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2025.07.21

あれもこれも「カエる」? 約1万のカエルが出迎える幸せの寺・福岡県如意輪寺【ダイソンの寺社探訪】

風鈴の音色に誘われるがまま。
足を踏み入れると。

ここにも。
あそこにも。

新緑の木々の間から見え隠れする、あの丸みを帯びた形。
大きいモノから小さいモノまで。

──そこは、カエルが集まる異空間でした

さて、今回の「ダイソンの寺社探訪」。
訪れたのは福岡県の小郡市、西鉄三沢駅から徒歩で15分ほどの距離にある真言宗のお寺だ。
その名も「清影山 如意輪寺(にょいりんじ)」。
「かえる寺」といえば、ピンとくる方もいるかもしれない。

「かえる寺」の案内板

なんといっても、噂通り。いや、名前通りなのか。
境内には、ありとあらゆる種類のカエルが、いつでも私たちを出迎えてくれる。

「ええっ」とのけぞった方。
そこは心配ご無用。本物の「カエル」ではなく、カエルの置物(オブジェ)である。

それにしても、どうして「カエル」なのか。
そんな疑問を抱きながら、今回も躊躇なく現地へと飛んだ。
一体、どんな新しい発見があるのか。
それでは、早速、ご紹介しよう。

※冒頭の画像は「如意輪寺」のカエル(石像)です
※本記事の写真は、すべて「如意輪寺」に許可を得て撮影しています

どうして「かえる寺」?

空間が歪んだのか。
それとも、パラレルワールドに入り込んでしまったのか。
坂道を上がって、緑豊かな境内へと足を踏み込めば。
金色の観音様のお姿が。

涼しげなお顔から視線を下げていくと……。
その足元には……。
カエル?

カエルに乗って黄金に輝く観音様

ふむ。
やはり、どう見てもカエルの背中である。

その光景に初っ端からガツンと衝撃を受けつつ。
本堂へと向かう。

木々の間を通り抜けて本堂へ

新緑眩しい季節に訪れたからか。
境内を歩いているだけで、癒される自分にちょっと驚く。

「そらあかんで」
そんな声が聞こえてきそうな渋いカエルを発見。

境内の渋いカエル

至るところに、カエルが置いてあるのだが。
それがとっても自然なのだ。背景に溶け込み、全く違和感がない。
まるで本物のカエルが石になったよう。まさしく時が止まったかと錯覚してしまう。

進んでいくと。
ぶわっと風が吹いて、一斉に風鈴が大きく揺れた。
少し高めの独特の音色で、視覚のみならず聴覚まで刺激される。

風に揺れる風鈴とお出迎えのカエル

取材前にして。
既にすっかりカエルたちの虜である。

「ようこそカエル寺へ」
金色の丸っこいカエルに挨拶されたような気分になりながら、先を進んだ。
風鈴が揺れる中を通り、ようやく本堂に到着である。

コチラの如意輪寺。
創建は、奈良時代前期。天平元(729)年に「行基(ぎょうき)」によって開創されたといわれている。
行基は、聖武天皇より初めて「大僧正(最高位の僧)」に任じられた人物。生前から「菩薩(ぼさつ)」と仰がれるほどのお方である。

如意輪寺の本堂

そんな歴史ある如意輪寺が、どうして「かえる寺」と呼ばれるようになったのか。

「父が、先代の住職がですね。平成4年ですね、中国から持ち帰ったことがきっかけになるんですけど」

こう、話されるのは、如意輪寺の現在のご住職である「原口元空(げんくう)」氏。
今回、快く取材に応じてくださった。

如意輪寺の「原口元空」住職

「当時、青少年の非行がものすごく多かったっていう時代だったらしいんですよ。青少年が非行に走る家庭の70%以上に、仏壇や神棚がないという統計が出てまして、どうしたら若い方にお寺に来ていただいて、手を合わせてもらえるかなと考えていたところで。たまたま、中国から(カエルの置物を)持って帰ってきたことが始まりです」

それにしても、なぜ、「カエル」なのか。
率直な疑問をぶつけてみた。

「カエルで何かしようっていうことではなくて、まあ、たまたま中国に行った時に、お土産屋さんに『翡翠(ひすい)』という石でできたカエルが売ってたということで、冗談で『無事帰る』っていうことで、持って帰ってきたみたいです」

