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2019.09.17

谷根千をぐるり!広重が描いた浮世絵目線でほっこり!

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 日本全国を浮世絵に描いた風景画の天才、歌川広重(うたがわひろしげ)。東京に生まれた広重は、名勝・景勝地を描いたと同じように、東京の下町に暮らす人々の生活の一部を切りとったような景色を愛し、描きました。湯島天満宮にお参りする人々、その鳥居の脇の茶屋で宴を楽しむ男性たち。満開の桜の上野公園や千駄木の団子坂。そして庶民の憩いの場であった〝虫聞き〟の名所、道灌山(どうかんやま)。
 前回の「散りゆく桜の下…上のお花見、下町散歩」でご紹介した湯島から上野公園に続き、本日は上野公園から歩を進め、広重が描いて谷中、根津、千駄木の、通称〝谷根千(やねせん)〟へまいりましょう。

150213  0083写真/東京では希少価値となった木造3階建て建築の「はん亭」

上野から根津へ…

 清水観音堂(きよみずかんのんどう)から弁天堂、不忍の池(しのばすのいけ)の縁を通って根津方向へ。不忍通りでひときわ目を引くのが、木造3階建てのレトロな建物、串揚げの名店「はん亭」です。明治の建物を改修したというその佇まいは、せわしなく車が行き交うこの通りにあって、そこだけ時が止まったかのよう。東京にはこうした建物が少ないだけに、なんだかうれしくなってしまいます。
 お腹の具合がよろしければ、薄付きの衣がカラッと揚がった串揚げをぜひ。低いテーブルが並ぶ2階、3階のお座敷がおすすめです。

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写真/浮世絵にも多く描かれた根津神社。境内にある乙女稲荷神社の朱色の鳥居は撮影スポット。5月5日まで、第47階文京つつじまつり開催中。東京都文京区根津1-28-9 http://www.nedujinja.or.jp/

今が見ごろ、根津神社はつつじで満開!

 お次は根津神社。〝根津の権現さま〟とも呼ばれたこの神社は浮世絵にもさまざまに描かれました。社殿は宝永3(1706)年、5代将軍徳川綱吉が奉献したもの。唐門や楼門を含め、いくつもの建造物が当時のまま現存、もちろん重文(国が定める重要文化財)です。
 上野が桜の名所なら、この根津神社はつつじの名園! そう、東京のつつじは今が見ごろ。 根津神社の傾斜地をピンクの濃淡で彩るつつじ苑には、早咲き遅咲きの3000株のつつじが約ひと月にわたって次々と花を咲かせるのです。
 そんなつつじで目を楽しませながらお参りを済ませたら、団子坂へと進みましょう。
 ここは、広重が『名所江戸百景 千駄木團子坂花屋敷(えどめいしょひゃっけい せんだぎだんござかはなやしき)』で満開の桜と団子坂上の茶亭「紫泉亭(しせんてい)」を描いた場所。現在は「紫泉亭」も桜並木もありませんが、団子坂という名称には当時の記憶が残されているようです。

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写真/広重が描いた「いせ辰」の千代紙と、世界初のたわし専門店「亀の子束子 谷中店」。

谷根千には〝イマドキのカワイイ〟も!

 さて、広重が活躍した江戸時代のにぎわいを想像しながら、三崎坂(さんさきざか)へと向かいましょう。「菊見せんべい」や江戸千代紙の「いせ辰」でお土産を物色しながら坂を上っていくと、寺町・谷中界隈です。
 ここは江戸の都市計画により多くの寺が集められた町でした。今でも多くの寺院が点在し、観音寺の築地塀などに江戸の名残を留めます。江戸時代、文化の発信地でもあった谷中らしく、この地域には、ほっこりなごめる「さんさきカフェ」や世界初のたわし専門店「亀の子束子(かめのこたわし) 谷中店」、彫刻家・朝倉文夫の住居兼アトリエだった「朝倉彫塑館」や器のギャラリー「韋駄天(いだてん)」、など、個性豊かな店が地域に根を張り、いつ訪れても新しい発見に溢れています。

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写真/夕焼けだんだんと、かき氷の店「ひみつ堂」。

夕焼けとネコ、お似合いです

 そろそろ谷根千散歩も終盤。夕焼けの名所としても知られる〝夕焼けだんだん〟の階段を下りれば谷中銀座です。
 あ、この商店街を歩く前に、ふわふわのかき氷で人気の「ひみつ堂」へも立ち寄りましょうか。「行列してまでかき氷なんて…」などとあなどってはいけません。並んででも食べたいかき氷が「ひみつ堂」にはあるんです! そのお味は…ぜひご自分の舌でためしてみて。

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写真/週末には多くの観光客でにぎわう谷中銀座。

商店街が元気な町で元気をもらいましょう

 谷中銀座商店街では、コロッケ、くず餅、焼き鳥などなど、買い食いを楽しむ外国人観光客や、今夜のおかずの調達に自転車を走らせるお母さんたちが行き交い、活気に満ちています。
 最後にご紹介するのは、広重が「東都名所 道灌山虫聞之図(とうとめいしょ どうかんやまむしききのず)」に描いた場所。現在のJR西日暮里駅のホームが見える高台です。
〝虫聞き〟とは、暑い時期に虫の声を聞いて涼む、粋な風習。この浮世絵には、高台に酒を酌み交わす男衆、その下には団扇片手に歩く女性と子ども、遠方には大きな月が顔を覗かせています。江戸時代の夏のワンシーン、風流ですね。現在はその面影はありませんが、広重が描いた場所に立つだけで、300年前にワープできそうです。
DMA-150220 0016写真/広重が『東都名所 道灌山虫聞之図』で描いたのは、現在JR西日暮里駅を見下ろす風景に。

谷根千 立ち寄りスポット

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はん亭/明治レトロでいただきます

季節のさまざまな素材を使用した串揚げで評判の、谷根千散歩定番の串揚げ屋。明治時代に建てられた木造3階建ての建物は、有形文化財に指定されている。串揚げ6本にお通し生野菜で2,835円~。
東京都文京区根津2-12-15 11時30分~14時(L.O.)/17時~22時(L.O.) 月曜定休(祝日の場合は翌平日休) 

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菊寿堂いせ辰 谷中本店/〝江戸のカワイイ〟をお土産に

江戸末期創業の、江戸千代紙専門店。江戸の文化を反映したものや、題材を歌舞伎にとったものなど、店内には色とりどりの手摺りの千代紙が所狭しと並ぶ。上の写真は広重が描いたもの。団子坂の近くにも千駄木店あり。
東京都台東区谷中2-18-9 10時~18時 無休(元日のみ休業) 

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亀の子束子 谷中店/キュートなたわしがいっぱい!

根津から千駄木に抜ける小道にある、亀の子束子のアンテナショップ。白を基調としたお洒落な店は、雑貨店やパン屋といった雰囲気。おなじみのキッチン用たわし各種のほか、ボディ用などオリジナル商品が並ぶ。
東京都台東区谷中2-5-14 11時~18時 月曜定休(祝日の場合は翌平日休) 

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韋駄天/センスが光ります!

抜く茂呂のある店内に並ぶのは、女性店主の感性で選び抜かれたうつわの数々。普段使いに重宝しそうな器から、食卓を華やげる大皿など、国内外の作家ものを厳選。地下のギャラリーでは定期的に個展も開催。
東京都台東区谷中5-2-24 11時~18時 月曜・火曜定休

DMA-150213  0211写真/三崎坂の途中にある「さんさき坂カフェ」であんみつでも。東京都台東区谷中5-4-14 

撮影/篠原宏明