醤油deケンミンショー!九州7県の醤油で冷奴食べ比べてみた

醤油deケンミンショー!九州7県の醤油で冷奴食べ比べてみた

醤油が甘い九州で生まれ育ちました。ある日、九州7県の醤油をセットにした「九州県民しょうゆ」なるものを発見。「九州の醤油は甘い」というのは本当です。でも、九州は広いし、「甘い」にも県ごとの個性があるはず。奥深い醤油の世界を、各県の食文化とともにひもといてみます。

身近すぎて見過ごしてきてゴメン

「いい人なのに本命になれない」的ポジションはもう終わり。どんな料理でも活躍するのに深く考えたこともない「醤油」が、この企画の主役です。あまり料理をしない人でも、醤油は持っているのでは。それに、醤油にこだわりのない人でも、旅先でいつもと違う醤油を使えば「あれ、いつもと違う」と感じるはず。

身近すぎて見落としていた部分を拾い上げ、しっかりと醤油の魅力に迫りましょう。

「九州県民しょうゆ」って何?

「九州県民しょうゆ」とは、九州7県の醤油が愛らしく詰められたもの。1本80mlとお試し向きのサイズ感もいい。

「九州福岡おみやげグランプリ2018」の特別賞を受賞したとのことで、流行に乗り遅れましたが、まだ九州のおみやげ店のほか、楽天などのネット通販でも取り扱い中。

わたしは、たまたま千葉の雑貨店でこの商品を見つけました。おもしろいなとは思いましたが「7本もいらないよね」と、そのときは買わずに素通り。ですが、帰宅してからどうにも気になり、わざわざお取り寄せをしたというわけです。一堂に会した九州7県の醤油を、まずは外観から比較しましょう。

まるで、この企画のために存在するようなうつわですが、食器ではなく菊皿、梅皿などと呼ばれる絵画用品です。写真では伝えにくいですが、それぞれ微妙に濃さや色合いが違うのがわかりますか? 鹿児島県の醤油の深い黒さは明らかです。

味、香りとともに食文化を味わう

すべての先入観を取り払って、味を比べてみましょう。小さくカットした豆腐をのせた取り皿に、7種の醤油をかけていただきまーす。

以下が、各県の醤油のスペックとともに味の感想です。また、農文協の労作「日本の食生活全集」シリーズの九州7県版を参照し、各県の食文化も簡単にまとめました。

【福岡県民専用しょうゆ】
製造:ごとう醤油(北九州市)
味の感想:色は薄めなのに旨みと甘みをたっぷり含んでいる。後味はすっきりめ。
郷土料理の特徴:日宋貿易の拠点があり多様な文化がもたらされ、現在も九州の中心都市。かしわ(鶏肉)や野菜を醤油と砂糖で煮込む筑前煮(現地では「がめ煮」)や、生醤油で食べるところてんのような「おきゅうと」が有名。

【佐賀県民専用しょうゆ】
製造:丸秀醤油(佐賀市)
味の感想:最初に塩味を感じ、最後に甘みが残る感じ。塩味は強めだが、角が取れており美味。
郷土料理の特徴:稲作、茶栽培、磁器と、食まわりにおいて先駆的な土地柄。隣の長崎から砂糖が容易に手に入ったためか、料理の味つけは甘め。羊かんなどの甘い和菓子も好まれる。

【長崎県民専用しょうゆ】
製造:喜代屋(南島原市)
味の感想:色も質感も濃いめ。キリッとした塩味があるが、後味は甘みが中心でやわらかい。
郷土料理の特徴:干潟、磯などの多様な海に加え山もあり気候は温暖。食材に事欠かないため、手をかけず本来の味を楽しむ料理が目立つ。江戸時代の鎖国中も貿易をしていたため異国風の料理も多い。