ちなみに、コチラがその噂のカエルだ。
「『初代蛙(かえる)殿』って書いてありますから、すぐ分かると思います」

「かえる寺」の始まりとなった「初代蛙殿」

「そこからずっと先代の住職が集めたり、近所の方からいただいたりとかで。もう30年くらいになりますかね。今では10,000体ぐらいのカエルになってます」

1体の「初代蛙殿」から。
いまや10,000体の大所帯となった如意輪寺。
こうして、今は「かえる寺」という名で親しまれるコトになったのである。

御本尊は秘仏の「如意輪観音」さま

さて、そんな如意輪寺には、珍しい仏像が安置されているとか。
福岡県指定文化財でもある御本尊だ。

自然と、視線が本堂中央へと引き寄せられる。
そこには、優しい雰囲気のある立像の観音さまのお姿が。

「御本尊は『如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜのんぼさつ)』さまです。『如意』って書いて『意の如くなる』とか、『思いが叶う』観音さんといわれてます。正面が『前立(まえだて)観音』さんになってまして、その後ろの厨子(ずし)の中に秘仏の観音さまが入ってるんですよね。同じようなお姿なんですけど」

ほほう。
またもや「願いが叶う」という言葉を聞くとは。
ここ最近、取材先で「願いが叶う」というお話を耳にする機会が多かったせいか。ついつい、あらぬ期待をしてしまう。

ずずいっと前に出て、手を合わせる。
秘仏であるため、当然ながら御本尊のお姿は見えない。
後ろの厨子の中に安置されているようだ。目の前の観音さまは、御本尊と同じお姿であるという。

本堂(真正面より)

「一面六臂(いちめんろっぴ)のお姿で、お顔が1つ、手が6本あるんですけど。日本唯一の立像で、お姿が立ち姿なんです」

如意輪観音といえば。
一般的に肉身は金色で、片膝を立て坐するお姿の「坐像」が多い。如意輪寺の御本尊は立像であるため、かなり珍しいようだ。如意輪観音は坐像でも立像でも、6本の手のうち右の第1手は、頰に当てる「思惟(しゆい、しい)手」が特徴。他の手には、如意宝珠や法輪を持たれているという。

確かに、目の前の観音さまの左肩付近には法輪が見える。右手の思惟手も判別できた。何やら考えをめぐらされているような表情である。

「(ここは)行基菩薩が開山したっていう言い伝えが残ってますし。(如意輪観音さまも)『行基作』と言われてますけど……。ただ、調べに来られた方が、恐らく700年ぐらい前に1度修復か、造り変えるようなコトがしてあるんじゃないかと。何らかの手が加わってあるんだろうという話もあるんです」

なかなか古いと、その辺りの事情も不確かなのだろう。

秘仏「如意輪観世音菩薩」さまと同じ姿の「前立観音」さま

なお、秘仏であるため、御開帳は12年に1度。
次回は、かなり先の2037年だとか。
うん?
2037年って。もしや……12年引けば2025年。なんと、今年なのでは?

「今年の4月6日~17日までの12日間ですかね。御開帳の時しかお姿が見れないということで。インド、中国、日本と3国で盛大にさせてもらいました。父がインドも中国も繋がりを残してくれてましたので。」

おっと、ダイソン。
いやもう、出遅れすぎだろ。

それにしても、自国ファーストへと傾きつつある世界情勢からしてみれば。御開帳を通して、3ヵ国が繋がるとは素晴らしいコトだ。お写真を見せていただいたが、なかなかグローバルな式典だったようだ。

「お釈迦様が悟りを開かれた聖地として、インドに『ブッタガヤ』っていう場所があるんですけど。そこの管長さんとか。あと、うちが真言宗なんですけど。弘法大師、空海さんが中国で修行されたお寺の今の住職さんにも来ていただいたりとか。お弟子さんが5,000人ぐらいっていう話で、中国政府の許可がないと来れないような偉い方で。そういう方でも呼べるようなパイプを父が作ってくれてまして」

お父様である先代のご住職のお名前は「原口元秀(げんしゅう)」氏。
惜しまれながら昨年の2月に永眠されたという。

「父は生涯現役で行くつもりだったんじゃないかなと。でも、本人はやり残したことはないっていうような形でしたので。境内の上の方に『多宝塔』があるんですけど。70歳で建てるという目標でやってまして。(結果的には)それも目標通り70歳で建ててますんで」

