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2019.08.28

試したい!表参道の「即今」で楽しめるのはまったく新しい茶空間だった【東京】

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2019年春、表参道の南青山にオープンした「即今(そっこん)」

伝統文化を体験する場所って、実はとても限られていますよね。
「雰囲気の落ち着いたクラシシックな趣の茶室で、気軽に、ちょっとおいしい和菓子とお茶でゆるゆるとひと休みしたい。抹茶体験してみたい!」という和の初心者にやさしいお店が、ファッションビルが立ち並ぶ表参道・骨董通りのビルの地下にできました。

その名も「即今」。ここは茶道を軸に、さまざま日本文化が体験できるお店です。

靴を脱いで店内に入ると、「わっ、これ、本物の茶室ですよね」と思わずつぶやいてしまいそうな、茶の美空間が出現。
四畳半の周囲に3つの腰掛け席を設けた広間「爛酔亭(らんすいてい)」と、三畳台目の小間茶室「即今」。そしてバーカウンターももうけられている三畳間「笊籬菴(そうりあん)」という3つの個室で、薄茶や茶懐石、お酒まで堪能できるのです。

広間の「爛酔亭」は可動のテーブル式なので、椅子のように畳に座ってお茶や食事がいただける。

このお店を手がけたのは、茶道宗和流18代家元の宇田川宗光さん。宇田川さんは、家元という立場でありながら、とてもザックバラン。かねてより「夜咄(よばなし)サロン」と名付けた活動で、ワイワイとお茶を楽しむ交歓の場をつくってきました。
その宇田川さんが表参道というおしゃれな街に仕掛けたのが、このモダンな茶空間「即今」です。

「茶道ってむずかしい雰囲気が先行して、とっつきにくいんじゃないかなと思っていたんです。作法を学ぶことももちろん大事なんですが、私の考える茶道は、もっと楽しいもの。
茶のもてなしとは、突き詰めると、人と人とのコミュニケーションなんですね。
だれでも予約なしに、フラリと寄れる【やわらかな交流の場】があればいいなと思って、お店をつくってしまいました。せっかくの機会なので、他の伝統文化も体験してもらいたくなって、坐禅も能の謡(うたい)の会も催しています。本物の雰囲気のなかで、さまざまな日本文化にふれてもらいたいですね」と宇田川さん。

店長のザッカリさんは、流暢な日本語、英語、フランス語で対応。初心者の方や外国からのお客様にも、ていねいに作法を教えてくれます。

「薄茶セット」1500円をチョイスしてみました。この日の和菓子は、鶴屋𠮷信の「京観世」。「爛酔亭」で主菓子をいただいてから、三畳台目の茶室「即今」に移動します。

そこでお茶の点前を拝見したのち、薄茶を一服。あたたかなもてなしで、ゆったりと。非日常の空間でいただくお抹茶が、ひときわおいしく感じられます。

お昼の「即今ランチ」(縁高膳のお弁当。薄茶+干菓子付き)2000円は、なんともリーズナブル。

こちらもお昼の「禅寺うどん」1000円。薬味たっぷりの禅寺式精進うどんで、追加うどん・追加ごはん300円。

ディナーメニューは、茶懐石「一汁三菜(飯・汁・向付・煮物椀・焼物・香物・湯桶)+薄茶」8500円や、お茶と懐石以外にバーカウンターのある茶室でカクテルも楽しめる「即今コース」1万5000円なども。
「一度、懐石を体験してみたい!」というビギナーさんにおすすめです!

「笊籬菴」にはバーを完備。ザッカリさんの裏の襖が開くと、お酒が並ぶシェルフが現れるしかけ。日本酒やスパークリングワイン、カクテルやノンアルコールがいただけます(800円〜)。

11時30分〜14時30分の昼営業(お茶一服やランチ)は予約不要ですが、ディナータイム17時〜21時は、予約が必要となります。
お茶室の貸し出しなど、さまざまな注文にも対応してくれるそうです。
公式サイトはこちら

秋の注目イベント、謡の会開催

そんな即今で、2019年9月30日に、能の謡のイベントが開催されます!
謡とは、能のなかの声楽にあたる部分(台詞や言葉)をさします。

茶道のさまざまな茶道具には、実は能を題材とした銘がつけられていたりするんですね。正式な茶事の際、茶懐石やお酒も進んだクライマックスで、お客様にお謡を所望することもあります。
伝統芸能の能は、茶道と切っても切れない文化なのです。

今回は、「能と八寸の会」と題し、観世流シテ方能楽師の武田友志さんに、能の有名曲である「高砂」についてのお話と実演の後、参加者の皆さんに謡を体験していただくもの。
自分で謡をやってみるなんて、ちょっとワクワクしませんか?!

「能の世界も楽しいですよー」とやさしく語る能楽師の武田友志さん。ドキドキがこうじて前のめりになっても、しっかり受け止めてくださいます。

夜の部では八寸(はっすん。懐石の一種で、海のものと山のものを組み合わせたお酒のお供)と千鳥の盃(懐石のお酒のやりとり。ホストがお客さまから盃をかりて、それでお酒を酌み交わして親睦を深めるという決まり事)も味わえます。

八寸は、へぎの木地のうつわを使うのがお約束。端正な茶懐石の美が現れています。手前と奥のアテを1品ずつとって、お酒をいただく。茶懐石の楽しみのひとつなんですよね。

ぜひ、謡のイベントにもふるって参加してみてくださいね。

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特別イベント
南青山 即今 能と八寸の会「高砂」

【会 場】青山「即今」
東京都港区南青山5-12-4 全菓連ビル B1F
電話/03-5389-8239

【最寄駅】銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」下車、徒歩7分

【日 時】
(1)昼の部
2019年9月30日(月)14時30分~16時
【参加費】6000円(薄茶・主菓子付)
14:00 受付開始・薄茶(点て出し)
14:30 武田先生のお話し「能楽、高砂について」
15:00 お仕舞の見学「高砂」
15:15 謡ってみよう「高砂」
16:00 終了

(2)夜の部
2019年9月30日(月)18時30分~21時
【参加費】1万2000円(煮物椀・八寸・日本酒付)
18:00 受付開始
18:30 武田先生のお話し「能楽、高砂について」
19:00 お仕舞見学「高砂」
19:15 謡ってみよう「高砂」
20:00 煮物椀・八寸で「千鳥の盃」体験後に懇親会
21:30 終了

【申込】
事務局までメールoffice@hiecal.jpにて、下記事項をご記入の上、お申込み下さい。複数名でのお申込みの場合は、お名前欄に全員分のお名前をご記入ください。定員【15名】ほど。先着順で定員に達し次第、〆切となります。
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●お名前:
●お人数:
●ご参加時間: 昼の部 ・ 夜の部
●電話番号(携帯等連絡のつくもの):
●メールアドレス:
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書いた人

茶の湯周りの日本文化全般。美大で美術史を学んだのち、茶道系出版社に勤務。20年ほどサラリーマン編集者を経てからフリーに。『和樂』他、会員制の美術雑誌など。趣味はダイエットとリバウンド、山登りと茶の湯。本人の自覚はないが、圧が強いらしい。好きな言葉は「平常心」と「おやつ食べる?」。