。美少年・中城若松(なかぐすくわかまつ)に恋をした宿の女が、その執念から鬼女に変じてしまう。恐怖を感じた若松が寺に逃げ込んだことから、住職らの法力によって女の心が鎮められるまでを描いています。

組踊の演じ手のせりふは、「唱え(となえ)」と呼ばれる独特の抑揚で唱えるのが特徴だそうです。8・8・8・6音で構成されていて、せりふと言うよりは、音楽を聞いている印象です。男女での唱え方の違いを、山内先生がていねいに実演してくださいました。「ご一緒に唱えてみましょう」と山内先生のリードで、役ごとにグループに分かれて掛け合いを行いました。実際に体験することで、組踊が身近に感じられたひとときでした。

グラス片手に味わう日没の風景

組踊鑑賞までは、海に突き出すようにして作られた「インフィニティプール」へ場所を移しました。深さ10センチの水盤のようなエリアでは、洋服のまま気軽に浸かることができます。参加者の皆様は水と戯れたり、サイドに設けられたくつろぎのスペ-スでゆったりと過ごされたり。サンセットを眺めながらハイビスカスのスパークリングで乾杯と、贅沢な時間を楽しまれていました。

野外で観る組踊の迫力と優しい声の響き

再び道場へ戻ると、すっかり辺りは暗くなっていて、昼間とは趣が違っていました。明るく照らされた道場を舞台に見立てて、参加者は庭から鑑賞するスタイルです。薪能(たきぎのう)を彷彿とさせますが、このイベント参加者だけの催しなので、張り詰めた緊張感というよりは、和やかなリラックスした雰囲気です。椅子席の横には沖縄のお菓子とお茶、泡盛もセッティングされていて、鑑賞しながら味わえるスペシャルなサービスもあって、わくわくした気分になりました。

いよいよ組踊が始まると、つい先ほどワークショップで習った、柔らかい発声の唱えが耳に入ってきました。美しく独特の抑揚から感じる優しい響き。首里城でもてなした時も、こんな感じだったのだろうかと想像が膨らみます。

宿の女の紅型の衣装が鮮やかで、また手先の動きが舞踊のよう。物語が展開し、宿の女が鬼女へと変貌した瞬間、鳥肌が立ちました。大きな舞台の公演では、ここで般若面(はんにゃめん)をつけるそうですが、面がなくても表情と動きで伝わってきます。

公演が終わると参加者から拍手が起こり、しばらく物語の余韻に浸っているのが感じられました。また特別に設けられた出演者の方たちとの交流では、熱心に質問をされる姿も。きっと参加者1人1人の心に深く残る、組踊鑑賞だったことでしょう。

目でも楽しむ極上のディナー

充実した1日の最後は、お待ちかねの夕食。和樂web鈴木深編集長の乾杯の挨拶からスタートして、和やかなディナータイムとなりました。イベント参加者だけの特別な空間なので、会話も弾んでいる様子でした。

コースの最初に運ばれてきたのは、沖縄民具「バーキ」を器に見立てた前菜。食べるのがもったいないような、可愛らしく繊細な料理です。

パッションフルーツを器にしたカッペリーニは、シャコ貝のコリコリとした食感と、パッションフルーツの爽やかな甘みが味わえる一品。メインの肉料理は「牛フィレ肉とカボチャのロースト」で、沖縄特有の島カボチャが、軟らかな食感の牛フィレ肉を引き立てていました。健やかな美へ導くのをテーマにしたコース料理に、皆様満足の様子でした。

旅の最後は、自然に触れる散策のひととき

寝心地の良いベッドで熟睡した翌朝は、心配された雨も降らず青天でした。楽しい時間はあっという間に過ぎさり、最後はスタッフが案内してくれる「ゆんたく庭めぐり」のイベントのみとなりました。沖縄方言でおしゃべりするのを「ゆんたく」と言うそうです。敷地内の樹木や花々についてスタッフが説明をしてくれると、参加者同士の会話が弾んで和やかな空気が流れていました。

ベッドルームの壁紙に描かれた月桃も、実際に見ることができました。「葉っぱをちぎって揉んでみると、良い香りがしますよ」とスタッフに促されて、試してみる参加者たち。この葉には抗菌作用があることから、旧暦の12月8日になると、月桃の葉で包んだムーチーと呼ばれる健康祈願と厄払いのお餅が食されています。

施設に沿って広がる海岸も案内してもらいました。昔ながらの自然海岸から見る海の景色は格別で、吹く風も波音も心地良いです。「時間ごとに刻々と海の色が変わって、様々な表情が楽しめますよ」とのスタッフの言葉に、またこの地を訪れたい気分がわいて来ました。

「茶炉音・ド・和樂」のご案内

『和樂』と『和樂web』では、今後も読者の方にお楽しみいただける、スペシャルなイベントを計画しています。

このような特別な企画、プレゼントのご案内は「茶炉音(サロン)・ド・和樂」ご登録のみなさまへお届けします。ぜひお気軽にご参加ください!

基本情報

星のや沖縄
沖縄県中頭郡読谷村儀間474
公式ウェブサイトhttps://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyaokinawa/

撮影/Sandy.Kanako

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瓦谷登貴子

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。
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