警察犬は高い階級の身分を持っている、というのをテレビで観て、テンション爆上がりしてしまったモフモフ好き、あきみずです。そうですよねえ、警察犬の能力って本当に惚れ惚れしてしまいますものねえ。仕事中の凛々しさと、遊んでいるときのいかにも犬っぽい無邪気さと、その両方にメロメロです。
さて、無生物であるところの刀剣の中にも、非常に高い位(くらい)を与えられたものがあった。嘘か本当か?
答えは、本当。
数々の武将に愛された大ぶりの槍、「日本号(にほんごう、ひのもとごう)」が、ウワサの当人(当槍?)。
日本号とは?
日本号は、刃長が2尺6寸1分半(約79.24センチ)という、大ぶりな「大身槍(おおみやり)」です。室町時代後期に大和(現在の奈良県)で作られたと見られますが、銘は入っていません。
槍に彫られた溝=「樋(ひ)」の下半分には、不動明王の化身とされる、剣に龍が巻き付いた「俱利伽羅龍(くりからりゅう)」の見事な彫刻が施されています。
日本号は、皇室の御物として「正三位(しょうさんみ)」という、とても高い身分を与えられた伝承を持つ名槍です。
「正三位」は上級貴族である大納言や、勲一等に該当するもので、後に、中堅公卿や武家などにも与えられるようになりましたが、刀剣に与えられるのはやはり異例のことでした。
正親町天皇(おおぎまちてんのう)の時代に、室町幕府最後の将軍・足利義昭(あしかがよしあき)へ下賜され、その後、織田信長・豊臣秀吉と受け継がれましたが、その次に福島正則(ふくしままさのり)が所有者となったとき、歌にまでなってしまった事件が起こります。
正則は日本号をとても大事にしていましたが、黒田長政の使いでやってきた酒豪の母里友信(もりとものぶ/ぼりとものぶ。太兵衛とも)に無理やり酒をすすめたことがきっかけで、この名槍を友信に渡す羽目に陥ってしまいます。
詳しいエピソードは、以下の記事に書かれています。
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友信が大量の酒を飲み干して手に入れたことから、「呑み取りの槍」とも呼ばれるようになり、民謡『黒田節』の題材にもなったのです。
現在は、福岡市博物館で大切に所蔵されています。
名付けの由来
「日の本(ひのもと)一の槍」と讃えられたことによります(秀吉によって名付けられたとも)。
作者の名前が入っていない?
日本号は大和の金房(かなんぼ、かなぼう、かなんぼう)派の作ではないかと言われていますが、作者の銘は入っていません。
でも、無銘だから名刀(日本号は槍ですが)ではない、というわけではありません。
刀剣に銘が入っていない理由は、ものによっていろいろですが、主に以下の3つが挙げられます。
・神社などに奉納する目的で作られたものだったから
・雇い主(大名など)に納品するものだったから
・もともと長かった刀剣を、持ち主の使い勝手に合わせて持ち手部分のほうから短く切り詰めて銘がなくなった「大擦上(おおすりあげ)」の刀剣だから(刀剣の銘は持ち手部分の「茎[なかご]」に切られています)
日本号に銘が入っていない理由が何だったのか、定かではありませんが、故・隅谷正峯(すみたにまさみね)ら人間国宝の刀匠が2人、この日本号を写した作品を手掛けるなど、昔も今も変わらず愛され続けている名品です。
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アイキャッチ画像:栗原信充『肖像集 福島正則』、国立国会図書館デジタルコレクションより