多宝塔

多宝塔は、令和2(2020)年4月8日に建立。
人々の幸せを願う意味で建てられたという。
お会いすることはできなかったが、どうやら先代の元秀住職は、有言実行を地で行くタイプだったようだ。

「多宝塔が建った時は、もう自分は死んでもいいみたいな話をしてました。好きなようにさせてもらったからと。悔いはないということですね。人の2倍3倍も駆け抜けたような人生だったのかなと。ちょっと早かったですけど」

それにしても、偉大な先代のあとを継ぐことにプレッシャーはないのだろうか。

「率直に言えば、大変ですね。父がものすごく広い交流を持っていましたので。大変ですけど、父は『来ていただいた方に喜んでいただけるお寺作り』っていうことで、ずっと考えてましたので」

多宝塔

その思いは、確実に如意輪寺に反映されている。
というのも「カエル」ばかり取り上げられるが、如意輪寺には他にも多くのみどころがあるからだ。
それは次項でたっぷりとご紹介しよう。

創意工夫された寺に脱帽

まずは、外に目をやると。
開け放たれた障子から見える圧巻の光景。
如意輪寺で行われている「風鈴まつり」だ。

風鈴が涼しい音色を奏でる

「やはりカエルが一番の見どころだとは思うんですけど、今の夏の時期には、この風鈴とかもですね、結構多くの方がお参りしていただいてます」

それにしても、風鈴にこれほどまでの存在感があるとは思いもしなかった。
個人的なイメージは、どちらかというと「わびさび」だ。軒先に吊り下げた1本の風鈴。風に吹かれると、時折、涼やかな音色を出す。それは華やかさとはほど遠く、日本の風流な夏を象徴する1つだろう。

だが、目の前で揺れる風鈴は全く違う。
一斉に響きわたる音色に、自ずと足が止まる。
如意輪寺が異空間だと感じたのは、ひょっとすると風鈴が奏でるその響きに、心が大きく乱されたからかもしれない。

「(風鈴まつりは)恐らく15年ぐらい前から始めたかと。今は、4,000個ほどになると思います」

風鈴1つにもカエルの姿が

「『奉納風鈴』という形で、今年の4月末ぐらいから募集をかけて。1つ1つ全部お願い事を書いていただいてるんです」

なるほど。
気付かなかったが、ただの風鈴ではないのか。
参拝者が風鈴に願い事を書いて奉納する。この風鈴には、1人1人の想いが込められているのだ。

「境内と同じ高さの(敷地に吊られた)風鈴は今年ので。階段から下の方とか上の方は、去年以前に奉納された風鈴を吊り下げてます。年々、ずっと入れ替えをしながらって感じですね」

昨年度に奉納された風鈴

コチラの「風鈴まつり」は例年4月頃から8月末までの開催で、意外と期間が長い。

他にも、境内には幾つか小さなお社のような建物がある。
そこには、「水掛不動明王」さまや「一願不動明王」さま、さらには「癌切不動明王」さまなどのお姿も。
ご紹介しきれないが、それぞれの願いに合わせて多くの仏様がいらっしゃるようだ。

「仏様によって、それぞれ意味合いがありますので。例えば薬師如来さんだったら病気とか、愛染明王(あいぜんみょうおう)さんだったら恋愛とか出会いとかだったりですね」

「愛染明王」さま

コチラは、縁結びの御利益のある「愛染明王」さまだ。
ハート形の絵馬に、恋愛関連の願い事が書かれている。

近付くと、ピンク色のカエルを発見。
暫く無言で対峙したが。
「オメーは必要ないな」と断られてしまった。
「まあな」と目で合図し、次の場所へ。

恋の予感を感じさせる、ピンキーなカエル

さらには、今の時世を反映したような観音さまも。
コチラは「抱きつき観音」さま。
ストレスを軽減しパワーをもらえるという、一石二鳥の御利益ある観音さまだ。

「抱きつき観音」さま

それにしても、その溢れ出る創造性には脱帽である。
「父がずっとアイデアを出して。思いついたらすぐ行動するタイプだったんですよ。もう『明日とかはイヤ』みたいな感じですね。その日のうちにすぐ行動で。良かったら続けて、悪かったらやめるっていうタイプ」

