Culture
2020.10.13

笑ってはいけない江戸時代のおなら事情。自殺を思い悩むほどの重大問題だったってホント?

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秋です。おいもの美味しい季節です。

いもくりなんきんは女性の好きな食べ物といわれていますね。江戸時代の女性も同じような嗜好をしていたようで、ついついふかし芋を食べてはおならをしてしまうということが多くあったようです。

しかしそれは、当時の身分の高い女性にとって死活問題。人前でおならをしてしまった恥ずかしさから自殺をしてしまったり、引きこもりになってしまう人がいたほどといわれています。おならの身代わりをする職業も誕生したとか?

一方で、庶民の女性のあいだではおならをすることは日常的なこと。人に聞かれてもへっちゃらなだけでなく、屁こき合戦までしてしまう始末。

そんな江戸時代のおなら事情についてご紹介します。

女性達のミスを華麗にカバーする「屁負比丘尼」

江戸時代、身分の高い女性たちはメンツを保つことがとても重要でした。そんな女性たちにとっておならをするのはメンツ失墜の危機。そんなはしたないことを迂闊にも人前でしてしまったら、もう二度と人前に出られないほどの醜態です。いつの時代も人の目や噂が気になるのが女性。特に身分が高い女性なら、その衝撃も計り知れないものでしょう。

そんな時に、活躍したのが屁負比丘尼(へおいびくに)。いつもは身分が高い女性に付き添い、身の回りのことをこなしながら、いざ、女性がおならをするというミスを犯したときには、すかさず、恥ずかしそうに「私がしました」と申告。身代わりになってその場を収め、ご主人を守っていたようです。

おならの身代わりで大事なのは演技力。本当に「屁負比丘尼がした」と思われないようだったら、かえって恥の上塗りになってしまいますよね。まさにプロの仕事と思われていたようです。

とはいえ、周りの人は身分の高い女性たちが恥をかかないように、たとえ、怪しいと思っていても、ちゃんと騙されてあげていたのかもしれませんね。

「屁負比丘尼」は狭き門だった⁉︎

屁負比丘尼は阿吽の呼吸で、おなら以外にも身分の高い女性が起こした粗相やはしたない行いなどをすべて引き受けていたようです。

その当時、身分の高い女性にはたくさんの付き人が付き添っていましたが、そのほとんどがそれなりの家柄の娘さんで、花嫁修業としてお勤めしていたので、屁負比丘尼はそれらのお付きの人とは別枠採用だったようです。

「もうお嫁に行くことはないから多少恥をかいても大丈夫だろう」とのことで屁負比丘尼を務めたのは出家した尼さんでした。耳が遠くておならの音が聞こえないと仕事にならないという観点から、音を聞き逃さない程度の中年の尼さんが適任者とされていたようです。それほど、当時、屁負比丘尼は慎重に選ばれていたようです。

出家した尼さんで中年で、その上演技力があり、身分が高い女性と阿吽の呼吸でうまくやっていけるということになると、ずいぶんと適任者は少なかったのかもしれませんね。

庶民の女性の間ではおならは日常的なこと

おならをタブーとしていたのは高貴な女性だけです。江戸時代にもおならを題材にした作品が多く残されていますが、大きなおならをした女性が離婚されるなど問題視されることはあっても、一般的にはおおらかに捉えられていたようです。

江戸時代の庶民のおならを扱った作品のひとつ、江戸時代の絵巻物に『放屁合戦』(早稲田大学図書館所蔵)があります。鳥羽僧正、あるいは僧正と同時代の絵仏師である定智が、1110(天永1)年から1125(天治2)年ごろに製作したものといわれていて、おならの勢いや臭いなど、その威力を武器のように扱ったユーモアな作品として描かれています。

『放屁合戦』は合戦という名にふさわしく、10メートルもある絵巻物のあちこちにおならをしあっている庶民の姿が描かれています。

その様子はなかなかのもので、おならでお坊さんを吹き飛ばしたり、おならを袋にためて大砲のように用いようとしたり、おならの威力で馬を吹き飛ばそうとしたり、2人がかりでおなら攻撃をしたり、みんなのおならで嵐を巻き起こしたり、団扇であおいでおならの軌道を変えたり……と、さまざまな戦略的(?)放屁合戦が見られます。その姿は男も女も関係なく、みんなお尻を丸出しにしてところかまわずプープーやっているんですね。

江戸庶民の間では、おならは自然現象。笑えるものであり、決して自殺や引きこもりのきっかけになるものではなかったのでしょうね。

女性の身分が高いのか低いのかで、ずいぶんととらえ方が違ったおなら。

身分が高い女性にとっては身代わりになってくれる心強い存在だった屁負比丘尼ですが、お金に困っている女性にとっては、おならの身代わりをするだけでお金になったありがたい仕事だったのかもしれません。お互い持ちつ持たれつで社会の相互扶助がうまく成り立っていたのかもしれませんね。

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書いた人

関西生まれ。関西にはたくさんの歴史の断片が転がっているので、そんな昔の偉人たちに想いを馳せながら旅をするのが大好きです。外国人の知り合いが多く、外国人から見た日本を紹介できればいいなと思っています。最近はまっているのは占いで、自宅の猫を相手に毎日占っています。