【熊本県民専用しょうゆ】
製造:池嵜しょうゆ醸造元(天草市)
味の感想:香りは確かに醤油だが、醤油ならではのクセがない。みりんやめんつゆを思わせる穏やかな味わい。
郷土料理の特徴:県南部の球磨盆地で球磨焼酎が誕生。かつては大豆の栽培面積が広かったため、味噌や醤油のほか大豆料理も多数。そのためか、雑煮に納豆を入れる地域もある。

【大分県民専用しょうゆ】
製造:田中醤油店(中津市)
味の感想:甘みはあるが、旨みと塩味もほどよく、バランスが良好。九州醤油になじみのない人にもいいかも。
郷土料理の特徴:焼酎も麦、味噌も麦が主流。フンドーキンやフジジンといった味噌・醤油蔵の老舗の存在感も絶大。関アジ、関サバ、城下かれいなどのブランド魚でも全国的に知られる。

【宮崎県民専用しょうゆ】
製造:谷口醸造(日南市)
味の感想:塩味は少なく、かなり甘い。焼きもちにかける砂糖醤油を思わせる。旨みもかなり強い。
郷土料理の特徴:日本の建国神話が語り継がれ、食習慣や風習も独特。醤油は甘めで塩分が少なくどろっと濃い傾向。夏は暑く雨も多いため、さっぱりとした「冷や汁」が風土に合っている。

【鹿児島県民専用しょうゆ】
製造:坪水醸造(鹿屋市)
味の感想:色はかなり濃くとろっとした質感。口の中で濃厚な甘みと風味が広がる。
郷土料理の特徴:中国から琉球経由で伝来したさつまいもが特産となり、さつまいもを原料とした芋焼酎が誕生。さつま揚げ(現地では「つけ揚げ」)も全国的に知られる。九州らしく味つけは甘め。

醤油についての取材こぼれ話

わたしは飲食店取材や旅行取材を多く手掛けており、全国各地の醤油を口にしました。九州以外でも醤油にまつわるおもしろエピソードあり!

東京・日本橋の江戸前寿司店では、「寿司ネタを引き立てるために、旨すぎない醤油を選んでいる」と聞きました。確かに、醤油だけだと主張のない味ですが、寿司ネタにつけると確かに魚の味が際立つんです。江戸前寿司はネタを熟成させるなどの手仕事を味わうものなので、醤油は無難なほうがいいのかも。一方で、九州では獲れたての「活かった」魚を甘めの醤油にどぶんと浸して食べている印象。

なぜか、醤油造りで知られる香川の小豆島(しょうどしま)に縁があり何度か行きました。毎回醤油を買って帰りますが、「花醤(はなひしお)」というオリーブ花酵母で仕込んだものが気に入っています。

小豆島では南部の醤油は塩気が立ったものが多く甘口のものはあまりありませんが、北部に行くと甘口の醤油が多くなるなと感じました。ひとつの島の中でも醤油の好みが変わるのかもしれません。

それから、訪れて「あれっ、醤油が甘い。ここは九州?」と思ったのは山形。のちに調べて、「味マルジュウ」という醤油(正確には醤油風調味料)が広く出回っているからとわかりました。芋煮の甘じょっぱい味つけが象徴的です。

醤油万歳。土地の味を感じたい

自分の知らない土地にも郷土の味があり、調味料ひとつとってもこんなに違いがあるなんて。「手前味噌」という言葉があるように、昔はどこの家庭でも味噌は手造り。醤油も同様で、それぞれの家庭の味がありました。味噌や醤油を商業的に製造しはじめるのは江戸時代になってからです。

さらに今は全国の醤油が、自宅に居ながらネットで買える便利な時代。生まれ育った土地の味は大切ですが、知らなかった味に触れ、その背景にある先人たちの知恵や家族のストーリーに思いを馳せるのも素敵なこと。食の世界は多様で奥深く、まさに多様性そのものですよね。

※2020年2月取材時の情報です。味の感想や体験談は個人のものです。







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