聞いて、大いに納得した。
まさに今の如意輪寺の境内がそれを物語っている。

コチラは、しゃぼん玉を出すカエル。
子どもが大喜びしそうなカエルである。

しゃぼん玉を口から出すカエル

いや、子どもだけではないのか。
参拝されている方の様子を見ていると、意外と大人の方が楽しそうである。
しゃぼん玉が飛び交う中で、スマホ片手にパシャリ。風鈴としゃぼん玉にカエル。かなりインスタ映えしそうな要素が並んでいる。

「日曜日は多くの方が来られて。平日もだいぶ多くなってきました。インバウンドのバスも多いんですよ。台湾とか韓国とかですね。ヨーロッパ系の方も個人的に来られたりとか。皆さん来られたら、やっぱり『くぐりかえる』でくぐられる方がものすごく多いですね」

そんな噂の「くぐりかえる」がコチラ。

くぐりかえる

カエルの口の中を、くぐり抜けることができるようだ。
なお、「かえるの口をくぐってください」という案内板の横に、気になる一言が。

──悪い事を良いほうにかえる

そうか。
「カエル」という言葉には、様々な意味がある。
漢字で書けば「帰る」「返る」「変える」「替える」「買える」など、多くの意味を当てはめることができるのだ。中でも「くぐりかえる」は「変える」という意味を含ませているのだろう。

ちなみに、小心者のダイソン。
じつに挑戦したい気もあったのだが。
万が一くぐれなかった場合を考えて、後ろ髪を引かれる思いで見送ったのである。

あんなカエルも、こんなカエルも

さて、最後に。
本堂のお隣の「かえる部屋」を見学させていただいた。
二間続きの部屋に、ズラリと並ぶカエルたち。もちろん、一般公開されており、誰でも見ることが可能だ。

「かえる部屋」のカエルたち

足を踏み入れると。
上下左右、360度全方位にカエルあり。
おっと、失礼。下はなかったか。

ただ、上はというと。
「花天井」となっており「花曼荼羅」が描かれている。

「花天井」

まさかとは思ったが。
一応、探してみると。

その一コマに、カエルの姿を発見。
驚きの芸の細かさである。

「花天井」にもカエルの姿が

さらに奥の部屋へと進むと。
当然ながら、所狭しとカエルたちが並んでいた。なんなら上から吊り下げられたカエルもいれば、カエルの絵も。

「半分がご奉納されたカエルですね」

だから、置物だけではないのかと納得した。
カエル関連であればなんでもござれ。特に形状に決まりはないようだ。
まさに「カエルワールド」である。

奥の部屋にも大小様々なカエルが大集合

それでは、幾つか気になったカエルをご紹介しよう。

まず、目を引くのが。
入口付近に陣取る木彫りのカエル。
「こちらは作っていただいたんですよ。今、本堂にある如意輪観音さんを作られた仏師さんにお願いして。木をお渡しして。こういう形で作ってくださいと頼みました」

「かえるの部屋」の入口で出迎える「お宝かえる」

なんでも樹齢120年の楠の木だという。
「長崎の島原の木ということで。父が宮大工さんと島原まで木を買いに行ったみたいですね。それから。仏師さんのところに頼んで」

画像で見るよりも、想像以上に大きい。
ただ、圧は強くない。木製というコトもあり、意外にソフトである。

名前は「お宝かえる」。
カエルが「宝」の入った袋、それも大きな袋を抱えているではないか。
出て行ったお宝が、まさに「返る」というコトか。縁起が良さそうだ。

次に、ダイソンとカメラマンそれぞれの特選カエルをご紹介。
なかなか数が多くて、1つに絞るのが難しかったのだが。
まずは、コチラ。
ダイソン厳選の「おばさま銭ガエル(byダイソン)」である。

中国のカエルの置物その1(ダイソン推し)

「中国から持ち帰ったカエルですね。父は年に何回か行って、何十年と繰り返してましたので。中国へはもう100回くらいですかね」とご住職。

ちなみに、中国のカエルはというと。
お金をくわえていたり、お金の上に座っていたり。とにかくお金とカエルがセットになっているモノが多いのだとか。

まあ、ダイソン特選のカエルも、いわゆる「銭ガエル」である。
だが、お金に関連するから選んだのではない。

なんかねえ、いいんですよ。
柱の陰にそっといてね。その佇まいが。
ちょっとモロ金銭欲剥き出しなんだけれども、マダム風のおばさま感が出て、そのギャップがたまらなくいいのだ。

「お金って素敵よねえ」と語りかけられているようで。ラブ。

「いや、それならこっちだろ」とカメラマン。
彼曰く「ダンディズムガエル(byカメラマン)」である。

中国のカエルの置物その2(カメラマン推し)

ダイソン:「どこがダンディズム?」
カメラマン:「……」
ダイソン:「ねえ、どこがダンディズム?」
カメラマン:「いや、ただの目つきの鋭いおっさ……」
ダイソン:「えっ?」
カメラマン:「カット、ここのくだりはカットで!」

まさか、カメラマンの言葉1つがネタになるのに。
カットするワケないやないか。

そして数分後。
屋外のカエルの中から、カメラマンが選び直したのがコチラ。
「苔生しカエル(byカメラマン)」である。

手水鉢近くにある苔生したカエル

選んだ理由は、自然と一体化しているから。目が合ったから。水辺にカエルの構図がよいからなどなど。恐らく、写真の出来栄えに満足しただけだろう。

一方で、ダイソン特選はコチラ。
「かえる七福神」。

「かえる七福神」

背後の七福神と比較できる配置が抜群のセンスである。
カエルの無表情な感じが、何より心をくすぐるではないか。
御利益は「招福と開運」だとか。もちろん、しっかりと手を合わせてお願いした。

それ以外にも、境内には多くのカエルが置かれている。
中には依頼して作ってもらったモノもあるとか。

「大きいカエルも中国で作っていただいたり、八女(やめ、福岡県の地名)の方の石屋さんで作ってもらったりとかですね。で、ちょっとずつ増えてってます。やっぱりお花とか何もない時期でもカエルさんがいるので。見に来られるような感じですね」

親子ガエル

境内は、季節によってはライトアップされるという。
今は風鈴がメインだが、11月の初旬からは紅葉のライトアップが始まるとか。
新緑もよいが、紅葉もさぞかし見応えがあるだろう。

そして、何より。
紅葉の中のカエルもまた雰囲気が違うはずだ。
秋に再訪することを願い、静かに取材を終えた。

取材後記

1匹の黒い猫が。
社務所からダッシュ。軽く境内を走り回っている。

黒猫の「のん」ちゃん

「観音さんが御本尊なんで『かん』『のん』『さん』という3匹の猫がいるんです。黒い猫は、新しく来た『のん』ですかね。あと2匹はどこかでうろうろしてますね」

それにしても、自由だ。
猫も、そしてカエルも。

だが、昔は違ったらしい。
「本当に苦労した時代もありました。昔は、ここの建物(本堂)がちょっとあったぐらいで。あとはもう、全部父が一代でここまでにしてるんですよね、カエルもそうですし。ここをみんなの知っているお寺にしたいって」とご住職。

一体、先代のご住職の原動力はなんだったのだろうか。

「父は『人に良くすれば良く返ってくる』っていう話をずっとしてました。人に良くしなさいっていうのが父の教えでですね。(父の跡を継ぐことを)あんまり考えないようにしてですね、自分ができることをですね、やっていこうかなと思ってます」

これまで様々な寺社を訪ね歩いたが。
こんなにも笑顔溢れるお寺も珍しい。

本堂から境内を見渡したのだが、ホントにそれは不思議な光景だった。
誰もがふわっとした笑顔で、心から楽しんでいる様子だったからだ。

如意輪寺は、不思議と。
笑顔、笑顔、笑顔。
笑顔が集まる寺なのだ。

やはり、カエルに囲まれた異空間だからか。
理由は分からない。なぜなのかと、ぶつぶつと呟きながら来た道を戻る。

そんな私に。
最後にカエルが呟いた。

「人生かえる ご縁ありがとう」の石柱とカエル

──人生かえる
──ご縁ありがとう

嗚呼、まさしくその通り。

撮影/大村健太

基本情報

名称:清影山 如意輪寺
住所:福岡県小郡市横隈1729
公式webサイト:なし

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Dyson 尚子

京都出身のフリーライター。北海道から九州まで日本各地を移住。現在は海と山に囲まれた海鮮が美味しい町で、やはり馬車馬の如く執筆中。歴史(特に戦国史)、社寺参詣、職人インタビューが得意。
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